トップページ > 相談窓口 > 東京都消費者被害救済委員会 > 紛争処理(直近5年分) > 「USBメモリを媒体とする投資関連学習教材の販売に係る紛争」調停解決
更新日:2021年9月22日
令和元年5月30日
生活文化局
本日、東京都消費者被害救済委員会(会長村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)から「USBメモリを媒体とする投資関連学習教材の販売に係る紛争」(平成30年9月19日付託)について、相手方事業者が調停案を受諾したことから解決した、と知事に報告がありましたので、お知らせします。
【申立人らの主張による紛争の概要】 【解決の内容】 |
★本件は、いわゆるマルチ商法であり、特定商取引法の規定により、クーリング・オフ期間経過後でも、中途解約ができます。 |
★投資の知識は、学習教材を購入してすぐに習得できるものではなく、実際に投資を始めるには一定の資金が必要です。また確実に利益が得られるものではなく、資金を失う可能性があります。こうしたことを十分認識し、慎重に対応しましょう。
★紹介料を得るため、友人等を強引に勧誘すると、人間関係にヒビが入ることもあるうえに、自らが消費者被害拡大の加害者となるおそれがあることに注意しましょう。
★契約トラブルでお困りの方は、最寄りの消費生活センターに相談してください。
1 国や業界団体への情報提供 2 都内の消費生活センターへの情報提供 |
東京都消費者被害救済委員会とは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
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特定商取引法に定める連鎖販売取引であることから同法に基づく中途解約を認め、相手方は58万円のうち52万2千円を申立人らに一括して返還する。申立人らは、相手方から受け取ったUSBメモリを、相手方に返還する。
1 連鎖販売取引は中途解約が可能である
本件契約が、相手方も自認する「連鎖販売取引」であることを前提とするならば、特定商取引法の中途解約規定の適用が可能であり、既に商品販売がなされている場合は商品売買契約も中途解約が可能である。なお、本件契約書面では、中途解約の場合に、「契約時の喫茶店代と移動代」「契約書面の印刷費用や領収書の印紙代」等を控除することとされているが、これらは特定商取引法により事業者に控除が予定されている「契約解除及び履行のために通常要する費用」ということはできない。相手方は販売価格の10分の1に相当する額である5万8千円を留保できるに過ぎない。(特定商取引法の規定で、中途解約の場合に事業者が解約料等として請求できる額の上限は、購入代金の1割とされている。)
2 中途解約ができない場合の「商品を使用した」場合には該当しない
特定商取引法は「商品を使用した」場合は、中途解約できない旨規定するが、事業者が「当該商品を使用させた場合を除く」としている。申立人らは、USBメモリの購入後、相手方のメンバーの勧めにより、メンバー所有のパソコンで1回閲覧したのみである。相手方の行為は、まさに「使用させた場合」にあたり、中途解約できない場合には該当しない。
3 投資に関する知識・経験がなく定期収入がない学生に、消費者金融からの借入れを勧めて契約させたとするならば、適合性原則に違反する
申立人らは、本件契約の勧誘者からUSBメモリの購入資金の借入れを勧められたと証言している。申立人らは契約時学生であり、投資にかかる知識、経験は全くなく、収入もアルバイト収入のみであった。近い将来における投資はもとより、USBメモリの購入資金を用意できない学生であるにもかかわらず、申立人らの知識、経験、資力を十分確認しないまま、消費者金融からの借入れを前提として本件契約を締結させたことは、特定商取引法が規定する「適合性原則」に違反しているものと評価できる。
適合性原則違反による勧誘であることを理由に、申立人らは、相手方に対し、不法行為に基づきUSBメモリ購入代金相当額の損害賠償請求が可能と考えられる。
1 事業者に対して求めること
(1) 適合性原則の遵守
申立人らは、20歳代の若者で投資についての知識、経験はなく、購入代金は消費者金融からの借入れで調達し、購入した。事業者は、消費者の知識、経験、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならない。
(2) 中途解約への誠実な対応
特定商取引法の規定では、連鎖販売取引において、消費者は中途解約をすることができ、中途解約の場合には損害賠償額の予定や違約金の定めがあるときでも、事業者は契約解除及び履行のために通常要する費用を越える額を請求できないとされている。事業者は消費者の中途解約権について十分認識し、誠実に対応してほしい。
2 消費者に対して求めること
(1) 知識習得の困難さや投資リスクの認識
投資手法は、学習教材を購入したからといって簡単に習得できるものではなく、実際に投資を行うには、一定の資金が必要である。また投資は確実に利益が得られるものでないことを認識してほしい。
(2) 連鎖販売取引のリスクの認識
連鎖販売取引においては、本件のように、友人や知人を紹介すれば紹介料が得られるとされるが、簡単に紹介できる訳ではなく、紹介した友人や知人をリスクにさらしたり、仲が気まずくなり、友人を失ったりすることもある。こうした危険性があることを十分に認識してほしい。
3 行政に対して求めること
(1) 啓発活動の強化
本件のような被害が多発しているため、若者(学生、20歳代前半を含む)に対する啓発活動を強化する必要がある。
(2) 行政の法執行の強化
法執行部門は、相談情報を常にチェックし、速やかな調査を行い、適正な処分・指導を実施すべきである。
《参考》投資関連学習教材USBメモリの連鎖販売取引に関する相談件数の推移(東京都内)
平成30年度は速報値
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。![]() 東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用電話/相談窓口のご案内) |
USBメモリを媒体とする投資関連学習教材の販売に係る紛争(報告書)(PDF:694KB)
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当
電話番号:03-3235-4155