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今月の話題

歩行補助用具を上手に使って街にでかけよう

公益財団法人テクノエイド協会
普及部長・試験研修部長 社会福祉士
矢沢( やざわ ) 由多加( ゆたか )

年齢を重ねてくると、歩くことに不安がでてくる方もいるかもしれません。しかし、歩くことには、骨や筋肉の衰えを防ぐなど、たくさんのメリットがあります。一方で、歩くことには転倒などのリスクもあるため注意が必要です。

今回は、外での歩行を補助する用具をご紹介します。用具を活用して、けがを未然に防止し、快適に歩きましょう。

歩行補助用具いろいろ
※およその目安を示したものです。症状や使用する歩行補助用具がこの通りとは限りません。
より安全に歩行したい…棒状杖、途中で座って休みたい…シルバーカー、より体重を支えながら移動したい…多点(脚)杖、歩行車

歩くことを補助する

歩行を補助するには、安全に、そして実用的な方法で移動することを考えましょう。生活範囲を拡げ、自分のしたい生活を送ることができるように、適切な用具を選ぶことが大事です。無理な歩行支援や介助は、転倒などのリスクを招きます。

歩行を補助する用具

歩行を補助する用具には、さまざまな種類があります。ここでは代表的な用具とその特徴を紹介します。

杖をつくことで、立ったり歩いたりするときのバランスを保つことができます。また、捻挫や骨折などをしている場合は、患部がある側にかかる体重を少なくすることができます。

棒状杖には「C字型」、「T字型」、「L字型」などの種類があります。

歩行を補助するために一般的に使用されるものはT字型杖です。この杖は、握るときに人差し指と中指の間に杖のフレームを挟んでグリップに体重をかけるように使用します。

L字型杖はフレームを挟まないでグリップを握ることができます。そのため、L字型杖は、より体重をかけた方が安定して歩くことができる人に向いています。

棒状杖の種類

グリップの握り方(T字型)

多点(脚)杖は、一本杖の先端部分を3~4本に分岐したものです。

この杖は、歩行が不安定で、一本杖より大きな支えが必要な場合に使用します。3点杖より4点杖の方が、また、脚の開きが大きいものほど安定性に優れていますが、重量が重くなります。杖には、ほかにもさまざまな種類があります。

多点(脚)杖

杖の長さは、腕を垂直に下ろしたときの手首の高さにグリップがくる長さ、あるいは、杖先を足先の15㎝前・外側についたとき肘関節が30度程度になる長さに調整すると力が入りやすくなります。

杖の長さ

また、杖先ゴムの外周部分の弾力性が失われると形状に問題がなくても滑り始めます。ゴムの溝がなくなった場合や片減りしてきたら交換時期と考えられます。

歩行車

歩行車は四脚に車輪を付けたもので、前輪は自在に動き、後輪は固定となっています。軽く押しながら歩行することが可能で、ハンドグリップに手動ブレーキが付いているためブレーキをかけながらスピードの調整ができます。ただし、左右の握力が異なる場合は、歩行車が回転してしまうことがあるので注意が必要です。

歩行車を使用する場合は、座面が跳ね上げられるタイプのものは座面を跳ね上げ、体を歩行車の中に入れて歩行します。

歩行車

歩行車はハンドグリップに体重をかけて歩行できるため、安定して歩行することができます。しかし、歩行車のハンドグリップから体を出して歩いてしまうと、車輪が回転したときに体が振られ、足がついて行かなくなる場合があるので注意が必要です。

また、段差のある所でも気を付けましょう。

昇りでは、まず、段差に近づいてブレーキをかけます。次に、ブレーキをかけたまま前輪を上げる、もしくは、ティッピングレバーを踏み前輪を上げて、段差を乗り越えましょう。

段差の乗り越え

降りるときは、ブレーキを握り、スピード調整をしながら、ゆっくりと段差を降りましょう。

シルバーカー

シルバーカーは、フレーム内に体を入れることはできないため、歩行を安定させるための支えは十分ではありません。しかし、かご付きのものは荷物を運ぶのに便利なので、ショッピングカーとしても使用することができます。

また、シルバーカーには椅子が付いているものが多くみられますが、休憩するための椅子であって、車椅子のように座らせて動かすようには設計されていませんので、そのような使い方はしないでください。

シルバーカー(バーハンドルタイプ)

シルバーカーのキャスター(車輪)にはシングルとダブルがあります。ダブルは重量が重くなりますが、細い溝に落ちることを防ぐことができるように設計されています。また、車輪が固定式の場合は、方向転換する時に、車輪を持ち上げる必要がありますが、自在式の場合は、車輪が回転するので方向転換がしやすくなります。

制動ブレーキの形状は、バーハンドルタイプやグリップタイプがあります。バーハンドルタイプは、片手でブレーキをかけることができます。しかし、ハンドルに体重をかけにくいため歩行が不安定な方には向いていません。

一方、グリップタイプは、両側にブレーキが付いていますが、左右の握力が違う場合、シルバーカーが回転してしまうことがあるので注意が必要です。

シルバーカー(グリップタイプ)

駐車ブレーキには、グリップのレバーを下げるタイプ、バーハンドルのレバーにロックするタイプ、足で操作するタイプなどがあります。足で操作する際にバランスを崩すことがありますので、できるだけ両足を地面につけて安定した状態でブレーキをかけることができるものの方が安心です。

足で操作するタイプのブレーキ

まずは相談しましょう

杖や歩行車は、介護保険でレンタルできるものもあります。介護保険を利用されている方は、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談してください。利用が決まったら、試し使いをさせてもらい、しっかりと歩行の補助になっているか、理学療法士、作業療法士などの専門家に判断してもらいましょう。

また、棒状杖、歩行車、シルバーカーはSGマークの対象品目です。安全基準に適合した製品であることを示すSGマークは、商品を選ぶ際の目安の一つになります。

歩行を補助する用具を購入するときは、お店で実物を見て試し、分からないことはお店の人に聞いてみましょう。

歩行補助用具を上手に使って外出を楽しんでください!

歩行補助用具に関する相談先

(公財)テクノエイド協会
https://www.techno-aids.or.jp/

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