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今月の話題

安全に楽しもう!
インターネット通販

池袋総合法律事務所
弁護士 (しみず) (ふみよ)

スマートフォンの普及率が高まり、スマートフォンを利用したインターネット通販も身近なものとなっています。便利な反面、画面が小さく、注文もボタン1 つでできてしまうため、「イメージと異なる商品が届いた」「定期購入だと思わずに注文してしまった」など、後からトラブルになることも少なくありません。

本記事でご紹介するポイントを押さえて、安全にインターネット通販を楽しみましょう。

全世代にインターネット通販が身近な時代に

年齢を問わずスマートフォンの普及が進み、インターネットの利用が身近なものとなっています。総務省の「令和6年通信利用動向調査の結果」によると、インターネット利用者の割合は13~69歳で90%以上、70歳代でも約70%に達しています。そして、個人がインターネットを利用する際の機器としてはスマートフォンが増えており、20~50歳代で約90%、60歳代で約80%、70歳代でも約50%が利用しています。

インターネットを利用した買い物は、お店に足を運んだり、重たい荷物を持ち運んだりする必要がなく、また、時間的な制約もないため、 忙しい人や体力に自信のない高齢者をはじめ、多くの人にとって便利で、欠かせないものになってきています。近隣の店舗にない商品を購入できたり、複数のショップを比較して最も条件の良いところから購入できたりすることも魅力です。

他方で、画面越しでしか商品を確認できないため、イメージとは異なる商品が届いたり、気軽さのあまり取引条件などをよく確認せずに注文してしまったりして、トラブルとなることも少なくありません。

そこで、インターネット通販を安全に利用するために、気を付けていただきたいポイントをご紹介します。

商品を選ぶ段階で確認しておくべきこと

インターネット通販のルール

インターネット通販は、法律上は「通信販売」という取引の一種で、「特定商取引に関する法律」(以下「特定商取引法」といいます。)で、広告や表示に関するルールが定められています。

特定商取引法の「広告」とは?

通信販売などで商品やサービスを売る際に、消費者に向けて販売条件を知らせるもののこと。(商品を宣伝するだけのCMなどは該当しません。)

皆さんが、インターネットで買い物をする場合、商品名などを検索して出てくる広告の情報を手掛かりに、商品を比較・検討していることと思います。このように、通信販売では広告が重要な役割を果たすので、特定商取引法では、広告表示のルールとして、契約相手や契約内容・条件(事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、販売価格(送料も含む。)、代金の支払時期・方法、申込みの撤回や解除に関すること(返品特約含む。)など)を表示しなければならないことを定めています。

返品はできるの?

一定期間内であれば無条件で解約できる「クーリング・オフ制度」は、インターネット通販やテレビショッピングなどの通信販売には適用されません。では、通信販売の場合は、返品できるのでしょうか。

通信販売での返品の可否や条件については、事業者が特約(返品特約)を定めて広告に表示していれば、その内容が有効となります。返品特約とは、特約で定めている内容に従って、サイズが違った、届いてみたらイメージと異なっていたなど、消費者側の都合による返品が認められるルールのことです。

もし、事業者が返品特約を定めていない、定めていても広告に表示していない場合は、特定商取引法の定めにより、商品の引渡しを受けた日から(その日を含め)8日以内であれば、申込みの撤回や解除ができます(返品時の送料は消費者の負担)。この法律の定めは、クーリング・オフ制度と異なり、事業者が返品特約を表示していなかった場合にだけ適用されます。したがって、通信販売の場合、事業者が返品特約を表示していたが、消費者が見落としていたという場合には、このルールは適用されません。返品特約の有無や内容をよく確認しましょう。

他方で、事業者に責任がある場合、例えば、商品が届かなかった場合、不良品や商品説明と違う物が届いた場合などは、「返品不可」という特約があったとしても、民法のルールに従って契約解除や返品ができ、代金を支払済みの場合は返金を請求することができます。

誇大広告に注意!

インターネットを見ていると、「本当?!」と思うような大げさな表現や絶対的な効果を約束する広告を見かけることがあります。誇大広告の可能性があるので、気を付けてください。特定商取引法では、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。例えば「必ず効果がある」「絶対に1カ月で痩せる」などの表現は、誇大広告に該当する可能性があります。そのような広告をしている事業者と契約をしてよいのか、冷静に検討しましょう。

商品を選ぶ

商品の写真と値段だけ見てすぐに決めるのではなく、次のチェックポイントをしっかり確認しましょう。また、他のお店でも同じ商品を取り扱っている場合は、取引条件を比較するのもよいでしょう。

商品を選ぶ段階でのチェックポイント

  • 販売業者が実在の住所を表示しているか
  • 前払い以外の支払方法も選択できるか
  • 購入後の返品はできるか(返品特約の有無・内容)
  • 誇大広告に注意 など

値段だけでなく他の店と取引条件を比較してみよう

商品を注文する段階で確認しておくべきこと

最終確認画面での6つの表示項目

インターネット通販では、注文をする前の最終確認画面で、消費者が申込内容に関する必要な情報をきちんと確認できるようにするため、次の6つの項目を表示しなければならないことになっています。

最終確認画面での6つの表示項目

  • 分量
  • 販売価格・対価(送料の表示も必要)
  • 支払の時期・方法
  • 引渡・提供時期
  • 申込期間(期限のある場合)
  • 申込みの撤回、解除に関すること(返品特約含む。)

※定期購入の場合は、回数や2回目以降の代金なども表示

この6つの項目は、契約の重要な内容をなすものですので、ひとつひとつ確認するようにしましょう。スマートフォンは画面が小さく全体を一度に表示しきれない場合もあるため、きちんとページの最後まで画面をスクロールして情報を確認しましょう。近年多いトラブルとしては、毎月届く定期購入であることに気付かないまま注文してしまうケースがあります。「初回お試し○○円!」といった広告に流されて定期購入であることの表示を見落としていないか、よく確認しましょう。また、すぐ必要な物なのになかなか商品が届かない事態となっても困るので、引渡時期の情報も重要です。消費者に不利益な情報が画面をスクロールした一番末尾に書かれていたり、目立たないようにごく小さく記載されていたりすることもあるので十分注意してください。

最終確認画面でのチェックポイント

  • 1回限りの購入? 定期購入?(定期購入の場合、回数や2回目以降の支払額は?解約しないとずっと続くの?)
  • 解約方法・条件や返品方法・条件は?
  • 支払時期や引渡時期は?
  • ページの最後までスクロールして情報を確認
  • 最終確認画面のスクリーンショットを撮って保存

表示がない場合は取り消し可能?

前述の6つの項目が正しく表示されておらず、消費者が次のように勘違い等により申込みをしてしまった場合は、特定商取引法の定めにより、契約を取り消すことができます。

  • 事実と異なる表示がされていて、それを事実と勘違いして申込みをした場合
  • 必要な表示がされていなかったので、表示されていない事項が存在しないと勘違いして申込みした場合
  • 申込みボタンと知らずに注文確定ボタンを押してしまった場合 など

最後に

インターネット通販はとても便利なものです。しかし、その手軽さから、広告表示に惹かれた勢いで、取引条件を十分確認しないままに注文確定ボタンを押してしまい、トラブルになりがちです。注文してから、後になって悔やむことがないように、広告に表示されている内容や、最終確認画面の記載をよく確認・保存して、安全にインターネット通販を楽しみましょう。

※インターネット通販に関して、トラブルが発生した場合や不審なメールが届いた場合は、最寄りの消費生活センターへ相談を!

電話188(消費者ホットライン)