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更新日:2013年3月21日
家庭用電気掃除機の排気中に含まれる微粒子 概要
家庭用電気掃除機の日本工業規格(JIS)では、排気中の粒子径5マイクロメートル※以上の粒子を全重量で測定するよう規定している。大きな粒子を排気しなければ規格を満足するため、掃除機によっては、5マイクロメートルより微細な粒子(微粒子)が排気されている可能性がある。
しかし、これらの微粒子は長時間室内を浮遊し、呼吸時に気管を通り抜けて気管支や肺まで達するため、様々な健康影響の可能性が懸念されている。
一方、韓国では平成20年1月から0.3マイクロメートル以上の粒子を測定する規格が施行され、0.2ミリグラム/立方メートル以上の微粒子を排気しない掃除機にはマークを付けて販売できることになっている。
そこで、日本で販売されている家庭用電気掃除機の排気中に含まれる微粒子の実態をテストにより明らかにし、その結果について、消費者へ情報提供することとした。
平成19年9月に家電量販店などで購入した8機種についてテストした。
表1 テスト対象とした掃除機
※国産紙パック式の機種は、新品と紙パック交換直前の2回について掃除機排気中の粒子数を測定した。
掃除機に室内空気を吸引し、排気中の粒子濃度を測定した結果を図1に示す。なお、周辺空気とはテストを実施した部屋の空気のことである。
図1 室内空気を吸引した場合の掃除機の排気中の粒子径0.3マイクロメートル以上の粒子濃度
図1のとおり、微粒子捕集可能と表示している機種は、0.3マイクロメートル以上の微粒子を捕集しており、排気中の粒子数は、周辺空気よりも少なかった。一方、微粒子捕集可能と表示していない機種の排気は周辺空気よりも粒子濃度が2.8~5.5倍になった。
次に、掃除機にテスト用じんあいを吸引し、排気中の粒子濃度を測定した結果を図2及び3に示す。なお、テスト用じんあいとは、JISに基づく試験用粉体で模擬ゴミである。本テストではタルク(粒径分布:5~40マイクロメートル)及びカーボンブラック(平均粒子径:0.08マイクロメートル)を用い、各測定において、タルクは4グラム、カーボンブラックは1.5グラム吸引させた。
図2 タルク及びカーボンを吸引した場合の掃除機の 排気中の粒子径0.3マイクロメートル以上の粒子濃度
図3 タルク及びカーボンを吸引した場合の掃除機の 排気中の粒子径0.3~5マイクロメートルの粒子濃度
粒子濃度からじんあい重量に換算した結果を図4及び5に示す。
図4 タルク及びカーボンを吸引した場合の掃除機の 排気中の粒子径0.3マイクロメートル以上のじんあい重量
図5 タルク及びカーボンを吸引した場合の掃除機の 排気中の粒子径0.3~5マイクロメートルのじんあい重量
タルク及びカーボンブラックを吸引させた場合の排気中の0.3マイクロメートル以上の粒子について着目する。図2のとおり、微粒子捕集可能と表示している機種の排気中の粒子濃度はかなり低かった。特に、掃除機Dは微粒子の捕集についてはかなり高性能であることがわかった。一方、微粒子捕集可能と表示していない機種の排気中の粒子濃度は100,000~1,200,000個/リットルとなり、微粒子捕集可能と表示している機種と比較して、タルクを吸引させた場合は最大で約2,000倍、カーボンブラックを吸引させた場合は最大で約7,000倍の粒子が排気されていた。方式の違いで見ると、紙パック式がサイクロン式より粒子濃度が高かったが、これは一部の商品における結果であって、総体的にサイクロン式の方が微粒子捕集性能が高いとはいえるかは不明である。
図2と3を比較すると、値も傾向もほぼ一致する。排気中の粒子を粒子濃度(粒子数)で捉えると、0.3マイクロメートル以上の粒子のほとんどが0.3~5マイクロメートルの粒子で占められていることがわかる。
粒子濃度をじんあい重量に換算した値は図4及び5のとおりであった。じんあい重量は総体的に、粒子濃度(粒子数)と同様の傾向であった。ただし、図4及び5によると、掃除機Bが他の掃除機と比較して突出して値が高くなった。粒子濃度は粒子径の小さい粒子が、じんあい重量は粒子径の大きい粒子が重く評価されるため、粒子を重量で捉えると、粒子径の大きい粒子がより影響する。掃除機Bは他の機種に比べ、2マイクロメートル以上の粒子濃度が高いため、じんあい重量が突出して高くなってしまったと考えられる。
ここで、粉じん(粒子)に係る国内及び米国の基準を表2に示す。掃除機Bにタルク4グラムを吸引させた場合、排気中には粒子径0.3マイクロメートル以上の粒子が857ミリグラム/立方メートル含まれていた。この値が粒子径10マイクロメートル以下の粒子の値と等しいと仮定すると、掃除機Bの排気口からは建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく基準(0.15ミリグラム/立方メートル)の5000倍を超える濃度の粒子が排気されていることになる。製造事業者によると、掃除機Bの最大排気量は2.3立方メートル/分なので、換気していない室内で1分間、最大出力で運転すると、1,971ミリグラムの粒子が排出される。これらの粒子が6畳間相当の部屋(約26立方メートル)に拡散したとすると、先の基準の500倍を超える粒子で室内が汚染されることになる。換気の影響を考慮したとしても、一時的ではあるが、表2に示す各基準を簡単に超える恐れがあることが予測できる。
関係法令名 | 対象物質 | 基準 |
---|---|---|
大気の汚染に係る環境基準 (昭和47年1月環境庁告示) |
浮遊粒子状物質 (粒子径10マイクロメートル以下) |
1時間値の1日平均値が0.10ミリグラム/立方メートル以下であり、 かつ、1時間値が0.20ミリグラム/立方メートル以下であること。 |
建築物における衛生的環境の 確保に関する法律施行令 |
浮遊粉じん量 (粒子径10マイクロメートル以下) |
0.15ミリグラム/立方メートル以下 |
事務所衛生基準規則 (労働安全衛生法) |
浮遊粉じん量 (粒子径10マイクロメートル以下) |
0.15ミリグラム/立方メートル以下 |
米国環境保護局(EPA)が 定める環境大気質基準 |
PM2.5 (粒子径2.5マイクロメートル以下) |
年平均値 15マイクログラム/立方メートル以下 短期暴露に関する日平均値 35マイクログラム/立方メートル |
掃除機Cにカーボンブラックを吸引させ、掃除機から排気された微粒子の室内濃度を床上20センチメートル及び120センチメートルの位置で測定した結果を図6に示す。図中のBGとはバックグラウンド値のことであり、バックグラウンド値とは掃除機を運転する前に室内濃度をそれぞれ測定した値である。
図6 掃除機Cにカーボンブラックを吸引させた場合の測定結果
0.3マイクロメートル以上の粒子に着目すると、図6のとおり、密閉状態を想定した換気回数0.5回/時の場合の粒子濃度の下降はきわめて緩慢で、30分経過しても低下率は低く、バックグラウンド値まで下がるのに1時間以上かかることが予想された。これにより微粒子が長時間空気中を滞留し、室内を浮遊していることが示された。換気回数0.5回/時とは、かなり密閉された空間であるが、高気密な住宅が増加している最近の住宅様式の変化を考慮すると、実態とかけ離れていない条件であるといえる。
充分な換気を行った状態を想定した換気回数10回/時の場合では、換気回数0.5回/時の場合よりも粒子濃度の下降は速いが、30分ではバックグラウンド値まで下がらず、充分に値が下がるまで1時間程度はかかることが示された。
以上より、微粒子を多く排気している掃除機を使用した場合は、充分な換気していても使用後30~60分程度は室内に微粒子が浮遊することが示された。
しかし、今回テスト対象とした中で、微粒子捕集可能と表示していない掃除機の取扱説明書等には、使用中の換気の必要性についてどれも記載されていなかった。
テスト結果を受けて、次のとおり国への提案及び関連する業界団体への要望等を行った。
韓国では家庭用電気掃除機の排気中の微粒子に関する規格を定めている。そこで、日本工業規格(JIS)にも同様の規格を策定すること及び結果を消費者へ情報提供することを経済産業省に提案した。また、居室内の有害物質を所管している厚生労働省に情報提供を行った。
提案先:経済産業省商務情報政策局製品安全課、情報通信機器課
情報提供先:厚生労働省医薬食品局化学物質安全対策室
「家庭用電気掃除機の排気中の微粒子の測定法及び結果の消費者への情報提供について検討すること」、「家庭用電気掃除機の排気中の微粒子の低減について各会員に促すこと」及び「使用中及び使用後に換気が必要な家庭用電気掃除機の取扱説明書にその旨を記載することを各会員に促すこと」を要望した。
要望先:社団法人 日本電機工業会
また、小売店が加入する業界団体、家電量販店及び都内各区市町村の消費者行政担当部署を始め関係する機関に対して、テスト結果を情報提供します。
テスト結果をもとに次のとおり消費者へアドバイスを行う。
お問い合わせ先
東京都生活文化局消費生活部生活安全課商品安全担当
電話番号:03-5388-3055