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読者レポート

東京野菜で地産地消
~農総研が支える新しい農業~

 東京野菜の魅力の一つに、朝、東京の畑から収穫した野菜を、すぐに直売所や庭先販売で東京の消費者に届けられることがあります。
 魅力ある東京野菜の開発・生産を支えている東京都農林総合研究センターを取材し、同センターが開発した野菜・果樹・花の「オリジナル品種/東京ブランド」や、先進技術を活用した「スマート農業」について、お話を伺いました。松岡委員(中央)と農総研の竹内さん(左)、中村さん(右)

読者委員 松岡 弘子まつおか ひろこ

東京都農林総合研究センターとは

 立川市にある東京都農林総合研究センター(略称、農総研)は、設立から120周年を迎え、東京の農林業を支えるため、農業・林業・畜産に関わる研究開発を行っています。
 15ヘクタールを有する敷地内の高台には、黒ボク土(※1)、低地には灰色低地土(※2)の圃場があります。試験作物は両方の土壌に植えるなど、土壌の違いを生かした栽培が行われています。
 また、最近は、先進技術を活用した生産技術や、温暖化に伴う暑熱対策技術、できるだけ農薬を使わない病害虫防除などの開発に取り組んでいます。
 敷地内には、一般の方も自由に見学できる散策路があり、春には約50種類の桜を楽しむことができます。

  • ※1 火山灰が堆積し形成された土壌。都内の野菜畑の大部分はこの土壌。
  • ※2 多摩川によって運ばれてきた土が堆積して形成された土壌。

東京生まれのオリジナル品種

 農総研では、東京で育てやすく、高品質・高付加価値なオリジナル品種を開発しています。主なものをご紹介します。

東京おひさまベリー(イチゴ)

 20年の開発期間をかけてできた、お日様の下で作れる露地栽培用イチゴ。糖度が高く、果実が大粒で果肉の中まで赤いのが特徴。【収穫時期4月末~5月】

東京スター(ブバルディア)

 伊豆大島特産の切り花で、東京市場では大島産がシェア1位を誇る。星形に開花し発色がとても美しいのが特徴。

東京小町(ワケネギ)

 20年の研究栽培を経て開発。青ネギの仲間で、ネギ坊主が発生しにくいことで周年栽培ができる。
 緑葉は肉厚で柔らかく甘味があるのが特徴。

東京ゴールド(キウイ)

 先が尖った果形で果肉は黄色。糖度が高く肉質が軟らかで、酸味が少ないのが特徴。食味がよく、全国的に作られている。【収穫時期10~11月】

香りシクラメン

 原種の持つ芳香性を再現し、鑑賞性に優れる品種に開発されている。「はる香ミディ」と「おだや香」の2品種を登録。

ブルーベリー

 ブルーベリーは、国内では1960年代に小平市で初めて商品作物として栽培された東京発祥の果樹。バイオテクノロジーの技術で、品質に優れ、ブドウのように房で収穫できる品種を開発中。【収穫時期6~8月】

 品種開発には長い年月がかかるものが多く、交配を繰り返し、何千という組合せから選抜していきます。数多くの研究の中から特に優れたものだけが、「東京ブランド」の商品となっていくそうです。

東京型スマート農業の推進

 農総研では、ICT(情報通信技術)などの先進技術を活用した「東京フューチャーアグリシステム」を開発するなど、小規模でも収益性の高い東京型スマート農業の技術開発に取り組んでいます。
 ハウスの温度・湿度や採光の調整はコンピュータで制御され、水やりも家にいながらタブレット操作で行えます。新規就農者や後継者の方が、少ない負担で農業を始められるように、技術開発が行われています。

東京ブライトハウス」

 鉄骨を減らし太陽光を最大に取り込める構造になっています。東京のような小規模農地にも設置できます。

東京エコポニック」

 廃液ゼロのクリーンな養液栽培システムです。ヤシ殻の培地に苗を植え、流れ出た肥料養液を再び循環させ給液することで、肥料のムダがなく環境負荷も小さくできます。

 また、ハウスのブドウ園では、楽な姿勢でブドウを収穫できる位置に果樹が配置され、自走式防除機(農薬を散布するための装置)を走らせるレールを敷くなど、農作業の苦労や危険を軽減する工夫がされていました。

東京の農産物はどこで買えるの?

 東京の農家は小規模・多品目栽培が多く、農作物は、農家の庭先販売、JA東京の直売所、マルシェ、オンライン直売などで売られています。
 週末は、都内マルシェも多く開催され、生産者との会話を楽しみながら、青果・生花・加工品の購入などができます。

 東京都農林水産振興財団のウェブサイト「TOKYO GROWN」などでは、東京の農産物情報、直売所や庭先販売の紹介をしています。

まとめ・感想

 農総研で開発したオリジナル品種は、東京に限らず全国に発信し、安全で作りやすい農産物を目指しているそうです。
 東京では、消費者ニーズに応え有機肥料や最低限の農薬で作っている農家も多く、私達は安心して農産物を味わうことができます。収穫できる種類は、季節によって変わりますが、その時期が待ち遠しくなります。
 東京の農家は、都市化の影響や相続で減りつつありますが、住宅に囲まれた畑は、地域に緑を残し、災害時には避難場所として機能します。
 地産地消で東京産の新鮮な野菜や果物を食べて、東京の農家を応援したいと思います。

ナス畑の見学風景

取材先

公益財団法人東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センター 立川庁舎

〒190-0013 東京都立川市富士見町3-8-1
TEL:042-528-0505
URL:https://www.tokyo-aff.or.jp/site/center/