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更新日:2021年9月22日
平成31年2月14日
生活文化局
都内の消費生活センターには、高齢者(60歳以上)の住居リフォームに関する相談が年間5百件ほど寄せられています。そこで、高齢者が訪問販売で高額なリフォーム契約をした場合の解約の考え方について明らかにし、同種・類似紛争の解決に役立てるため、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に標記紛争の解決を付託していました。
本日、同委員会よりあっせん解決したと知事に報告がありましたので、お知らせします。
【紛争の概要】 【あっせん解決の内容】 |
1 国や関係機関への情報提供 2 都内の消費生活センターへの情報提供 |
★ 訪問販売事業者から勧誘を受けた場合は、その場で契約に応じてしまうのではなく、契約内容をよく確認し、その契約が本当に必要であるかよく考えましょう。
★ 契約は、一旦、締結してしまうと、簡単にはやめられないことを認識しましょう。
★ 事業者の対応に疑問を感じたら、身近な人や消費生活センターに相談しましょう。
★ 高齢者と日常的に接する方は、不審な契約に気付いたら、お近くの消費生活センターに連絡してください。
★ 本件は、訪問看護師が契約書を見つけて地域包括支援センターに連絡し、同センターと消費生活センターがともに対応したことで解決に至った事例です。
★ 一人暮らしや夫婦のみで生活している高齢者は、周囲の目が届きにくいため、消費者被害に遭いやすく、被害に遭った場合も発見が遅れ、被害が拡大する懸念があります。高齢者を消費者被害から守るためには、高齢者と日常的に接する方の見守りが有効です。
★ 都では、高齢者本人以外の家族・第三者からの通報や問合せも受け付けるとともに、地域で高齢者を見守るためのネットワークの構築を推進しています。
東京都消費者被害救済委員会とは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
○申 立 人 70歳代半ばの女性 (年金生活者。集合住宅に一人暮らし) ○申立人の主張による紛争の概要 |
一部の商品の商品名・型番の記載がない、対価の内訳の記載がないなど、適切な契約書面が交付されていないことから、申立人は、特定商取引法に基づきクーリング・オフをすることができ、したがって、相手方は受領した一時金を全額返金する。
1 契約書面の記載事項に不備があるので、クーリング・オフ期間は進行せず、クーリング・オフができる
訪問販売において、事業者は、特定商取引法に定められた事項を記載した契約書面を交付しなければならない。定められた事項とは、例えば、契約者などが、どのようなものを購入・契約したか判断できるような情報であり、具体的には、商品の種類、すなわち商品名及び商品の商標又は製造者名、商品の型式である。また、契約金額についても、数種の商品や役務を組み合わせた場合には、対価の内訳を記載しなければならない。契約書面に記載しきれない場合には、「別紙による」旨を記載して、別紙書面を同時に一体的に交付する必要がある。
本件契約書面では、商品名や商品の型番の記載がないものがあり、金額についても合計額のみで対価の内訳がなかった。見積書にも十分な記載がなく、かつ、契約書面と同時に一体性をもって交付されていなかった。
よって、クーリング・オフ期間は進行しておらず、申立人は、特定商取引法に基づき解除(クーリング・オフ)をすることができ、既に解約通知を送付しているので、相手方は受領した一時金を全額返金しなければならない。
2 消費者の利益を一方的に害する条項は、消費者契約法10条により無効と解される
本件契約書面には、クーリング・オフ期間を過ぎての仕様変更・キャンセルはできない旨の条項があった。民法では、消費者は事業者に生じた損害を賠償して解約できる。消費者の契約解約権を不当に制限する条項は、消費者の利益を一方的に害するものといえ、消費者契約法10条違反になると解される。
3 本件契約は、申立人と相手方の意思表示の合致があるのか疑わしく、錯誤無効となる可能性がある
申立人によると、トイレと風呂場は15年ほど前にリフォーム済みなので、今回はリフォームを希望していなかったという。トイレと風呂場及びキッチンを対象とするリフォーム工事契約は、申立人の意思と齟齬がある内容であることから、申立人の錯誤により契約が無効となる可能性がある。
1 事業者に対して求めること
(1) 適法な契約書面の交付
訪問販売で消費者に交付する契約書面においては、どういうものを購入・契約したのか消費者や第三者が判断できるよう、購入した商品・役務及び対価が特定できなければならない。事業者は書面交付の重要性を十分に認識したうえで、法に従った書面を交付する必要がある。
(2) 勧誘目的の明示
本件事業者によると、水回りのほうだけ状態を見させてもらっていると声を掛け、住居内に入ったとのことであるが、訪問販売に際しては、勧誘目的を明確に告げる必要がある。
(3) 契約についての充実した説明
本件では、申立人は、事業者の滞在時間は15分程度で、カタログなどの資料は見せられていないと述べたが、相手方は、1時間位、カタログなどを見せながら説明したと述べた。どちらの言い分が正しいのか断定はできかねるが、少なくとも、申立人が、契約した工事の内容を十分に理解していないことがうかがわれるし、仮に相手方の言い分が正しいとしても、1時間程度で十分な説明ができるのか疑問である。ことに高齢者の場合、事業者には、通常以上により丁寧な説明が求められる。
また、高齢者との契約に際しては、訪問当日には契約の締結を行わない、同居親族などの同意を求めるなどといった自主基準を設けて、トラブルを防ぐことも検討されるべきである。
2 行政に対して求めること
(1) 事業者に対する指導徹底
適正な法定書面の交付、勧誘目的の明示など法令遵守について、事業者に対する指導を徹底すべきである。
(2) 消費者に対する啓発活動、教育の推進
消費者に、契約内容をきちんと確認し、契約書面の記載内容も確認するよう、注意喚起の啓発活動を行うべきである。また、契約するときには、内容を確認することが当然の前提であることについて、消費者教育を進めていくことが必要である。
(3) 地域での見守り活動の一層の推進
高齢者の中には、被害の認識がない、相談するのが恥ずかしいという人もおり、家の中の見慣れない商品・契約書の存在や日頃のなにげない会話により、周りの人が気付き、消費生活センターにつなげることが重要である。
今以上に、高齢者の見守りを充実させ、さらには、見守り関係者と消費生活センターとが連携することにより、消費者被害の掘り起こし(さらには未然防止)を図っていくことが重要である。
見守りを充実させるために、見守り関係者が消費者被害の「気付き」のきっかけを学ぶことができるよう、研修などをより一層積極的に実施する必要があろう。
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。 東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用電話/相談窓口のご案内) |
独居高齢者のリフォーム工事契約に係る紛争(報告書)(PDF:552KB)
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当
電話番号:03-3235-4155