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今月の話題

大掃除をラクに安全に!
~掃除用洗剤の選び方と使い方のコツ~

日本石鹸洗剤工業会会員 花王株式会社
経営企画部門 コンシューマーインテリジェンス室
(たべた) (みか)

年末は普段掃除できない場所まできれいにしたいものですが、「汚れが落ちない」「時間がない」と悩むことも多いもの。そこで大切なのは、汚れと材質に“適剤適所”の洗剤を選ぶこと。洗剤の「表示」には効果的な使い方や安全に使うための情報が載っています。今回の特集では、汚れに合った洗剤の選び方や使い方、安全に使うための表示の見方についてご紹介します。

汚れごとに使い分ける 洗剤の基本

家の汚れには、大きく分けて2種類あります。一つは、ほこりや手垢などの「一般汚れ」、もう一つは、時間がたって落ちにくくなった汚れや、焦げや変性した汚れなどの「特殊汚れ」です。特殊汚れには、材質を傷めず効率よく落とすために、汚れの種類に適した専用の洗剤を使うとよいでしょう。使用前には必ず使い方と注意事項を確認しましょう。

※ 本来、洗剤と洗浄剤は異なりますが、ここでは総称として洗剤と呼びます。

キッチン周り

キッチンでは、換気扇やガスコンロ周辺に付いた「時間がたった油汚れ」や「焦げ付き」が落ちにくい特殊汚れです。これらは一般的な台所用洗剤ではなかなか落とせないため、頑固な油汚れを分解する台所用の強力な洗剤を使うのが効果的です。使用前には、換気扇やIHクッキングヒーターの電源を切る、ガスコンロの元栓を締める、窓を開けて換気する、炊事用手袋や眼鏡を着用する(手荒れや目の保護のため)など、安全対策を忘れずに行いましょう。

なお、強力な洗剤は使用方法を誤ると事故やトラブルにつながる恐れがあります。表示に従って正しく使い、所定時間放置して汚れを浮かせた後、拭き取り、しっかり水で洗い流すか、十分に水拭きします。つけ置きタイプの洗剤を使う場合は、40℃程度のお湯を使うと効果的です。

また、IHクッキングヒーターの焦げ付きには、丸めたラップにクリームクレンザーを少量つけて、こすり落とす方法も有効です。傷を付けずに汚れを落とせます。

浴室周り

浴室では、残った水滴が乾いて水道水に含まれるカルシウムなどが固まり、ウロコ状に見える「水垢」や、皮脂・垢・せっけんカスなどの汚れを栄養に繁殖した「カビ」が落ちにくい特殊汚れです。

水垢汚れには、クリームクレンザーでこすり落とす方法や、水垢専用の浴室用洗剤を汚れにかけて、所定時間放置した後、洗い流す方法が有効です。カビ汚れには専用のカビ取り剤が便利です。使用箇所の水気をよく拭き取った上で、表示どおりに使うと洗剤が水で薄まるのを防ぎ、より効果的です。

水垢やカビは一度付着すると落としにくいため、こまめに掃除し、水滴を拭き取ることで予防しましょう。

トイレ

トイレの水たまり部分やフチ裏の「黒ずみ汚れ」は、主にカビやホコリが原因です。水垢などと混ざると落ちにくくなるため、頑固な特殊汚れには、トイレ用の強力な洗剤がよいでしょう。汚れに原液をふりかけて、数分置くと効果的です。また、トイレットペーパーや衣類からの繊維くずが、便器の裏側や換気口などに溜まりやすいため、これらの箇所も忘れずに掃除しましょう。

トイレで汚れている場所

トイレで汚れている場所を掲載したイラスト

知っておこう! 表示の見方

家庭用の洗剤には「家庭用品品質表示法」のルールに基づき、品名、用途(使用場所や落とせる汚れ)、使用量の目安や、成分、液性、使用上の注意点などが記載されています。これらの表示をきちんと確認することで、汚れに合った洗剤を選び、安全かつ効果的に使うことができます。

掃除用洗剤表示の見方(カビ取り剤の例)

掃除用洗剤に記載されている使用上の注意点などの例

製品安全表示図記号(例)

4つの製品安全表示図記号

表示にある製品安全表示の図記号は、より安全に使うための注意事項や禁止事項を知らせるものです。特に、油汚れや水垢などの特殊汚れに対応した強力な洗剤には、酸性やアルカリ性の製品が多く、誤った使い方をすると、重大な事故や皮膚・目のトラブルにつながる恐れがあるため、使用時には十分な注意が必要です。

その中でも「同時に使用しない(混用禁止)」のマークがある場合は、必ずその製品のみで使用してください。塩素系漂白剤や塩素系のカビ取り剤と、酸性の洗剤、食酢、アルコール類(消毒用エタノールなど)を混ぜると、有害なガスが発生する危険があります。浴室掃除でよく使われるクエン酸も酸性のため、塩素系の製品と同じ場所で同時に使わないでください。

大掃除は早めに、計画的に

汚れは放置すると落ちにくくなるため、普段からこまめに掃除をしておくと、大掃除がラクになります。また、外周りや窓周りなどの外掃除は、寒い時期に行うと体が縮こまり、肩こりや筋肉痛の原因になるだけでなく、転倒のリスクも高まります。安全に作業を進めるためにも、年末に向けて早めに計画を立て、特に外掃除は本格的に寒くなる前に済ませましょう。

年末にまとまった休みが取れない方もいらっしゃるかと思います。普段掃除が行き届かない場所や、天井などの高い場所の汚れは、気にし始めるときりがありません。しかし、大掃除を年末に無理して終わらせる必要があるでしょうか。本当に必要な場所以外や手が付けられなかった場所は、暖かくなってからでも構いません。無理なく、心身に負担の少ない掃除を心がけましょう。