リースバックって何?
家を売っても住み続けられるの?
長寿化に加えて物価上昇が進む中、老後資金や介護資金に不安を感じる方も少なくないでしょう。近年、自宅を売却した後も自宅に住み続けることができる「リースバック」という不動産活用法が注目されています。メリットがある反面、通常の不動産売却よりも注意すべき点が多く、知識がないとトラブルになる可能性もあります。
今回は、リースバックの仕組みや注意点、リバースモーゲージとの違いなどについてご紹介します。
リースバックとは
リースバックとは、自宅をリースバック事業者に売却して売却代金を受け取る一方、リースバック事業者と賃貸借契約を結び、家賃を支払って自宅に住み続ける仕組みです。
一般的に利用者に年齢制限はありません。売却代金は一括で受け取り、使途も自由です。対象物件のエリアや種類、条件等はリースバック事業者によって異なります。戸建て・マンションとも対象のところが多いですが、一定評価額以下は対象外とする事業者もあります。
リースバックを利用するメリットは、売却後も引っ越しをせずに自宅に住み続けることができる点や、短期間でまとまった資金が手に入る点、固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金などの支払いが不要になる点です。リースバックはいわば事業者による買い取りのため、通常の不動産売却よりも短期間(2週間~1か月程度。条件や事業者で異なります。)で売却代金が手に入ります。中には、リースバックで売却した資金の一部を、有料老人ホームの入居一時金に充てるケースもあるようです。
リースバックの注意点は?
リースバックの注意点としては、まず、あくまでも売却ですので、自宅は自分のものではなくなる点が挙げられます。名義も変わります。
しかも、リースバックによる売却額は、通常の売却額より低くなることが多い点も注意が必要です。貯蓄にゆとりがあって急がない場合は、通常の方法で売却して引っ越す方が、引っ越し費用を加味しても資金的に有利になるケースが多いかもしれません。
また、リースバックで売却した後は、賃貸借契約を結んで住み続けるため、家賃がかかり続けます。賃貸借契約には、契約期間満了後も借主が希望すれば契約更新できる「普通借家契約」と、契約期間満了とともに終了し、貸主が再契約に応じなければ住み続けられなくなる「定期借家契約」があります。「定期借家契約」の場合、契約時に設定した2~5年で住み続けられなくなるケースもあるため、賃貸借契約の条件等について、きちんと説明を受けた上で契約を結ぶようにすべきです。
また、「買い戻し特約」を付けて契約した場合は、自宅を買い戻すことも可能ですが、買い戻す金額は売却額より高く設定されていることが多いようです。契約前に、買い戻しの条件や買い戻し価格を確認しておきましょう。
このほか契約によっては、途中で家主が変わり契約内容の変更(家賃の増額や更新条件の変更)を求められ、資金が不足する可能性なども考えられます。
いずれにしても、生活費のほか、家賃と更新料がかかる中、何年住み続けられるのか、しっかり計算をしておくことも大事です。
リースバック事業者ごとに、売却価格・毎月の賃料・更新条件・売却時にかかる経費や事務手数料などの契約条件が異なるので、しっかり契約内容を確認することが大事です。実際にリースバックを利用する際には複数の事業者から見積もりをとって比較し、自分が納得できるものを選びましょう。
なお、自宅を不動産会社に売却した場合、クーリング・オフはできない点も注意が必要です。
リバースモーゲージとは?
リースバックと並列で紹介されるものとして、リバースモーゲージがあります。リースバックが「売却」であるのに対し、リバースモーゲージは自宅に住みながら自宅を担保に生活資金等を「借りる」仕組みで、契約者の死亡後に、自宅の売却代金などで一括返済します。一部の金融機関などで扱っているほか、行政の福祉サービスの一環で、低所得の高齢者世帯を対象に行っている制度もあります(不動産担保型生活資金)。
対象年齢は「55~84歳」「60歳以上」など高めに設定されています。融資のタイプは、定期的に一定額を受け取る年金型や、一括融資型のほか、決められた金額の範囲で随時利用する自由融資型など、金融機関等によって異なります。使途は、生活資金や家のリフォーム・建て替え、医療・介護関連、レジャーなど自由※ですが、事業や投資用資金としての使用は禁じられています。
※住宅関連資金のみに限定されている商品もあります。
対象となる不動産は、首都圏等の一定評価額以上の戸建てが中心です。利用条件として、契約者や配偶者の推定相続人の同意や連帯保証人を求められる場合もあります。
リバースモーゲージの注意点としては、本人と配偶者以外に同居人がいると利用できない点や、不動産の評価額は年1回程度見直され、地価や金利の変動で利用限度額も変化することなどが挙げられます。地価が下がったり、金利が上がったりすると、利用限度額が下がるリスクがあるということです。
おわりに
長寿化に加えて物価上昇が進む中、資金不足をリースバックなどでカバーしようとする人は、今後も増えると考えられます。しかし、家を通常の方法で売却して家賃の安い賃貸住宅へ転居する方法や、資金を借りる場合も、不動産担保ローンや前述の不動産担保型生活資金という手段などもあります。今から老後のライフプランを立て、不動産活用が単なる一時しのぎにならないよう、中長期的な資金計画に基づき、利用するかどうかを考えましょう。
リースバックのトラブル事例
国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(2022年6月公表)※で紹介されている事例を、一部要約して解説します。
強引な勧誘で契約。解約を申し出たら、高額な違約金を請求された!
しつこく勧誘され、約2千万円でリースバック契約をする流れになりました。契約書を交わす日に「やっぱりキャンセルしたい」と電話で伝えましたが、結局、押し切られる形で契約。後日、不安になって事業者に解約を申し出ると、「違約金が約4百万円かかる」と言われました。
宅地建物取引業法に基づくクーリング・オフが適用されるのは「宅建業者が売主、消費者が買主の場合」のみで、この例では適用されず、契約解除できません。違約金が設定されているケースもあります。契約内容をよく確認し、納得できないときは契約しないことが大事です
契約後、家賃の合計額が数年で売却価格を超えることに気づいた!
リースバック事業者の突然の訪問を受け、「10年後には取り壊される」という虚偽の説明を信じ、約2千万円で自宅の売却契約をしてしまいました。家賃は約20万円で10年住んだら売却代金を上回る計算になるため、後日キャンセルしたい旨を伝えましたが、「キャンセルできない」と言われました。
契約をする前に、「売却で受け取る金額」と「これから家賃として支払う金額」のどちらが高いか自分で計算して比較しましょう。価格・家賃等の条件は、納得できるまで事業者と協議しましょう。
不動産取引は複雑です。その場ですぐ契約せず、必ず家族や信頼できる身近な人に相談して決めるようにしましょう。困ったときは消費生活センターに相談してください。
※ https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001487923.pdf
東京都と消費者団体・事業者等が協働してくらしに役立つ情報を発信します!
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