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不用品回収・訪問購入などのトラブルに注意!

池本法律事務所
弁護士 池本( いけもと ) 誠司( せいじ )

インターネット広告を見て不用品回収業者に依頼したところ、広告と異なる高額の請求を受けたトラブルや、不用品回収という話から、処分するつもりのない貴金属を強引に買い取られたトラブルが生じています。

不用品回収(廃棄物処理)業者は、区市町村の許可業者に限られていることや、訪問購入業者には厳しいルールやクーリング・オフの適用があることを理解して、消費者トラブルを防ぎましょう。

はじめに

高齢者が「終活」として不用品を早めに処分することが話題になっています。また、長年住んでいた戸建て住宅からマンションに引っ越しするため、家財道具を片付けて不用品を処分するケースもあります。

このような場合、あなたはどうやって不用品を処分しますか? インターネット広告やチラシなどを見て安く処分してくれそうな回収業者に連絡しますか?

今、不用品回収のトラブルや、特に高齢者を中心に訪問購入に関するトラブルが広がっています。具体例を通じて問題点を考え、トラブル防止のポイントを確認しましょう。

主なトラブル事例

事例1不用品回収

不用品を処分したいので、インターネットで探したら、「業界最安値 1万円」というサイトを見つけて回収を依頼した。自宅に来た業者は、不用品を次々とトラックに積み込みながら、「これは特別の処理が必要だ」などと話していたが、積み込み作業が終わった頃、「特別な処分費用がかかる物がいろいろあるので15万円かかる」と言って、確認書類にサインするよう要求され、断れない雰囲気だったのでサインした。

事例2訪問購入(押し買い)

「不用品回収、買取品無料査定」というチラシが配布されていたので、衣類や日用品について、有料で買い取ってもらえるのか、回収費用はいくらかかるか見積もってもらおうと思って連絡したところ、訪問してきた業者は、「着物や日用品は買い取るほどの価値はない。ほかに貴金属はないか、今なら高額で買い取りできる。査定するだけでもいいので見せてくれ」と言ってしつこく勧誘を続け、亡夫からプレゼントされた指輪やネックレス数点を見せると、「2万円で全部買い取る」と言って強引に買い取られてしまった。

不用品回収のルール

(1) 一般家庭の廃棄物(粗大ごみなどの不用品)の回収・運搬・処分を行う業者は、区市町村の許可業者に限られます(廃棄物処理法)。

ところが、一般廃棄物処理業の許可を得ないで違法に回収している業者もいるので、チェックが必要です。無許可の業者に不用品を引き渡すと、不法投棄される恐れなどがあります。

(2) 一般家庭の廃棄物のうち、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電小売店に収集・運搬の義務が、家電メーカー等にリサイクルの義務があり、家電製品を使った消費者がそのための費用を負担することになっています(家電リサイクル法)。

これらの製品を一般廃棄物と区別しないで不用品回収に出すことは、回収業者の違法行為であるとともに、依頼した消費者も違反を問われる恐れがあります。

(3) 回収費用や契約条件が広告と実際の金額とで大きくかけ離れているものは、不当な広告表示として禁止されています(景品表示法)。

ところが、広告には「トラック積み放題定額5万円」と表示しながら、実際には、「トラックの囲いを超える大きさの荷物は別料金」と言って高額の請求をするケースもあります。

訪問購入

東京都内の消費生活センターに寄せられる「訪問購入」に関する相談件数は、ここ数年増加傾向にあります。契約当事者は、60歳以上が7割程度を占めており、特に在宅率の高い高齢者は注意が必要です。近年、金製品等の価格が高騰していることから、一般家庭に眠っている貴金属を買い取る業者が増えていることが要因の一つだと思われます。

消費者宅を訪問して物品を買い取る「訪問購入」には、消費者の大切な物品を強引な勧誘によって失う恐れがあることや、後で返還されなくなる恐れがあることから、厳しいルールが定められています(特定商取引法)。

例えば、①消費者が事前に承諾していないのに訪問して勧誘する行為、②「査定するだけ」などと勧誘目的を最初に告げないで勧誘を始める行為、③消費者が「売るつもりはない」と断っているのに勧誘を続ける行為、④物品の売却を勧誘する際、虚偽の説明や強引な勧誘をする行為などが禁止されています。

そして、⑤訪問購入業者が物品を購入したときは、物品の特徴や数量、金額などを正確に記載した契約書面を消費者に交付する義務があり、⑥消費者は売却した物品について契約書面を受け取った日から8日間、無理由かつ無条件で解約(クーリング・オフ)ができます。

不用品回収・訪問購入のトラブルを防ぐには

(1) 不用品(粗大ごみなど)はお住まいの区市町村が案内するルールで処分しましょう。区市町村以外に依頼する場合は、区市町村のホームページや問い合わせ窓口で、一般廃棄物処理業許可業者の名簿を確認することと、名簿に記載されている許可業者に連絡し、回収を依頼したい物品を説明して見積書を取ることです。できれば複数社から見積もりを取り、追加料金の有無やキャンセル料などを十分に確認しましょう。

(2) 4種類の家電製品については、種類や大きさによって処分に係る金額が決まっています。製品を買い替える場合は新しい製品を購入するお店に、処分のみの場合は製品を購入したお店に、確認し引き取りを依頼しましょう。購入したお店が分からない場合などは、処分方法をお住まいの区市町村に問い合わせてください。

(3) 回収作業前に内容・料金を確認し、広告表示と実際の価格が大きく食い違う場合は契約しないで断ること、また、作業中や作業終了後に、事前に聞いていない高額な料金を請求された場合は、後日納得した金額で支払う意思があることを伝えつつ、その場での支払いを断わりましょう。契約してしまった場合でも、消費生活センターに相談してください。クーリング・オフが適用される可能性があります。

(4) 「訪問購入」業者から、買い取りを依頼していない物品を見せるように迫られても、きっぱりと断ることです。業者をいったん家の中に入れると、勧誘を断りにくくなりがちなので、信頼できる方に同席してもらうとよいでしょう。

また、物品を売却する場合は、契約書を必ず受け取り、引き渡す物品の明細(物品名、特徴、価格)や事業者名など、内容を確認しておくことです。

消費者が積極的に買い取りを依頼して来てもらった物品以外の物品の買い取りを勧誘された場合は、訪問購入としてクーリング・オフができる可能性がありますので、契約した後でも急いで消費生活センターに相談してください。

高齢者の消費者トラブルを防ぐには

高齢者は、認知症などで判断力が低下している場合に限らず、相手から熱心に勧誘を受けると断固として断る気力が低下する傾向があり、結果的に不本意な契約を締結してしまいがちです。断る気力の低下に乗じた強引な勧誘は、高齢者本人から見ると「自分がきっぱりと断らなかったのが悪い」と自分を責めてあきらめる行動になりがちです。

消費者トラブルに遭った高齢者に対しては、ご家族や身近な人から、「同じような残念な思いをする高齢者の被害を防ぐため、消費生活センターに積極的に相談した方がよい」というアドバイスをしていただきたいと思います。

また、消費生活センターでは、ご家族やホームヘルパー、ケアマネジャーなど周囲の方からの相談も受け付けているので、高齢者宅で見慣れない契約書を見つけたり、様子がおかしいと思ったら、すぐに相談してください。

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