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読者レポート

自動運転バス」未来を走る準備中

読者委員 ( よしざき ) ( わかは )

自動運転バスの運行が始まっています。通勤・通学、買い物、高齢者の移動手段として期待が高まる一方で、「運転手がいなくて運転できるの?」「どういう仕組みなの?」「安全性は大丈夫?」などの気になる疑問も。そこで、東京都が設定した自動運転の推進区域内で、レベル2の自動運転バスを運行する京王電鉄バス株式会社に取材し、お話を伺いました。

吉崎委員(中央)と京王電鉄バス株式会社運輸営業部の今井課長補佐(右)、吉田主任(左)

自動運転バスとは

自動運転バスでは、これまで運転手が行っていた安全な運転に必要な「認知・判断・操作」を自動運転システムが代わりに行います。車は、高精度3Dマップ(3次元地図)とGNSS(人口衛星の位置情報システム)・ ( ライダー ) (高性能センサー)で位置を確認し、車体に搭載されたカメラやレーダーなどのセンサーで、信号の色や周囲の状況を認知します。それらの情報を基にシステムが判断し、ハンドル・アクセル・ブレーキを自動制御して「走る・曲がる・止まる」などの操作を行います。その結果、目的地までの走行も、加速・減速・車線変更などを含め自動でスムーズに行うことができます。

自動運転バスは、運転手不足や利用者減による減便・路線廃止などの課題解決策として、また通勤・通学や買い物、高齢者の移動手段としても期待されています。

自動運転にはレベルがある

自動運転は条件により5段階のレベルに分類されています。取材先の京王電鉄バス株式会社(以下「京王バス」という。)では、東京都が設定した自動運転の推進区域「西新宿エリア」で、レベル2の自動運転バスによる通年運行を行っています。レベル2の段階は、運転主体は人で、システムはあくまで運転支援の役割です。例えば、止まっている人や車が進路に入ってくるのか、道を譲っているのかをシステムが判断できず、バスが停止してしまうことがあります。このような場合には、運転手が介入して手動運転を行います。

現在、京王バスでは、レベル4の実現に向けた運行を進めており、近い将来にはシステムのみでの運行を目標にしています。最終的には、運転手が乗車せず、遠隔地からの監視により運行の安全性を確保する体制を目指しているとのことです。

自動運転のレベル

レベル5
  • 場所を問わず、システムが全て運転
  • 異常時もシステムが全て対応
自動運転 ※1
レベル4
  • 特定の場所で、システムが全て運転
  • 異常時もシステムが全て対応
レベル3
  • 特定の場所で、システムが全て運転
  • 異常時など、システムが運転できない場合は運転手が代わりに運転
レベル2
  • システムがアクセル・ブレーキとハンドルの両方を部分的に操作
運転支援 ※2
レベル1
  • システムがアクセル・ブレーキとハンドルのいずれかを部分的に操作
  • ※1 運転操作の主体=システム
  • ※2 運転操作の主体=運転手

従来のバスとの違い

自動運転バスと従来のバスの違いを教えていただきました。従来のバスでは、運転手が運転だけでなく、乗客へのきめ細かなサービスや状況に応じた柔軟な対応も行っています。例えば、乗客の乗降時のサポート、車内でのトラブル対応 、運賃収受など、経験に基づいた多様な業務を担うことで、利用者に寄り添ったサービスを提供している点が強みです。

一方、自動運転バスでは、システムが運転操作を担います。搭載されたカメラやセンサーが人の目では見えにくい障害物も認識できるため、ヒューマンエラーによる事故の防止につながり、より高い安全性が期待できます。また、将来的には運転手不足の解消や夜間を含む長時間運行も可能になるかもしれません。

ただし、システムの判断や対応には限界があり、遠隔監視者のみで運行する場合には、乗客自身がドアの開閉などの一部の操作を行う場面も出てくるかもしれません。また、安全上の理由から立ち席が認められておらず、乗車定員に制限があることも課題です。

今後、自動運転バスの導入は、歩行者と車両の通行が分離されている広い道路など、運行に適した路線から進められる見込みです。早く実用に至るといいですね。

自動運転バス乗車体験

今回は、京王バスの永福町営業所で停車中のバスを見学させていただきました。カメラやレーダーなどのセンサーが搭載されたゴツゴツした印象の白い車体に「自動運転実証実験中」の告知がされていました。走行中にはメロディが流れて周囲から認識できるようにしているそうです。定員13名のコンパクトなバスですが、低床で車椅子・ベビーカーも乗車可能。座席前方のモニターには自動運転走行中にセンサーで感知した周囲の動きを予測する画像が映し出されます。

運転技術はまだプロドライバーには及ばないものの、正確な技術によりスムーズな乗り心地が実現されているため、利用者から高評価を得ているそうです。安全を第一に運行されており、2021年の実証実験開始から現在まで無事故とのこと。現在も西新宿ビル街を一周約2km、最高時速30kmで1日7便運行!新しい技術の移動手段を実際に試してみてはいかがでしょうか。(工事に伴い一時運休していますが、11月より再開予定です。詳細はHPをご覧ください。)

京王バスの写真

取材を終えて

今回の取材で幼少の頃思い描いていた未来が近づいてきたと感じワクワクしました。京王バスの吉田さんからの「まずは知ること、試してみること、見守ることをお願いしたい。新しい技術は『便利』だけでなく、『安全』のためにも使われていきます。自動運転バスが、あなたの暮らしの一部になる日も近いかもしれません。だからこそ、一緒に知り、一緒に育てていくつもりで、未来の移動を迎え入れていただけたらと考えています。」との言葉が印象的でした。

また、バスの運転だけではない運転手の方の業務に気付けたことが学びとなりました。地域の交通を守るため日々運行を続けてくださる皆さま、ありがとうございます。完全無人運行までには課題が多く実現は少し先になりそうですが、未来に思いをはせつつバスのある日常を楽しんでいきたいと思います。