更新日:2017年10月27日
認知症高齢者や知的障害者、精神障害者などの判断能力が不十分な人は、財産管理や、施設への入退所・介護サービスなど身上監護の契約をする必要があっても、自分で判断したり手続きすることが困難であったり、悪質商法の被害にあったりするおそれがあります。成年後見制度は、このような判断能力の不十分な人について、本人の意思を尊重しつつ保護することを目的とした制度です。
成年後見制度には、家庭裁判所が判断能力の不十分な人の後見人等を選任する「法定後見」制度と、本人が将来、自らの判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ後見人を選び契約しておく「任意後見」制度があります。
成年後見制度は高齢社会の進む中で、その役割を果たすことが期待されていますが、現在、利用者数が20万人程であるなど、十分には利用されていない状況です。そこで、制度を改善し利用の普及を促す「成年後見制度利用促進法」が平成28年5月13日に施行されました。
法定後見制度とは、現時点で判断能力が不十分なために、自らの財産を管理することが難しかったり、日常生活上のさまざまな契約などを行うことが難しい人が利用する制度です。
判断能力の程度など本人の事情によって「後見」「保佐」「補助」の3つに区分しています。
後見については「成年後見人」、保佐については「保佐人」、補助については「補助人」が、家庭裁判所によって選任されます。後見、保佐、補助の順で、本人が自分でできることが多くなり、後見人等の権限(同意権、取消権、代理権)が小さくなります。
任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ本人が任意後見人を決めておき、自分の生活支援や財産管理、療養介護などに関して代理権を与える契約(任意後見契約)をしておくものです。
1.基本理念・基本方針
成年後見制度の利用を促進していくうえで、3つの基本理念とそれに対応した基本方針を掲げています。
基本理念 |
基本方針 |
成年後見制度の理念の尊重 |
1.補佐・補助制度の利用を促進する方策検討 2.被後見人等の権利制限(欠格事由)の見直し 3.後見人等の医療・介護等の同意権認定への見直し 4.被後見人等の死後の事務の範囲(葬儀等)の見直し 5.任意後見制度の積極的な活用 6.国民への周知 |
地域の需要に対応した制度の利用促進 |
1.地域住民のニーズに応じた利用促進 2.地域住民による後見人等の確保 3.成年後見等実施機関の活動への支援 |
利用に関する体制の整備 |
1.家庭裁判所、行政機関の人的体制の整備 2.関係機関等の相互の緊密な連携の確保 |
2.基本計画・体制
国には、内閣総理大臣を会長とする「成年後見制度利用促進会議」が置かれ、「成年後見制度利用促進委員会」(有識者の組織)の審議 等による意見を聞きながら基本計画を策定し、制度の利用促進の総合的かつ計画的な推進を図ります。地方自治体は基本計画に基づいて地域の特性に応じた計画を定め、利用促進の調査審議などを行う合議制の機関の設置などに努めます。