トップページ > 相談窓口 > 東京都消費者被害救済委員会 > 紛争処理(直近5年分) > 「アーティスト等育成所属契約に係る紛争」(2件)あっせん解決
更新日:2021年9月22日
平成30年8月20日
生活文化局
都内の消費生活センターにはオーディションに関連したタレント養成講座・タレント所属契約に関する相談が毎年多数寄せられており、平成29年度に急増していることから(後掲グラフ参照)、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に「アーティスト等育成所属契約に係る紛争」2件の処理を付託していました。
本日、同委員会よりあっせん解決したと知事に報告がありましたので、お知らせします。
【紛争の概要】 【あっせん解決の内容】 |
1 国や業界団体への情報提供 2 都内の消費生活センターへの情報提供 |
★ 容易にタレントになれるかのようにうたう広告を見たとしても、また「才能がある」、「逸材だ」などとほめられたとしても、冷静に対応し、その場ですぐに高額なタレント養成講座を契約するのは止めましょう。
★ 契約にあたっては、信用に足る事業者か、評判なども確認したうえで、周囲にも相談するなどしましょう。
★ 事業者の対応に疑問を感じたら、最寄りの消費生活センターへ相談しましょう。
東京都消費者被害救済委員会とは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
○契約当事者と契約内容 ○東京都消費者被害救済委員会における同時審議 ○申立人らの主張による紛争の概要 |
申立人Aと甲社間及び申立人Bと乙社間のアーティスト等育成所属契約は、「立替払契約不成立時は、役務提供契約も立替払契約の申込時に遡って不成立になる」との個別クレジット契約の規定から不成立ないし無効と解される。
仮に、契約が有効に成立したとしても、甲社、乙社の勧誘方法は特定商取引法に定めるアポイントメントセールスに該当し、契約書面に法で記載が義務付けられているクーリング・オフに関する事項の記載がないことから、クーリング・オフの期間は進行していなかった。したがって、申立人らはクーリング・オフができ、すでに、契約解除の意思を事業者に書面で通知しているので、契約は役務提供前に解除されている。
よって、申立人Aは甲社に、申立人Bは乙社に何らの債務を負うものではない。
また、甲社及び乙社は、関連するグループ会社を含め、保有する申立人らの写真や画像、収録音源等の個人情報の利用を停止し、合意書締結後10日以内に消去する。
1 個別クレジット契約が不成立であれば、育成所属契約も不成立ないし無効となる
申立人Aの個別クレジット契約は審査で否決され、申立人Bは個別クレジットの申込みをしなかったので、個別クレジット契約の規定により、申立人らの育成所属契約は不成立ないし無効と解される。
なお、本件育成所属契約には、信販会社での審査等で否決になった場合、自動的に自社割賦になる旨の特約があったが、申立人らに自社割賦払いに関する明細が渡されておらず、分割手数料の具体的金額の合意はないため、自社割賦を利用した育成所属契約は不成立ないし無効と解さざるを得ない。
2 育成所属契約が有効に成立していたとしても、アポイントメントセールスに該当し、また業務提供誘引販売取引にも該当する余地があり、クーリング・オフできる
本件では、オーディションという方法をとって「育成所属契約」を締結する可能性のある者を、目的を告げずに募集し、選別のうえ、来訪要請し、契約していた。したがって、申立人らの勧誘方法はアポイントメントセールスに該当する。
また、育成所属契約の先に、報酬が支払われる専属アーティスト・タレント契約に移行できる可能性があると説明していることは、将来的な芸能活動という業務を提供(またはあっせん)するとして誘引された取引(特定商取引法では「業務提供誘引販売取引」という。)に該当する余地がある。
特定商取引法で契約書に記載すべき事項が定められている取引であるにもかかわらず、本件契約書にクーリング・オフに関する記載が見当たらないことから、申立人らは、事業者が改めて法により義務付けられた書面を交付するまでいつまでもクーリング・オフ権を行使できる。
3 中途解約時に「申込費用」を一切返金しないとする契約条項は不当条項である
契約金額の75%を占める申込費用約40万円について、中途解約時に消費者が全額負担するとの契約条項は、解約違約金として「平均的な損害の額」を超え、消費者契約法9条1項の不当な契約条項に該当する。契約書の「重要事項説明」で、消費者に「理解できた」として「○」をつけさせていても、不当な契約条項が有効になるものではない。
1 事業者に求めること
(1) 有償のタレント養成契約の締結が目的ならば、勧誘に先立って目的を明示する
目的を告げずに営業所等に呼び寄せ契約をさせる場合、あるいは「契約をすることになる」などとあらかじめ告げていたとしても説明と異なる契約をさせる場合などは、アポイントメントセールスに該当する。勧誘に先立ってその目的を明示するべきである。
また、オーディション応募者の目的や希望が実現しない可能性が高いのに、容易にかなうかのように誤信させる表示や勧誘にも問題がある。
(2) 提供する役務の内容を具体的かつ明確に示す
タレント養成契約では、発声レッスン、ダンスの訓練であるとか、担当する講師の力量、期間、授業回数などが具体的に示されて、はじめて、支払う対価がそれに見合うものなのかが判断でき、消費者が契約を締結するか否かの判断ができるようになる。
契約内容が明らかでないなら、両当事者の意思の合致があったのかという疑問が生じかねず、問題である。提供する役務の内容を具体的かつ明確に示すべきである。
(3) クレジット契約が成立しない場合、自動的に自社割賦となるとの特約は認められるべきではない
クレジット契約の成立が認めらない事由は、過剰与信防止、不適切な契約内容、消費者の意思が契約成立を求めていないことが確認されたなど消費者保護の見地のものもある。一律に「クレジット契約不成立の場合は、自動的に自社割賦契約となる」と定めるのは、割賦販売法の消費者保護の規制を脱法することにもなりかねない。クレジット契約が通らないなどの指摘がされたということは、当初とは事情が変わったと見るべきである。それでもなお契約締結を希望するのかどうかは、新たな事情を前提にして再度冷静に判断するべきものである。消費者に冷静に再度検討する機会を与えず、「自動的に」自社割賦契約が結ばれたとみなす、という特約は認められるべきではない。自社割賦を利用した契約を消費者が希望する場合は、再度新たな契約を結び直す必要がある。
2 クレジット会社に求めること
クレジット契約が通らなかったとき「自動的に」自社割賦となるような特約を設けないよう、販売店に求めるべきである。また、販売店と消費者との契約内容を十分把握するように努め、販売店の営業内容を正確に知るよう調査を尽くすべきである。
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。 東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用電話/相談窓口のご案内) |
アーティスト等育成所属契約に係る紛争(2件)(報告書)(PDF:802KB)
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当
電話番号:03-3235-4155