トップページ > 若者 > サッと読める ちょっとお耳に入れたい話 > 令和6年度第2テーマ「こんなことから消費者トラブルに?~こんなはずじゃなかった~」
更新日:2025年2月7日
若者が被害にあいやすい消費者トラブルを3回に分けて紹介します。
第1回 素敵な出会いを求めただけなのに…
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執筆: リンク総合法律事務所 弁護士 今泉 将史 氏
マッチングアプリやSNSの浸透により、『出会い』の方法が多様化しています。古典的な路上での声かけのみならず、近時はオンラインだけで完結するものまで。今回は、こうした『出会い』をきっかけとするトラブルについて解説します。
現在、若者を中心にいわゆるマルチ商法まがいの悪質商法等(以下「マルチまがい商法」といいます。)が蔓延しつつあります。一つの事例を紹介しましょう。キーワードは、「知り合い」「出会い」です。
Aさん(23歳)は、就職を機に上京し、慣れない仕事を頑張って社会人生活1年目が終わりにさしかかりました。気心の知れた友人とは距離的な問題もあり疎縁になっていました。
そこで、気楽に話ができる友人が欲しいと考え、マッチングアプリを利用してBさんと出会いました。Bさんは社会人3年目で年齢も近く、メッセージでのやり取りののち、実際に食事に行くことになりました。食事の席では、仕事や趣味、家族の話題などで盛り上がりました。何度かお茶や食事をするうちに、Bさんは自分の「知り合い」というCさんを連れてきました。Cさんは、脱サラしてビジネスをしているという人でした。Cさんを交えて食事などするうちに、Cさんのビジネスが、暗号資産の仕組みや取引のノウハウを売るというもので、お金も稼げる上に自分の時間も作れる、というものであると教えられました。
やり方は簡単で、まずは一緒にビジネスをやってくれる「知り合い」を誘ってチームを組んで取り組むこと、そうすると自分の売上だけでなく、チームの売上も加わってますます利益が得られる、上位になればなるほど自分が働かなくてもお金が入ってくるということでした。初期費用は50万円でした。
Aさんは、自分の「知り合い」であるBさんとCさんが勧めるのだから悪いものではないだろうと思い、消費者金融からお金を借りて初期費用を支払いました。
その後、Aさんは、Cさんが主催する「セミナー」に何度か参加しましたが、その内容は、マッチングアプリに登録して「知り合い」を作ることや上位会員につなげる方法ばかりで、暗号資産の仕組みやノウハウに関する説明はありませんでした。
被害に遭わないためには、まずマルチ商法について正しく知っておく必要があります。
マルチ商法は、階層的な序列に基づいて顧客を勧誘して商品等を流通させる仕組みを持った取引のことをいいます。最近はネットワークビジネス、MLMなど様々な名称で呼ばれています。そのうち、特定商取引法で規制されている「連鎖販売取引」は、簡単に言えば、参加のために一定の負担を伴うもので、新たな顧客を紹介すれば一定の利益が得られる旨の勧誘を行うものをいいます。
これと似て非なるものに、いわゆる「マルチまがい商法」があります。
マルチまがい商法とは、一言で言えば、特定商取引法で規定されている連鎖販売取引の要件(定義)に該当しないように装うことで、規制逃れ(脱法)を図ろうとする商法です。
通常のマルチ商法が「商品等を流通させる仕組み」であるのに対して、マルチまがい商法は、実質的に「商品等の流通」を伴わないものである点が大きな違いです。商品等の流通といっても、実際に価値が不明確な商品等が謳われていることが多いので注意しましょう。
事例の中では、「暗号資産の仕組みや取引のノウハウ」とされているものに、50万円の価値に見合った実態があるかないか、といった点がポイントです。
ビジネスに参加したAさんですが、上京して1年間、仕事以外の人と関わりがなかったのですから、知り合いに勧誘するといってもうまくいきません。家族や友人からは、それマルチでしょ、といわれて断られてしまいました。
BさんやCさんからは、とりあえずマッチングアプリで知り合って意気投合するところから始めよう、と言われましたが、こちらも一向にうまくいきません。
暗号資産の仕組みや取引のノウハウなどの教示も一度もありませんでしたので、こちらでも利益をあげることなどできませんでした。
結局、初期費用を丸ごと損してしまいました。
特定商取引法の連鎖販売取引に該当すれば、契約を取り消すこともできます。しかし、近時のマルチまがい商法の場合には、会社の実態がなく、担当者と連絡すらとれなくなることが多く、結局支払った費用は返ってきません。
それだけでなく、「暗号資産の仕組みや取引のノウハウ」に実態がなかった場合には、自分が勧誘した人から損害賠償を請求されてしまう可能性もあり、現に裁判例ではこの請求を認めたものもあります。
このように自ら財産上の被害を受けるだけでなく、加害者となってしまうこともあります。マルチまがい商法に該当するか否かを厳密に判断することは非常に困難であるため、どのような「出会い」をきっかけとするものであっても、相手が「知り合い」というだけで安易に信用して契約してはいけません。このような契約を勧誘してくる「知り合い」は、あなたを勧誘することによって利益を得ています。つまり、あなたはその「知り合い」にとってのお金儲けの道具ともいえるでしょう。
相手が「知り合い」であったとしてもきっぱりと断ることが大切です。
また、契約してしまった場合には、なるべく早期に消費生活センターに相談しましょう。
第2回 ちょっとお小遣い稼ぎがしたかっただけなのに
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執筆: リンク総合法律事務所 弁護士 今泉 将史 氏
オンラインビジネスの発展により、アフィリエイト広告をはじめとして、新たな内職的な副業が出始めています。これらの中には、副業を始めようとする人に借金をさせてまで金銭を騙しとる非常に悪質な業者も出現しており、注意が必要です。
Aさんは、社会人3年目に入り、仕事は順調でしたが、思ったとおりの収入が得られていませんでした。そこで、最近友達も副業でウェブサイト制作を始めたと聞いたことから、自分も副業を探していました。
自身のSNSに流れてきた広告から、副業を紹介するサイトをクリックしたところ、LINEの友達追加画面に誘導され、副業の詳細な説明は電話で行う旨告げられました。その後、担当者と称する人から電話がかかってきました。担当者が紹介する副業の内容は、出会い系サイトに偽名で登録して、メッセージをやり取りするだけでよいとのことでした。
サポートプランというのに登録すると、メッセージを自動的にやり取りしてくれて、何もしなくても月30万円は稼げるとのことでしたが、サポートプランは、150万円が必要とのことでした。
Aさんは、150万円ものお金を用意することができないと告げたものの、150万円くらいならすぐに稼げるからお金の調達方法を教えてあげると言われ、担当者の言うとおりにアプリをダウンロードしたところ、担当者はAさんのスマートフォンの画面を見られるようになってしまいました。担当者は、具体的な手順をAさんに指示し、Aさんは言われるがままに消費者金融から合計150万円を借金させられ、そのお金を渡してしまいました。
しかし、言われたとおりにメッセージを送るなどしたものの、全くお金は入ってこず、それどころか事業者に連絡すらつかなくなってしまい、結局150万円の借金が残ってしまいました。
SNSなどでは、豪華な生活を送っている様子などを見せて、あたかも簡単にお金が稼げるかのような宣伝が多くみられます。しかしながら、短時間で簡単に、しかも多額のお金が稼げるなどということはありません。
まずは、広告などを鵜呑みにせず、なぜその仕組みでお金が儲かるのか、きちんと理解することが大切です。事例では、メッセージを送ることによってお金が稼げる仕組みや自動でお金が稼げるサポートなどがあるとのことですが、仮にそうした仕組みがあるとすれば、当該事業者が自らその「仕組み」を使ってお金を稼げばいいだけであって、わざわざあなたにお金を稼がせてあげる必要はありません。
最近では、事例のように、遠隔操作アプリを利用して、借金の方法を具体的に指示したり、銀行口座へのアクセスコードなどを求めてくる手口もあります。借金までして行うに値する仕事なのか、立ち止まってよく考えてください。
中には、借金申込の際に、あなたの仕事内容などについて虚偽の内容を記載するよう求められることもあります。消費者金融との関係でも問題となりますので、必ず断ってください。
そして、決して個人的なパスワードなどを教えないようにしてください。あなたの口座が詐欺に利用されて口座のお金が引き出せなくなってしまったり、最悪の場合、その口座を利用した被害者から裁判を起こされる危険性もあります。
そもそも借金をしてまで代金を支払うよう求められたらきっぱりと断ること、判断に迷ったら消費生活センターに相談することが大切です。
第3回 無料見積もりのはずが、25万円の支払いに?! |
執筆:リンク総合法律事務所 弁護士 今泉 将史 氏
誰しもが一度は経験する水回りや害虫などの暮らしのトラブル。そこにはさらなるトラブルの危険性が潜んでいます。
トイレの水の流れが急に悪くなったので、インターネットで検索したところ、「水漏れ・詰まり修理 関東最安値500円(税込)~」「無料電話相談・お見積もりはこちら!」「出張・見積もり 無料0円! キャンセルも無料!」と書かれたサイトを見て電話をかけ、無料見積もりを依頼しました。
自宅にきた業者に見積もってもらったところ、「数千円の作業と、8000円の作業があるんですが、8000円の方が直る可能性は高いです。」と言われたので、8000円の作業に応じましたが、その作業後、今度は「思った以上に状態が悪く、ポンプの作業を続けられません。」と言われて便器を外す作業を勧められました。これにも応じたところ、次は「汚水がパイプの上まで出てきています。機械のワイヤーを奥まで送って、どこに詰まりがあるか調べないといけません。」と言われて応じました。その次には「ワイヤーが詰まりの部分まで到達しましたが、先端から水圧が出るタイプの機械で詰まりを除去する必要があります。」と言われてこれにも応じました。最終的には詰まりは解消しましたが、各作業代金の総額として25万円を請求されました。
(1)複数の業者から見積もりをとろう
日常生活に欠かせない電気、ガス、水道などのトラブルや、自身での対応が困難な害虫駆除などの解決を安価かつ迅速に行えると謳って高額の費用を請求する悪質業者が後を絶ちません。自宅ポストに入っていたチラシに起因するものもありますが、特にインターネット上の広告をきっかけとする被害が多い傾向にあります。事例のように、極端に安い金額を提示している業者などは要注意です。まずは一つの業者にのみ依頼するのはやめて、できるだけ複数の業者から見積もりをもらうようにしましょう。
(2)信頼できる業者を探そう
最近では複数の業者を掲載しているポータルサイトなども登場していますが、実際には、どこに連絡しても同じような高額請求を受けるおそれがあります。
たとえば、地元の業者や組合の業者などを調べるなどして見積もり先を探しましょう。賃貸住宅の場合は、まず管理会社へ連絡・相談するのがよいでしょう。
(3)作業内容と費用についてきちんと説明を受けよう
業者とのやり取りに当たっては、どのような目的で、どのような作業をやるのか、また不具合の程度に応じて作業にいくつかの段階があるのであれば、どの段階までいけばいくらかかるのか、きちんと説明してもらいましょう。
契約をせかされたり、作業をしてからすぐに次の作業を提案してくるようなら要注意です。
まずは、その場ですぐに契約をしないようにしましょう。
また、契約をしてしまったとしても、作業内容や費用に納得ができない場合には、その場ですぐに支払いをせず、後日請求してくださいなどといって一旦は業者に帰ってもらうようにしましょう。
(4)困ったら消費生活センターに相談しよう
ご自身で業者を呼んでいたとしても、事例のように無料見積もりを頼んだだけである場合などには、クーリング・オフができることもあります。また、クーリング・オフは、すでに業者が作業を終えていたとしても可能な場合があります。
トラブルの際には消費生活センターに相談しましょう。
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課学習推進担当
電話番号:03-3235-1157