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更新日:2018年12月17日
執筆:池袋総合法律事務所 弁護士 志水 芙美代 氏
第1回はマルチ商法について解説!
友人や先輩など個人的な人間関係を通じて誘われることの多いマルチ商法、軽い気持ちで始めたものの、抜け出せなくなることも珍しくありません。
誘われた時点で、「マルチ商法かも!」と気付くことが重要です。
高校時代の友人から連絡があり久々に会ったところ、お勧めのビジネスがあると誘われました。会員制のネットワークビジネスで、最初に30万円分の商品(化粧品等)を買う必要があるものの、商品自体良いものだし、新たに誰かを誘ってその人が会員になれば紹介料が入るので1か月で元が取れるとのことでした。
高額なので決めかねていたところ「友達が多いから絶対向いているよ」「稼いだら旅行しよう」「ネットワークの仲間は楽しいよ」とその気にさせられ、契約書にサインしてしまいました。また、バイトで貯めたお金では足りなかったので、クレジットカードでキャッシングしました。その後、何人かにこのビジネスを誘ったところ、「それ、マルチでしょ」と嫌な顔をされ、距離を置かれました。これ以上勧誘を続けると友達を失いそうですが、返済もあり、どうしてよいか分かりません。
マルチ商法とは、既に販売組織に入っている人が別の人に商品等を売って組織に加入させてマージン(利益)を得て、さらにその人が別の人に商品等を売って組織に加入させてマージン(利益)を得て、といった具合に次々と組織に加入させていく商法で、法律では連鎖販売取引といいます。ネットワークビジネスとも呼ばれ、SNSで勧誘が拡大するケースもみられます。
マルチ商法の契約は、特定商取引法という法律により、所定の内容が書かれた契約書等を渡されてから20日以内ならクーリング・オフ(契約の解除)できることになっています。また、事実と違う内容で勧誘された場合は、契約を取り消すことができる場合もあります。事例では、「1か月で元が取れる」といった事実と異なる内容を、事実であると信じて申し込んだことを理由に、契約を取り消すことができる可能性があります。
その他にもマルチ商法には、ネットワーク内で人間関係が深まると、心理的に抜け出せなくなる恐ろしさもあります。
1.“初期費用”+“人を誘って利益が入る”会員制ビジネスの勧誘は「マルチかも!」とピンとくる。
2.少しでも不安になったら、一人で悩まずすぐに最寄りの消費生活センターに相談を。
3.新たな勧誘は人間関係を壊しかねないと心得て。
4.身近な人が抜け出せなくなった場合は弁護士など専門家に相談を。
第2回では、誘われたら舞い上がってしまいそうだけど…。悪質スカウトやオーディション商法の裏にひそむワナについて解説します!
執筆:池袋総合法律事務所 弁護士 志水 芙美代 氏
第2回は悪質なスカウト商法について解説!
芸能活動へのスカウトや、映画に出演するためのオーディションの合格通知!なんて、舞い上がってしまいそうですが、高額のレッスン料などを支払わせることに狙いがあるかも知れません。
一人で判断はせず、契約をする前に家族とよく相談しましょう。
繁華街の駅前で「モデルのお仕事に興味はありませんか」とスカウトされました。少し興味があると伝えたところ、名刺を渡され、後日面接をするので事務所にくるよう言われました。
後日事務所に行ったところ、簡単な面接をしただけで、「合格」と言われ、事務所登録とレッスンの案内をされました。半年のカリキュラムで80万円のレッスン料と高額だったため悩んだのですが、レッスンを受ければ事務所としてしっかり売り込めるようになる、すぐに何件もオファーがくるようになるので新人でも月15万円は稼げると説得され、その場で契約書にサインをしてしまいました。
しかし、レッスンを受けても仕事の紹介はなく、返済のためにアルバイトに追われて学業もおろそかになってしまいました。レッスンのレベルも低く、騙されたように感じるので、解約してしまいたいです。
20代前後の若い女性を中心に事例のような被害相談が多く聞かれます。街中でのスカウトに限らず、SNSやインターネットで見たタレント募集やオーディションをきっかけとするケースもあります。事務所等に誘い出した上で、事務所登録料やプロフィール写真撮影料名目でお金を支払わせるケース、モデル活動の準備として美容エステ契約を結ばせるケースなどもあります(中には、エステ代金は後から事務所が出すと言って安心させ、クレジット契約書にサインをさせるような被害もあります)。
相談事例のケースでは、仕事をあっせんするので稼げるようになる、そのためにレッスンを受ける必要があるとして勧誘していることから、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」にあたり、法律で定められた事項を記載した契約書面を交付されてから20日間はクーリング・オフできます。また、契約の勧誘に際して事実と違う説明があれば、レッスン契約を取り消すことができる場合もあります。被害に遭ったと感じたら、すぐに最寄りの消費生活センターに相談をしてみましょう。
その場で契約はせず、どういう特色のある事務所か、レッスン内容はどういうものか、学業との両立ができるのか、費用は妥当かなどについて、家族とよく相談し、慎重に判断しましょう。
次回は、大学生の不安につけこむ…! 悪質な就活商法について解説します!
執筆:池袋総合法律事務所 弁護士 志水 芙美代 氏
合同会社説明会からの帰り、会場の外で就活指導塾の関係者からアンケートへの記入を求められました。その際、就活に役立つ情報が得られればと、気軽な気持ちで連絡先も記入したところ、後日電話がかかってきて、ガイダンスに誘われました。ガイダンスは無料とのことでしたので出席したところ、終了後に小さな事務室のような部屋に案内され「当塾に通えば必ず就職できる」「ライバルは皆やっているので独学では無理」と長時間にわたって説得されました。親と相談の上で決めたいので今日は帰りたいと伝えると「そうやって親に頼るからダメなんだ」「今のあなたのレベルは低く、すぐに決断しないと駄目だ」と更に説得されて帰らせてもらえず、結局、通学コース20万円の契約書にサインをしてしまいました。
しかし、面接指導もエントリーシートの添削指導も適当ですし、講義も精神論ばかりで役に立つとは思えません。騙されたのではないかと思います。
大学生の就職活動への不安につけこんだ、悪質な就活商法の被害が増えています。会社説明会の行き帰りや大学の周辺で声をかけ、説明会等の名目で事務所などに誘い出した上で、不安をあおったりしつこく勧誘を続けたりして、その場で高額な契約をさせるという手口が多く見られます。相談事例のように就活対策講座の勧誘をするケース以外にも、英会話教室や資格取得講座の勧誘をするケースもあります。
相談事例のケースでは、帰りたいと伝えたのに応じてもらえず契約させられているため、退去を妨害されて困惑の末に契約をしたとして、消費者契約法により取り消すことができる可能性があります。また、事案によってはクーリング・オフできる場合もあります。少しでも不安を感じたら、すぐに最寄りの消費生活センターに相談をしてみましょう。
・安易に連絡先を教えない。
・その場で契約はせず、必ず一旦持ち帰り、家族とよく相談の上で慎重に判断する。
・勧誘の仕方が強引・悪質など疑問を感じたら、きっぱり断る勇気を持つ。
大学生が巻き込まれることが多い消費生活トラブルについて、全3回でご紹介してきました。楽しい大学生活をふいにしないために、どんなトラブルの事例があるのか、どうすれば避けられるのかを事前に知っておくことが重要です。また、少しでも怪しいなと思ったら、消費生活センターや周りの人に相談するようにしましょう。
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課学習推進担当
電話番号:03-3235-1157