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更新日:2021年12月22日
若者が巻き込まれやすい「お金」や「美」にまつわるトラブルはどのようなものなのか、その予防策・解決策などを3回にわたりお届けして、トラブルに巻き込まれないためにどうすればいいのかを一緒に考えていきたいと思います。
執筆: たつき総合法律事務所 弁護士 洞澤 美佳
近年、「オンラインサロン」でもうけ話を持ち掛けられることで生じる被害事例が増えています。あなたの不安や欲望に巧みに付け込む手口について一緒に考えてみましょう。
SNS で知り合った人から「ブログでアフィリエイト収入が得られる」などと誘われて、話を聞くだけと思い、相手に連絡したところ、オンラインサロンへの入会を勧められた。会費30万円は高すぎると思ったが、「今なら特別価格にできるのにもったいない」「すぐに取り返せる」などと言われた。断っても勧誘され続けて段々と嫌になり、稼いで取り戻せばいいと考えて、クレジットを使って入会した。その後ブログを始めたが全然稼げない。解約したい。 |
この種の事例では、SNSのDMや広告をきっかけにしたもの、友人・知人からの勧誘によるもの、サロンを人に紹介すると報酬がもらえるというもの、最初は数千円だったのが高額なセミナーの勧誘を受けるように勧めてくるもの…などと、色々なバリエーションがあります。
お金を稼ぐのは大変なことです。「確実」「簡単」にもうかる話があったら、皆やっているはずですが、実際には違います。なぜなのでしょう。そんな話などありえないからです。物事には必ず裏表があります。勧誘者が、いいことばかり言って悪いことを言わないのは、相手に一面的な情報だけを与えることで、裏の部分に気付かれないようにしているからに他なりません。裏の部分が分かったら警戒して誰も契約してくれないからです。相手の話をうのみにせず、裏表のからくりを意識することと、安易に信用せずに立ち止まる勇気が必要です。
人はとかく自分のリスクを過小評価しがちです。しかし、“契約する”ということは“法的な拘束力を持った約束をする”ということです。契約する以上、漫然と相手から与えられるものに期待するのではなく、当事者として権利と義務を自覚する必要があります。特に、解約できる場合の条件や、違約金の有無などは最低限確認するべきです。
また、広告画面やDM、無料通信アプリやメールなどでの相手とのやりとり、契約書なども捨てずに保管しておきましょう。
なお、場合によっては契約を解除できることもあります。
契約に不安を感じたときは、消費生活センターに相談をしてみましょう。
執筆: たつき総合法律事務所 弁護士 洞澤 美佳
エステティックの契約は、消費者トラブルが起きやすい取引の一つとして法律で規制がされています。なぜなのでしょうか。あなたの希望を満たすための手段としてエステティックの契約をするときの注意点について、一緒に考えてみましょう。
2 年間通い放題と言われ、全身脱毛約 70 万円のコースを契約し、クレジットで月々約 2 万円ずつ 4 年間支払うことにした。10 回程度通ったが、効果も実感できず、月々の支払いが苦しいので解約を申し出たところ、契約したコースは施術回数が決まっていて、その分の施術はすでに終了しており、あとはサービスで通えるようになっているから返金できないと言われた。よく見ると契約書には回数が記載されていたが、気が付かなかった。 |
SNSの影響もあり、他人の目を意識する機会が格段に増えました。プロの手で広告のように美しくなれるなら、未来の自分への投資だ、分割払いなら払い切れると考えがちです。しかし、エステティック契約は、実際に一定期間を費やしてやってみないと効果がわからない上に、代金も高くなりがちです。この点、広告の写真の端には、小さな文字で「効果には個人差があります」などと書かれているはずです。こうした片隅の注意書きも広告の内容の一部です。そして、この広告では注意書きも大切なポイントになっています。お金を払えば結果(美)が約束されるわけではありません。あなたが支払うお金は“結果(美)”そのものではなく、 “施術(サービス)”への対価なのです。重要な注意点に関する記載がわかりにくい広告は、それ自体違法であるという場合もありえますが、広告を受け取る私たちとしては、まずは広告の目立つ部分ばかりに惑わされない、不適切な広告表示をしている事業者は選ばないという主体的な態度も重要です。このことを理解した上で契約するかどうかを判断しなければなりません。
とかく人は、不確実な効果を過大評価する(きっと効果があるはず、「通い放題」ならお得なはず…)一方で、リスクは過小評価(きっと払えるはず)しがちです。しかし、“契約する”ということは、たとえ効果が出なかったとしても、決められた代金を支払う約束を取り交わす(法的義務を負う)ということなのです。
事業者は、契約書を契約者に渡す法的義務があります。事業者は「通い放題」の意味を誤解のないよう説明すべきですし、あなた自身も“その場で”契約書を見て「通い放題」などの意味を予め確認することが大切です。また、将来何が起きるかは誰にもわからないのですから、せめて途中で解約する必要が生じた場合に備えて、解約の方法やお金の精算方法なども契約前に確認しましょう。
なお、場合によっては契約を解約できることもあります。
契約に不安を感じたときは、消費生活センターに相談をしてみましょう。
執筆: たつき総合法律事務所 弁護士 洞澤 美佳
パーソナルトレーニング契約は、エステティック契約とは異なり、特定商取引法などの消費者を保護するための特別な法律はありません(エステティック契約については第2回参照)。このような取引の注意点について一緒に考えてみましょう。
インターネットで、「月々1万円から」とあったパーソナルトレーニングジムを見つけて、無料カウンセリングを申し込んだ。カウンセリングでは複数のプランを紹介されたが、全部が100万円以上だったので断った。しかし、ローンを勧められ、熱心に勧誘された。断れる雰囲気ではなく、押し切られるまま100万円のプランを契約した。帰宅後、契約書を見ると、4年間の分割払いで総額が120万円の契約となっていた。ネット広告には「詳細は無料カウンセリングを受けてから」とだけあり、高額なプランの掲載はなかった。高額の契約をするつもりはなく、4年間支払い続けるのは経済的に苦しい。解約したい。 |
「月々1万円から」「無料カウンセリング」などと広告していることがありますが、自分に合ったプランを組み、手取り足取りで提供されるトレーニングが格安ということがありうるのでしょうか。事業者は、トレーナーを雇い、施設も維持しなければならず、そのための費用が発生します。格安にした分の費用を補うために顧客を集め過ぎれば、予約が入れにくくなり、顧客にしわ寄せがきます。つまり、こういうサービスを格安で提供するには限界があるのです。
消費者を保護する特別な法律で守られていない契約の場合、解約するのは大変です。契約には法的な拘束力があり、簡単にやめることはできないからです。
とはいえ、事例のように、無料カウンセリングを受けた後、熱心に勧誘され、支払えそうな金額を提示されれば、押し返すのは困難でしょう。断っているのに行き過ぎた勧誘が行われた場合、契約を取り消せることもあります。しかし、いざ裁判ともなれば、こうした密室での状況を立証する責任は訴えた側(この場合は消費者)にあります。それは容易なことではありません。だからこそ、契約してしまう前に立ち止まり、契約には法的な拘束力がある、ということを忘れないで下さい。
契約に不安を感じたときは、消費生活センターに相談をしてみましょう。
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お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課学習推進担当
電話番号:03-3235-1157