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更新日:2021年8月27日
ネット広告とはどのようなものなのかを知り、思わぬトラブルに巻き込まれることのないよう、ネット広告の仕組みについてこれから3回にわたりお届けします。
執筆: 大阪経済法科大学 経営学部 教授 寺地 一浩
日頃、同じネット広告を頻繁に目にすることがあり、不思議に思ったことはないでしょうか。これは、Webサイトにアクセスするときに、いつ、どのWebサイトを見たかといったネットの閲覧履歴の情報が、パソコンやスマホのブラウザに保存されていることを利用しています。
ネットの閲覧履歴などの情報はクッキー(Cookie)とよばれており、広告企業は消費者がどのサイトを見たかの「ネット上の行動」をクッキーにより捉えています。このクッキーを利用して、消費者の興味や関心を推測し、ネット広告が配信されており、これらの広告は「ターゲティング広告」と呼ばれています。
ネットを利用した消費者の年齢、性別、居住地域等の属性や、これまでのネット上の行動パターンから、ターゲットを絞り込んだ消費者に広告が配信されているため、同じサイトを見ているのに、自分と友達で表示される広告が違っていたりすることが起こっています。
一度Webサイトを訪れた消費者に対して、そのWebサイト離脱後も追跡するネット広告は、「リターゲティング広告」とよばれています。一度訪れた消費者を逃してしまわないように、Webサイトを離れた後もクッキーを目印として消費者を追跡し、消費者が見ている別のWebサイトの広告枠に同じ広告を表示させる仕組みです。消費者個人をターゲットとして追跡するので、同じ人が同じ広告を頻繁に目にすることが起こっています。
繰り返し表示されるネット広告に対して、自分に適した広告が表示されることで利便性を感じることもありますが、一方では趣味や嗜好など興味関心がある広告が繰り返し表示されることにより、親近感をもちやすくなりネット広告に影響を受けてしまう傾向があります。必要以上にネット広告に影響を受けないためには、企業から自分が標的とされ、ネット広告が配信されていることを意識し、内容を慎重に読み込んだうえでネット広告を利用する必要があります。
執筆: 大阪経済法科大学 経営学部 教授 寺地 一浩
Web内の記事(コンテンツ)だと思っていたら、よく見るとネット広告だったりしたことはないでしょうか。コンテンツに自然に溶け込ませることで広告色を消し、コンテンツの一部として見てもらおうとする広告は、「ネイティブ広告」と呼ばれています。
ネイティブ広告には、コンテンツとコンテンツの間に挟んで表示するもの、コンテンツの下に関連記事やおすすめ記事として表示するものなどがあります。消費者が関心をもって見ているWebサイトに目障りとならないように表示されるので、消費者は、コンテンツについての共感とともに、警戒心を解いて広告をクリックしてしまい、そこで初めて広告だったと気付く、ということが起こっています。
「アフィリエイト広告」とは、個人のWebサイトやブログなどに掲載されている、商品やサービスの購入を促す広告です。Webサイトなどを訪れた消費者が、アフィリエイト広告をクリックして商品を購入すると、広告を掲載したWebサイトなどの運営者に、広告主の企業から報酬が支払われる仕組みです。そのため、成果報酬型広告と呼ばれています。
アフィリエイト広告を掲載している個人のWebサイトやブログなどの運営者は、クリックや購入などの成果がないと報酬につながりません。そのため、報酬を意識して、実際の商品の内容からかけ離れた過剰な内容を掲載してしまうケースも考えられます。アフィリエイト広告では掲載内容を吟味し、慎重に読み込むことが必要です。
ソーシャルメディアを利用する人の中には、多くのフォロワーがいるインフルエンサーと呼ばれる人がいます。ネット広告ではないですが、インフルエンサーの商品についての感想や意見は、多くの消費者が参考とするなど影響力があります。
ただし、インフルエンサーが企業から報酬や商品の提供を受けているにもかかわらず、そのことを公開せずに商品情報を発信することは、消費者を欺くこととなり、近年問題となっています。これらは「ステルスマーケティング」と呼ばれており、注意が必要です。
執筆: 大阪経済法科大学 経営学部 教授 寺地 一浩
有名人の写真を無断使用した広告や、架空の体験談やニセモノの口コミが掲載されている広告、商品の効果効能がないのにあるかのように文章表現がされているなどの、でたらめな内容の広告は、フェイク広告と呼ばれています。これらのフェイク広告は、消費者が広告をクリックしてその商品を購入した場合に、広告主の企業から報酬が支払われる成果報酬型広告に多く見られます。
同様の他商品等と比較するなど、広告の掲載内容をよく吟味し、慎重に読み込むことが必要です。
ネット広告に限らず、インターネットで得られる情報は、SNSの利用履歴やインターネットの検索履歴を用いたアルゴリズムによって、見たい情報が優先的に表示される傾向にあります。その結果、個人が好まないと思われる情報からは隔離されるようになり、そうした情報に接する機会が失われてしまいます。こうした状況は、米国のインターネット活動家イーライ・パリサーにより指摘され、「フィルターバブル」と呼ばれています。このようにインターネットにおいて接する情報は、気付かないうちに偏りが生じているのです。
SNS等の利用により、自分と興味関心や価値観が似たもの同士で交流していると、特定の考え方が増幅され影響力を持ってくることがあります。このような現象を「エコーチェンバー現象」といい、自分とは異なる意見が自然と除外され、自分と似た考え方が増幅されて、ときには反対意見が受け入れられないようにまでなってしまいます。
ネット広告は、便利なものです。しかしながら、これまで見てきたように、ネット広告の仕組みやインターネット情報の偏りを知り、無意識のうちに自分にとって心地よい情報ばかりに囲まれている可能性があることに気付くことが、思わぬトラブルに巻き込まれないために大切です。
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