トップページ > 相談窓口 > 東京都消費者被害救済委員会 > 紛争処理(直近5年分) > 「求人広告に応募しスキル不足を理由に誘引された入力業務習得講座の解約に係る紛争」あっせん解決
更新日:2021年9月22日
平成30年3月23日
生活文化局
本日、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)から、「求人広告に応募しスキル不足を理由に誘引された入力業務習得講座の解約に係る紛争」(平成29年7月6日付託)があっせん解決したと知事に報告がありましたので、お知らせします。
○申立人 40歳代女性 ○相手方 業務提供誘引販売事業者※ ○契約内容 入力業務習得講座及び編集講座(支払済金額約54万円) ○申立人の主張による紛争の概要 |
相手方が交付した書面は、特定商取引法の規定する記載事項を満たしておらず、申立人の解約申出によるクーリング・オフの成立が認められる。よって、相手方は、受講料全額(約54万円)を申立人へ返金するものとする。
1 本件取引は、相手方が提供する役務(入力業務習得講座及び編集講座)で身に付けた技能(スキル)を利用する仕事があり、その仕事に従事することで収入(月収5~20万円)が得られると勧誘し、役務提供の対価(受講料)を負担する契約が締結されており、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に該当する。
また、相手方の提供する講座はパソコンのワープロ入力を教授するものであるので、同法の特定継続的役務提供(パソコン教室)にも該当する。
2 上記のどちらの取引類型も特定商取引法の規制を受けるが、本件においては、特定商取引法に定める書面記載事項がいくつも欠けており、法定書面の交付があったとは到底認められない。したがって、クーリング・オフ期間は進行せず、申立人の契約解除の意思表示により、クーリング・オフは成立している。
3 業務提供誘引販売取引におけるクーリング・オフが成立した場合でも、事業者が提供済みの役務の対価を請求できるとすれば、クーリング・オフによる救済は無意味と化すことから、特定商取引法の立法趣旨に照らして、相手方は役務を提供したか否かにかかわらず、申立人から受領した受講料等を全額返還すべきである。また、本件は、実施済み役務の対価を請求できないと明文で定めている特定継続的役務提供におけるクーリング・オフも適用される。
よって、いずれにせよ、相手方は全額返金しなければならない。
1 事業者に対して
(1) 本件相手方には、数多く、法令に抵触する行為が認められた。事業者は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」や「特定継続的役務提供」の要件をよく確認し、事業を営むうえで遵守すべき内容をチェックしておくべきである。
(2) 消費者契約におけるトラブル防止の第一歩は適正な情報提供の確保にあることからすれば、本件のように、業務提供誘引販売取引や特定継続的役務提供の概要について記載された書面(いわゆる概要書面)及び法定事項の記載された契約書面の交付が欠けていることは、致命的である。
(3) これらの基本ルールを順守しないと、クーリング・オフ期間が起算しない結果として、いくら契約に基づく役務提供等の履行があったとしても、契約の清算にあたって当該履行の利益を主張できないというリスクがあることを認識しておく必要がある。
2 行政に対して
(1) 相手方は、商号や屋号が異なるが長年同様の事業を続けてきたという。それらの商号や屋号に係る苦情は今回委員会で確認できた範囲に限っても多数に上っていた。その多くは本件事案と共通しており、求人広告等において、収受し得るとされる業務提供利益や業務提供条件に関する不実告知がなされていたことに端を発している。同様の被害拡大防止のために、迅速かつ実効的な指導や処分を求めたい。
(2) 相手方が順守すべき法令の内容を認識しないまま、長年にわたって事業を営んできたことは、残念なことである。テレワークの仕事を提供・あっせんする業者が、適正な業務を営むことができるよう、順守すべき法令の内容を分かりやすく伝える工夫も必要である。
「やる気があれば大丈夫」「かかった費用はすぐに回収できる」と勧誘されて高額な負担をしても、後になって「収入の保証などしていない」とトラブルになるケースは後を絶ちません。「求人」をうたって人を集めて、研修の受講料や教材費、登録料などの名目で、事前に高額な負担を要求する事業者との契約や支払いは避けてください。
契約をしてしまった場合は、ひとりで抱え込まず、消費生活センターへ相談しましょう。
おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。![]() 東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用電話/相談窓口のご案内) |
求人広告に応募しスキル不足を理由に誘引された入力業務習得講座の解約に係る紛争(報告書)(PDF:645KB)
お問い合わせ先
東京都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当
電話番号:03-3235-4155