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今月の話題

これでスッキリ!
冬の洗濯

東京家政大学
教授 ( うしお ) ( ) ひとみ

冬は気温も低く、日が当たる時間が短いだけでなく、フード付きの衣類や暖かい素材のシーツなど厚手のものが多くなるため、洗濯物が乾きにくい季節です。

今回は、洗濯物を干すときのポイントやコツをご紹介します。冬もスッキリと洗濯をしましょう!

はじめに ~冬の洗濯物は乾きにくい?~

理科年表2022によると、2020年までの20年間を平均した東京の気候は、12月平均気温が7.7℃、1月平均気温が5.4℃と低温です。一方、夏と冬の日が当たる時間を1日ではなく1カ月単位で比較すると、表のようになります。梅雨や台風などの日があるせいでしょうか、冬は晴れの日が多く、冬の方が洗濯物を外に干すことができる日にちは多いのです。でも、洗濯物は夏の方が乾きやすい。これを解くカギの一つは「日差しの強さ」です。冬は日差しが弱く太陽のエネルギーを受けにくいのです。もう一つのカギは、空気が含むことができる水蒸気の量です。気温が低いほど、洗濯物を干した時に、洗濯物の水分が空気中に逃げにくい(洗濯物が乾きにくい)のです。そのため、気温が低い冬は、洗濯物が乾きにくいのです。

1カ月の日照時間比較
7月 151時間
8月 174時間
12月 174時間
1月 193時間

理科年表2022(国立天文台 編)を基に作成

冬は汗をかかないから毎回洗濯しなくても大丈夫?

冬は汗をかかないし、1回ごとに着替えた服を洗濯しなくてもよいと思っていませんか。着用した肌着の汚れ成分を分析すると、夏の肌着では、皮脂などによる有機質汚れが7割・汗などによる無機質汚れが3割で、冬の肌着では、有機質汚れが9割・無機質汚れが1割と割合が異なり、冬は洗剤を使わないと取れない有機質汚れが多くなっています。また、肌着に付着する汚れの量は冬の方が多いことが分かっています。冬の肌着は想像以上に汚れており、汗をかいていないから、もう1日着てもよいとはいえないのです。

冬の洗濯のポイント

洗濯物の乾きやすさは、洗濯物の水分がどれだけ早く水蒸気になって洗濯物から抜けていくかで決まります。①洗濯物に残っている水を少なくすること、②空気が水蒸気をたくさん含むことができる場所と時間を選ぶこと、③濡れた洗濯物の表面に乾燥した空気を循環させることが、三大ポイントです。

洗濯機のかしこい使い方

洗濯機を活用して、「①洗濯物に残っている水分を少なく」しましょう。

洗濯機の脱水モードを変更できるなら、洗濯後の脱水時間を長くします。しかし、綿のようにしわになりやすいものは脱水時間を長くするとさらにしわができてしまうので、洗濯機の乾燥機能を使用します。その際、目いっぱい洗濯物を詰め込むのではなく、洗濯物を少なめにして、しわのできにくい状態で乾燥機能を使用することがポイントです。

また、洗剤や柔軟剤は、洗濯物の量ではなく水の量に合わせた標準使用濃度を守るようにすることが重要です。

洗濯物の干し方は?

洗濯物を干すときには、「②空気が水蒸気をたくさん含むことができる場所と時間を選び」ます。冬に外干しをするならば、朝早くに洗濯し、太陽の出ている時間帯に干します。夜間は気温が下がり、水分が洗濯物から逃げにくくなるので、外干しはやめましょう。

部屋干しするときには、「②空気が水蒸気をたくさん含むことができる場所を選び」、「③濡れた洗濯物の表面に乾燥した空気を循環させ」ましょう。暖房で室温を高くし、加湿器はつけず、サーキュレーターを使用して、空気を循環させます。夜間や早朝の窓際は外気温の影響を受けやすいので、洗濯物を干す場所としては適切ではありません。

浴室乾燥機を使用するときには、サーキュレーターを併用して、乾燥した空気を循環させるようにすると、丈の長いものも乾きやすいでしょう。

また、洗濯物を干すときには、できるだけ空気に触れる面を多くすることが重要です。シャツはボタンを外して、衣類同士が重ならないように干し、靴下ははき口を上にし、片側だけを留めて中を広げるように干します。ズボンは、物干しハンガーなどの2・3連分を使って中を広げるように干し、ポケットがあれば、裏返してボタンを外すと良いでしょう。

さらに早く洗濯物を乾かしたいときには、脱水した後すぐに、アイロンをかけて、水分をおおよそ飛ばしてから、つり干ししてください。

大物衣類の乾かし方

かさばる衣類や綿素材の大きな衣類、大判のタオル、シーツなどの大きなものを乾燥させるときには、「③濡れた洗濯物の表面に乾燥した空気を循環させる」こと。空気に触れる面積が大きくなるように干します。

バスタオルやシーツのような大きなものは、二つ折りにして物干し竿につるすのではなく、蛇腹につるして干すようにすると、表裏ともに空気に触れるようになるため、早く乾きます。

なお、脱水が終わったところで濡れた状態のまま小さく畳み、パン!と叩いて小さなしわを伸ばしてから広げて干すとしわになりにくいです。

まとめ

洗濯物を早く乾かすには、洗濯物の水分を、素早く水蒸気にして逃がすことが重要です。工夫して冬の洗濯を乗り切りましょう!