便利だけれど危険なことも?
リチウムイオン蓄電池の発火事故に注意!
※リチウムイオンを用いて繰り返し充放電できる電池のことを「リチウムイオン蓄電池」(リチウムイオン電池)と呼んでいます。
近年、駅や空港でモバイルバッテリーが発火する事故が相次いで報道されています。スマートフォンやモバイルバッテリーなど、「リチウムイオン蓄電池」を搭載した製品は、私たちの暮らしを便利にしてくれる一方で、強い衝撃などにより、突然発火する危険性があります。
今回の記事では、モバイルバッテリーを例に、リチウムイオン蓄電池の発火原因と安全に使うためのポイントなどをご紹介します。
もしもの時に備えて、ぜひご一読ください。
こんなに事故が発生しています
昨年報道されたモバイルバッテリーの主な発火事故をまとめてみました。本当に身近な場所で発生していますね。
| 発生日 | 場所・概要 |
|---|---|
| 4月28日 | ハワイ・ホノルル発羽田行きハワイアン航空機内で発火 |
| 5月23日 | 大田区の廃棄処理施設から火事 消防はモバイルバッテリーのリチウムイオン蓄電池が原因と判断 |
| 7月20日 | 山手線(新宿−新大久保間)で乗客がスマホを充電中に発火 |
| 8月22日 | 東海道新幹線「のぞみ411号」座席背面のポケット内で発火 |
| 8月28日 | 上越新幹線「とき300号」キャリーケース内で発火 |
| 9月25日 | 杉並区の5階建てマンションから「モバイルバッテリーから出火」の119番通報 |
リチウムイオン蓄電池の仕組み
モバイルバッテリーを安全に使うためには、まずリチウムイオン蓄電池の仕組みから、「なぜ発火するのか」を知ることが重要です。モバイルバッテリーには薄いラミネート形電池や、円筒形電池などが使われています。今回は円筒形電池を例に、電池の仕組みをご紹介します。
基本的な構造は下図のとおりです。電池の内部には、リチウム材を原料とした正極のシートと、黒鉛などを原料とした負極のシートがあり、両者は、リチウムイオンのみを通す特殊な樹脂製の絶縁シート(セパレーター)で隔てられています。これらのシートは重ねて巻かれ、缶の中に収められています。また、内部には、リチウムイオンが行き来するための液体(電解液)も封止されています。なお、電解液は灯油のように燃えやすい性質を持っています。
モバイルバッテリーに使用されるリチウムイオン蓄電池
発火に至るメカニズム
リチウムイオン蓄電池は、使用と充電を繰り返すうち電解液から可燃性ガスが発生し、次第に缶の中にたまっていきます。
さらに、セパレーターは特殊な性質を持つ一方で、破損しやすい材質でできており、高温と衝撃に弱い性質を持っています。
そのため、なんらかの原因で、セパレーターが破損すると、正極シートと負極シートが直接触れてしまいます(ショート)。この瞬間発熱が始まって、場合によっては熱暴走し、その結果、電池から炎が噴き出すことがあります。
セパレーターの破損から発火
皆さん、ここまでの説明で、「セパレーターが破損しないように気を付けていれば良いのでは」と気付かれましたか? では、私たちは普段からどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
安全に使うためのポイントと異常時の対応
リチウムイオン蓄電池が搭載された製品を使う際には、次の点に注意しましょう。
- 直射日光の当たる場所や暑い日の車内などの高温下には放置しない。
- 落とすなど強い衝撃を与えたり、日常的に無理な力を加えたりしない。
- モバイルバッテリーの事故の多くは充電中に起きているため、不具合があった際にすぐ対応できるよう、外出時や就寝時の充電は控える。
- 製品情報やリコール情報を確認する。
また、普段から危険な予兆を察知するために、充電時や使用時に気を付けるポイントがあります。
- 充電できない。
- 充電中に以前よりも熱くなる。
- 膨らんで、変形している。
- 突然、電源が切れる。
- 落とす、ぶつけるなどして、強い衝撃を与えてしまった。
膨らんで
の外れた
モバイルバッテリー(再現試験品)
これらにひとつでも心当たりのある場合、充電・使用を中止してください。自宅には、発火した際の延焼を防ぐため、ふたのある「防火容器」を用意しておくと安心です。例えば、金属製のお菓子の空き缶や鍋・土鍋は、回収や廃棄をするまでの一時的な保管場所になります。
膨張・変形している場合
-
- 充電・使用を中止
- 衝撃を与えることなどで発火の恐れがあるため、通常と異なる廃棄が必要
- 金属製容器や土鍋などに入れて一時保管し、お住まいの区市町村や販売事業者に廃棄方法を確認
家や外出先で発煙・発火してしまったら
発煙・発火した場合、煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らないでください。モバイルバッテリーのようにポケットに入る小型のものであれば、火花が収まった後に、大量の水をかけることで消火できます。消火後は、可能な限り水没させた状態で、119番通報してください。リチウムイオン蓄電池は消火後も熱を持っているため、火が消えたからといって、冷却しないまま可燃物に接触させると新たな火災につながる恐れがあります。消火が困難だと判断した場合は、身の安全確保を第一に119番通報しましょう。
駅など、外出時にモバイルバッテリーが発煙・発火した場合、周りに声をかけてすぐに距離を取りましょう。その後は、駅員や消防士の指示に従いましょう。
製品評価技術基盤機構(NITE)では、これらのような場合を想定した注意喚起の動画を公開しています。
異常時(膨らんでいる・異常な熱さになっている)や発火時の対応が3分程度でご覧になれます。
リチウムイオン蓄電池搭載製品を捨てる時
捨てる時は、一般ごみに混ぜて捨てないでください。ごみ処理の過程で、ごみを圧縮したり破砕したりするため、電池に強い外力(衝撃)がかかり発火する恐れがあります。誤った捨て方により、ごみ収集車やごみ処理施設で火災が発生するなど、深刻な問題になっています。
リチウムイオン蓄電池搭載製品の回収方法は、お住まいの区市町村によって異なりますので、各自治体のルールを確認し、定められた方法に従って捨てましょう。
モバイルバッテリーの持ち込みに関する新ルール(国内)
航空機では、これまでもモバイルバッテリーを預け入れ荷物に入れることは禁止されていましたが、令和7年7月からは、機内に持ち込む場合にも、新たなルールが設けられました。主な注意点は次のとおりです。
- 座席の上の収納棚に収納せず、不具合発生時に速やかな対応ができるよう、手元で保管する。
- 使用(充電)する際は、常に状態が確認できる場所で行う。
このほか持ち込める種類や個数などにも制限があります。海外の航空会社では別のルールが定められている場合もありますので、分からない場合は航空会社に確認しましょう。
預け入れ荷物に入れることは禁止!
充電するときは「常に状態が確認できる場所」
座席の上の棚には収納せず身の回りで保管
最後に
リチウムイオン蓄電池はご紹介したモバイルバッテリー以外にも、ハンディファン、ポータブル電源、電動アシスト自転車、電動工具、コードレス掃除機などさまざまな製品に使われています。火災事故を防ぐために気を付ける点は共通ですので、お使いのリチウムイオン蓄電池搭載製品を正しく使っていきましょう。
※製品評価技術基盤機構(NITE)製品事故情報・リコール情報
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/index.html















