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読者レポート

安全でおいしい水を届けるために

「水」は、私たちが生きていく上で、欠かせないものの一つ。私たちは日頃から何の疑問も持たず、水道の蛇口をひねり、水を使っています。日本の水道水は、世界的に見ても安全においしく飲める水と言われています。そこで、東京の水道水が、どこから来て、どのような水質処理や配水方法で一般家庭に届けられているのかを知るため、「東京都水の科学館」を訪ね、いろいろお話を伺ってきました。

読者委員
高田( たかだ ) 愛子( あいこ )
高田委員(右)と東京都水の科学館企画広報担当の戸田さん(左)

東京都水の科学館とは

東京都水の科学館は、江東区有明にある水道のPR施設で、水の不思議と大切さを科学の視点で紹介し、楽しみながら水と水道への興味を深めることができる体感型ミュージアムです。

迫力ある大画面のシアター「アクア・トリップ」では、まるで水の一滴になった感覚で、水源から蛇口までの「水の大循環」を体感できます。「アクア・ツアー」では、地下で実際に稼働している本物の給水所「有明給水所」を探検し、普段は見ることのできない巨大な水道施設を間近に見学することができます。

水の科学館地下にある給水施設「有明給水所」の様子

このほか、さまざまな森の生き物たちの標本が展示されている「アクア・フォレスト」や、観客の目の前で水を使った実験が披露される「アクア・ラボラトリー」など、全部で6つのゾーンがあります。

くらしの中の水

私たちは毎日「どんな時」に「どのくらい」水道水を使っているのでしょうか。歯みがき、飲み水、風呂、トイレなど、家庭で1人が1日に使う水の量は平均225L(令和2年度)。2Lのペットボトル112.5本にもなります。会社、学校、病院などを加えると、東京都で1日に使われる水の量は、学校のプール(およそ300㎥)約1万4000杯分(令和2年度)になるそうです。ちょっと想像がつきませんが

水道の水はどこから

では、私たちが毎日使っている水は、どこからどのようにして届くのでしょうか。「アクア・トリップ」の「水のたびシアター」で見ることができました。

雨は土に染み込んで、地下水として蓄えられ、少しずつ川に流れ出ています。その雨水や雪解け水を貯めておき、降水量の季節的変化や水道需要の変化に応じて、河川流量を調節する役割を持っているのが、ダムや貯水池などの水源施設です。

水道システム概念図

東京の水源は、多摩川水系と利根川水系及び荒川水系とに大別されます。現在は利根川水系及び荒川水系が80%、17%が多摩川水系となっています。

東京都の保有する水源量は日量680万㎥です。

ダムや貯水池のほか、川に流れる水を取り入れる「(せき)」があり、川の水の量の変化に気をつけながら、水を取り入れています。

ダムや貯水池、堰などから取水した水(原水)を、安心して飲むことができる水道水にするため、浄水処理を行っているのが、浄水場です。

浄水場できれいになった水が給水所に送られ、配水管、そして配水管から分かれた給水管を通って、私たちの家に届けられているのです。

安全でおいしい水づくり

いつも安全な水を届けるために、東京都水道局ではどのような取り組みをしているのか、教えてもらいました。

水源地での水質調査

水源の水質については、ダムや貯水池や川の水を70カ所の調査地点で、定期的に調べています。また、水質異常の早期発見のため、水質試験車を使ってパトロールも行っています。

浄水場での水質検査

浄水場では、水道水のもとになる水や、きれいにしている途中の水、そして最後にきれいに出来上がった水の検査をしています。

さらに、いろいろな機器を使って、飲み水としての基準を満たしているかを確認する詳しい検査をしています。

蛇口から出る水の検査

水道を利用する人に一番近いところは蛇口です。そのため、水質のより厳しいチェックが必要です。都内の給水栓(蛇口)131カ所に、自動水質計器を設置して、残留塩素等を24時間監視するとともに、定期的ににおい・味など多くの項目を検査し、安全性を何重にもチェックしています。

高度浄水処理の仕組み(金町浄水場)

水の味を悪くするカビのようなにおいのもとの中には、浄水場で行っている通常の浄水処理「沈殿→ろ過→消毒」では完全に取り切れないものもあります。

そこで、東京都水道局では、利根川水系の全ての浄水場でオゾンや生物活性炭を使った「高度浄水処理」という方法を取り入れ、それらを取り除いて、よりおいしい水を作っています。

大切な水を上手に使うために

私たちは、朝起きてから夜寝るまで、必ず水を使います。命を支える水を大切に上手に使うため、できることは何か、伺いました。

まず心がけたいのは「節水」です。東京都水道局では、炊事、洗濯、風呂など日常生活の中での具体的な節水方法を紹介するとともに、節水に関する相談にも応じています(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shiyou/sessui.html)。

洗顔や歯磨きの時、蛇口を開けっ放しにすると1分間に約12Lの水が流れます。“節水”の第一歩は蛇口の開けっ放しをやめること。まずは、そこから実行してみませんか。

また、川や湖を汚さないことも大切です。私たちが利用した水は排水として下水処理され、自然に返されます。そして、その水を再利用しています。こうした地球規模での水循環の点からも、水を汚さないよう注意して利用する必要もあります。

料理のときに使う油や調味料などをそのまま流すと「汚れのもと」となるため、きれいにするために大量の水が必要になります。食べ終わった食器などの油汚れなどはふき取ってから洗うなど、日頃から汚れのもとを流さないように心がけましょう。

取材を終えて

今回訪問した東京都水の科学館。主な対象は小学生とのことでしたが、初めて目にする標本や、実験での水の性質にビックリするなど、大人が行っても“目からウロコ”の体験ができる素晴らしいミュージアムでした。何げなく使っている水が、多くの人の努力と技術などによって届けられていることが分かり、水の大切さを再確認した今回の取材でした。

※東京都水の科学館は、設備改修工事のため令和5年4月上旬まで休館