トップページ > 相談窓口 > 東京都消費者被害救済委員会 > 紛争処理(直近5年分) > 「施設内360度写真のウェブサイト掲載に関する代理店契約に係る紛争」あっせん・調停不調
更新日:2021年9月22日
令和2年2月20日
生活文化局
都内の消費生活センターには、副業に関する相談が年間800件強寄せられています。消費者が副業のため、事業者の代理店となる契約をする場合に、特定商取引法など消費者保護規定の対象となるかなど、考え方や問題点を整理して、今後、同種・類似紛争の解決に役立てるため、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に標記紛争の解決を付託していました。本日、同委員会からあっせん・調停不調により終了したと知事に報告がありましたので、お知らせします。
|
委員会では、本件契約は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に該当するので、クーリング・オフにより、申立人らが支払った契約金は全額返金されるべきとする内容の解決案を提示しました。 |
★どんなに儲かると言われても、先に金銭を支払うことにはリスクがあります。契約する前に、得られる報酬が実現可能なものかなど情報収集し、検討しましょう。
また、解約条件や違約金を確認しましょう。
★その場で契約することはせず、家族や友人に相談しましょう。
★契約トラブルにあったら、消費生活センターに相談しましょう。
消費者ホットライン188に電話すると、お近くの消費生活相談窓口につながります。
★業務提供誘引販売取引とは、「仕事(業務)を提供するので収入が得られる」と消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品やサービスを購入させる取引のことです。「代理店契約」であっても、場合によっては、業務提供誘引販売取引に該当し、特定商取引法に基づくクーリング・オフが可能です。 |
1 国や関係機関への情報提供 2 都内の消費生活センターへの情報提供 |
東京都消費者被害救済委員会とは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
★株式会社トラスト(以下「トラスト」という。)は、店舗・施設等(以下「施設等」という。)に対し、【施設等の内部の360度写真を撮影し、編集してウェブサイトに掲載するとともに、上位表示対策などを行うサービス(以下「本サービス」という。)】を販売している。 ★代理店(申立人)は、トラストの代理人であることを明示して、本サービスの提供を希望する施設等の新規開拓営業活動を行う。本サービスを提供するのは同社である。 ★代理店(申立人)は、トラストからマニュアル・勧誘資料・契約書類一式の提供を受け、研修やサポートを受けて、新規開拓営業活動を行う。そして、成約時に施設等から支払われる契約金は同社が回収し、成約金額に応じて代理店に対し報酬が支払われる。 |
1 本件契約は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に該当し、クーリング・オフが成立している
相手方は、申立人らに対して、本件業務に従事することによって「利益」を「収受」し得ることをもって誘引していた。相手方は、申立人らが支払う契約金と引き換えにマニュアル等の勧誘資料や契約書類、さらには研修・サポートといった「役務」を提供し、申立人らはこの提供されたマニュアル等や研修・サポートを利用して営業活動を行うことによって報酬を受け取ることができる。そうすると、本件では申立人が提供された物品・役務を利用する業務に従事していたということができるが、申立人が行う営業活動が、業務提供誘引販売取引の「業務」に当たるかという点が問題となる。
「業務」は、「その商品の販売」等を行う者が「自ら提供を行う」もの又は「あっせんを行う」ものである。本件のように「代理店」という名称が付されていても、実質的には相手方事業者の営業活動を手足となって担っているにすぎない場合には、事業者が自ら業務を提供していたと言える。したがって、本件契約は、特定商取引法51条1項の「業務提供誘引販売取引」に該当する。
相手方から申立人らに交付された契約書には、業務提供誘引販売取引の契約書としては記載不備があり、したがって、クーリング・オフの起算日がまだ進行していない。申立人らは全員が解約申出書を相手方に送付しているので、本件契約は解除されており、契約金全額が返金されるべきである。
2 不実告知に基づく取消しも可能である
相手方は「1か月、週1でやり続ければ10件契約が取れる」「成約率90%」などと具体的な数字をあげながら、短期間で容易に契約金の元が取れるかのような言辞を行い、申立人らはこれを信じて本件契約を締結したという。しかし、実際には、申立人が店舗を訪問し営業する際に、相手方が同行し相手方が営業するなど相手方のサポートを得ても契約が取れたものは乏しく、申立人単独での店舗訪問では1件も契約が取れていないという。
確実に顧客を獲得できるかどうかは、先に契約金を支払う申立人らにとって重要な事柄であり、これらの言辞は「業務提供誘引販売取引の相手方の判断に影響を及ぼす」といえる。その上で、実際にはこれらの数字どおりの顧客獲得はおろか、顧客を獲得することがほとんど期待できないということであれば、これら勧誘時の相手方の言辞は特定商取引法52条1項の「不実告知」に当たり、申立人らは、同法58条の2により本件契約を取消すことができる。
3 特定商取引法の訪問販売にも該当し、クーリング・オフ等の適用があり得る
申立人らは、相手方が契約をしていた貸オフィスで勧誘を受け、本件契約を締結している。そこで、当該貸オフィスが特定商取引法2条1項1号にいう「営業所等」以外の場所と言えるかが問題となる。
当該貸オフィスは利用契約を締結した者であれば自由に利用することができるものの、相手方が勧誘に用いていたのは相手方のみが固定的に利用することができるスペースではなかった。また、この貸オフィスには利用契約締結者以外の不特定多数の者が自由に入ることはできず、さらに、外部の者がこの貸オフィスに連絡すればいつでも相手方とコンタクトをとることができるという状況にはない。
以上のことから、本件契約は特定商取引法2条1項1号にいう「営業所等」以外の場所で締結された契約であり、「訪問販売」に関する規定(クーリング・オフや不実告知に基づく取消しの規定など)が適用される。
1 事業者に対して求めること
(1)初期費用の回収可能性と、副業の報酬の経済的合理性の説明
事業者は、消費者に対して契約を勧誘する際には、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で消費者契約の内容についての必要な情報を提供する努力義務がある(消費者契約法3条1項2号)。1か月で契約金の回収ができるなどと希望的数値を説明するのではなく、客観的な実績値を示した上で、得られると述べた報酬の合理的根拠を説明すべきである。
(2)金員を借入させて契約する場合の注意
相手方は、申立人らにその場ですぐに契約金を支払うことを要求し、そのために金銭消費貸借契約を締結させているが、契約金の支払いのために、他の事業者からの貸付を受けさせる場合、過剰借入とならないように注意すべきである。まして、消費者金融に同行して、借入目的・年収について偽った内容を申告するよう促すといった行為は行ってはならない。
2 消費者に対して求めること
(1)先に金員を要求されることに対する警戒心
収入を得られることが確実でないのに、先に金員を支払うことの危険性を理解する必要がある。前払いでの契約は、十分な検討時間を要するものであり、勧誘されたその場で承諾するような性質の事案ではないことを理解しておくべきである。
(2)契約内容の確認と持ち帰っての検討
解約条件や違約金などについて、十分説明を受け理解した上で、少なくとも知人や親族などに相談してから契約書に署名すべきである。いったん検討のために持ち帰るべきであり、消費者に検討の猶予を与えない事業者に対しては、警戒しなければならない。
3 行政に対して求めること
(1)副業商法に対する消費者への注意喚起
様々な機会、媒体を用いて、消費者に対し、副業商法の注意点及び危険性について、特に、先に金員を支払う形の副業には注意が必要であること、事業者契約として保護されない場合があることなどを注意喚起すべきである。
(2)副業商法に対する事業者への注意喚起
特定商取引法の規制を守るように自ら契約書面を点検すること、勧誘時の説明責任を果たすことなどを注意喚起すべきである。
《参考》「内職・副業」に関する相談件数の推移(東京都内)
※令和元年度は1月末現在の登録数
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。 東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用電話/相談窓口のご案内) |
施設内360度写真のウェブサイト掲載に関する代理店契約に係る紛争(報告書)(PDF:991KB)
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当
電話番号:03-3235-4155