更新日:2024年7月29日
令和5年5月頃、甲が在宅中、営業員Aが「近所で工事をしており、防水のシンナーの臭いで苦情が入ったので近所に聞いて調べさせてもらっています。」と言って、勧誘目的を告げず訪問してきた。
甲が臭いはしない旨を伝えると、Aは、「屋根のサイディングが浮いているように見えたので、点検した方が良いです。良ければ上がって見ましょうか。」、「サービスでやりますから。近くで工事もやっているので。」と言ってきたため、甲は、無料で点検してくれると思い、了承した。
その後、Aが営業員Bを連れて来訪し、Bは、屋根に上って点検をし始めた。
屋根を見終わったBは甲に対し、スマートフォンで『ビスが抜けている箇所の写真』や『屋根と屋根の間に隙間があってコーキングがとれかかっている箇所の写真』等を見せながら、「コーキングしてビスで止め直した方が良いです。台風とか風が来たらめくれちゃうから今のうちに早く応急処置しておいた方が良いですよ。補修はした方が良いです。」と不実を告げた。
甲は、見せられた写真やBの言動を信じていたので、見積りを依頼した。
翌日Bが持ってきた見積書には、〇〇万円と記載されており、払える金額であったことから、甲は契約を決意した。
Bは、甲に契約書を手渡し署名押印するように指示した。
甲は、上から順にBの指示通りに署名していったが、途中でBが「クーリング・オフできませんからね。」と、何度もしつこく念押しするかのように言ってきた。
甲は、これが理由で、後日消費者センターに相談に行くまでクーリング・オフできないものだと思い込んでいた。
契約書裏面に記載の約款とクーリング・オフについて、Bは、「裏に約款書いてあるので。」と言うだけで、約款どころかクーリング・オフの説明もしなかった。
契約書には、諸経費の詳細や単価、商品名の記載がなかった。
また、契約書に代金の支払方法が記載されておらず、甲が質問のために契約書記載の電話番号に架電したところ、電話が繋がらなかったことから、甲は不信感を抱いた。
後日、甲が隣家から自宅の屋根を確認したところ異常が無かったことや、自ら事業者の事務所に行ったところ、人のいる気配が無かったことから、親族の勧めで消費者センターを訪れた。
相談員の助言でクーリング・オフ可能であることを知った甲は、当日中に解約通知を発信した。
更に後日、甲は自宅の屋根の現況を知るために別の屋根業者に屋根点検の依頼をした。
そして屋根点検の結果、「別に問題はありませんでした。」と自宅の屋根に修理の必要がない事が判明したため、Bらが言っていたことが嘘であると確信した。
令和5年8月頃、乙が在宅中、インターホン越しに「こんにちは。すみません、アサヒホームズっていうんですけど、工事の挨拶です。」と勧誘目的を告げず営業員Cが来訪した。
Cは、「近くのアパートで工事をするので挨拶に来ました。」、「近くといってもちょっと離れてるんですけどね。塗料の臭いがここまで届いちゃうと迷惑かなと思って、それで挨拶に。」、「アパートの上から見たら屋根が壊れているみたいです。黙って写真撮っちゃうと悪いので、もしよかったらどういう風になっているかちゃんと見ますよ。もしずれていたらお茶の一本でももらえれば直しますし。」などと言ったため、乙は無料で点検してくれるのなら良いかなと思い、了承した。
Cは、屋根の写真を撮ってきて、乙に対し、「撮ってきました。ちょっと壊れているみたいですね。」と言いながら持っていたスマートフォンの画面を素早く見せ、すぐに仕舞った。
乙は、あまりにも早く見せられたので何が映っていたのか認識できなかった。
そしてCは、「屋根瓦の状態が気になるなら屋根に直接上って見ましょうか。」等と言った。
乙は、ここまでの話で、無料で点検としか言われておらず、工事や費用などの金銭的な話は何もされなかったので、全て無料で行ってくれるのだと信じ切っており、何の疑いも持つことなく快諾した。
その後、合流した上司のDが屋根の点検を始め、屋根を見終わったDは、乙に対し、「こんな風になっていました。」と言いながらスマートフォンで、所々の瓦が剥がれたりしている黒い瓦屋根全体の画像を見せ、『屋根上部の瓦が剥がれていて茶色い木のような部分が見えていること』や『屋根の下の部分の端にある瓦が1個剥がれていて、黒色の防水シートが見えていること』などと不実を告げた。
Dは、乙に対し現在雨漏りしているかどうか聞いてきたので、乙はしていない旨を答えた。
Dは、乙に対し、工事の内容について、「じゃあ、大丈夫です。そのまま使えますね。針金で閉じているだけなので、針金をとってそのまま使いますから、瓦は。瓦を全部取って、使えるものは使って、防水シートの上に防水シートを張る作業をします。」と説明した。
Dは、工事金額を「〇〇〇万円くらいですね。」と言ったため、無料点検と無料で出来る修理だと思っていた乙は、急に高額な屋根工事の勧誘をされたことに対してとても驚いた。
しかし、乙は、今まで屋根工事もやったことがなく、相場の金額もわからなかったので、これが普通なのかと思い、とりあえず見積りを依頼した。
その後、Dが手渡してきた見積書兼請求書や工事請負契約書には、当初Dの言っていた金額から数十万円引かれた金額が記載されていたことから契約を決意した。
Dは、乙に対し、工事請負契約書に記載された工事内容の項目名と金額のみを読むだけで、工事内容の詳細やクーリング・オフについての説明はしなかった。
その日の夜、冷静になった乙は、Dから見せられた画像には、本来自宅の屋根中央に位置する映るべきはずの地デジ用アンテナが映っていなかったことを思い出した。
翌朝、乙がベランダや家の外周から屋根の状態を確認したところ、Dが画面で見せた個所と位置的に該当する場所は綺麗なままで、Dの言った不具合は確認できなかった。
Dが言ったことに関して不信感を持った乙は、消費者センターへ相談に行った。
乙は、相談員から説明を受け、そこで初めて、工事請負契約書の裏面にクーリング・オフについての説明書が記載されていることを知り、相談員の助言を得て、当日中に解約通知を発送した。
令和5年10月頃、丙が在宅中、玄関チャイムが鳴り、インターホン越しに「向かいのアパートで工事をします。迷惑をかけるので挨拶に来ました。お宅の屋根を見たら釘が抜けています。そのせいで屋根が外れて浮いていますよ。」と言って、勧誘目的を告げず、営業員Eが一人来訪した。
丙が外に出て、Eが指示した屋根を確認したが良く分からなかった。
Eは、丙に対し、「ただ外れているだけなら釘を打つだけなのでジュース1本でも貰えればやりますから。屋根見ましょうか。」と言った。
Eは、会社名や氏名を名乗らなかったが、Eのことを屋根業者だと思った丙は無料で見て直してもらえると思い、了承した。
その後、Eが上司Fを連れてきて、Fは屋根に上り、1時間かからないくらいで降りてきた。
Fは、消費者宅のテレビにスマートフォンを繋ぐと、『屋根から釘が少し抜けて半ばで折れている映像』、『屋根の釘が抜けて釘穴が見えている映像』を見せてきた。
Fは、「屋根棟の板が腐って釘が抜けている。だから屋根が浮いている。」、「屋根棟の板だけ交換する必要がある。屋根の中間部分を繋がなきゃいけない。水が入らないようにカバーをする。板を入れて、その板に釘を打てばいいだけだから大丈夫。」、「自分の所に板が余っているから、それを使えば安くなる。」などと告げた。
丙は、無料点検と無料で出来る修理を承諾しただけで、お金がかかる工事になるとは言われなかったので驚いた。
Fは、「強い風が来たら飛んで行っちゃうかもしれない。雨水が入ったら段々悪くなって、下まで入ったらダメになる。」と言ってきた。
丙は、相見積りをする意思を伝えた上で見積りを依頼したところ、Fは「相見積りとるならうちは手を引くよ。」と言ってきたため、丙は話が進まないと思い、相見積りはとらないことにした。
その後、Fが見せてきた工事請負契約書には〇〇万という金額と、丙に何の相談もないまま既に工事期間や支払方法が記載されていた。
また、契約書には、修理工事であるにも関わらず解体費用しか記載されておらず、担当者の氏名も記載がなかった。
Fは丙に対し、ただ工事請負契約書の表面の3か所の署名押印だけを求めるだけで、これらの書類に記載されている工事の詳細はおろかクーリング・オフについて何の説明もしなかった。
その後、事情を知った親族からのアドバイスにより丙は解約することにした。
親族が事業者に架電してクーリング・オフの手順について聞いたところ、「契約書の裏面を読んでくれ」の一点張りで、良く分からなかった。
翌日、丙は親族と共に消費者センターを訪れ、相談員からクーリング・オフの手順を教えてもらい、解約通知を発送した。
その後、丙は、計3社の屋根業者に見積りを依頼した。
3社とも共通して釘が抜け出て屋根が浮いている状況は認めたものの、Fが勧めてきた〇〇万円の屋根棟の板だけ交換する工事では、また同じ状態になってしまうので、現在の屋根を残しつつ上から防水シートと新しい屋根を載せる屋根カバー工法を勧められた。
本当は屋根棟だけではなく屋根全体を直す必要があるのに、Fは屋根棟だけ直せば良いような嘘を言ったのだと、甲は思った。
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