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今月の話題

エシカル消費で未来を選ぶ ~知っていますか、マークの意味~

公益財団法人消費者教育支援センター
総括主任研究員 柿野 成美かきの しげみ

 「買い物は投票」という言葉を聞いたことがありますか?
 実は、日々の買い物で何を選ぶのか、という決定はお金の「投票」であり、私たちは普段から今と未来の社会の在り方を決める、重要な選択をしているのです。
 今回は、私たちが買い物をする際に、人・社会・環境に配慮した商品を選ぶ手がかりとなる、商品に記載されたマーク(表示)について紹介します。

マークをヒントに選ぶ未来

 消費者の商品選択が社会や環境に与える影響が注目され、「人や社会、環境に配慮した消費行動(エシカル消費)」の重要性も意識されるようになってきました。
 ところが私たち消費者が、その商品がどのように生産され、どのような流通経路をたどって売り場に並んでいるのか、さらにその商品が、どのくらいの環境負荷をかけているのかを知ることは容易ではありません。
 それを知る手がかりの一つとして、表示やマークがあります。マークの意味が分かれば、未来を選ぶ参考になるでしょう。そこで、未来を選ぶ基準となるマークの一部をご紹介します。

MSC認証

海の水産物を食べ続けるために

 世界中の海で、魚の成長スピードを超えて獲り続けたために、将来魚が食べられなくなることが、大きな問題になっています。また、魚を獲る時に、ウミガメや海鳥などの生物が巻き添えになる場合があり、海の生態系が壊れています。
 このような問題に対して、水産資源や海洋環境を守るために、厳しい基準で獲られた魚に付けられているマークがMSC認証です。このマークの水産物を選択することで、豊かな海の資源を守り、魚が食べられる未来を選択することができます。養殖の水産物に付けられるASC認証のマークもあります。

FSC®認証

森の豊かさを残すために

 地球上では、急速なスピードで自然豊かな森が失われています。これを守る方法として、FSC認証の仕組みがあります。「FSCの10原則」に沿って、森の動物や植物、そこで働く人たち、暮らす人たちのことを考えて将来も豊かな森を維持できるように管理しているか、また、製品が完成するまでの全てのプロセスでルールを満たした材料だけを使っているかを国際的な厳しい基準でチェックし、認証を受けた商品にマークが付けられます。このマークが付いた商品を選ぶことで、豊かな森を未来に残すことができます。主に、ティッシュペーパー、ノートなどの紙製品に付けられています。

国際フェアトレード認証

公正な貿易により貧困のない世界をつくるために

 途上国で生産された商品が、店頭で驚くほど安く販売されていることがあります。生産国では、その安さを生み出すため低賃金で働かされていたり、児童労働が使われていたり、必要以上の農薬を使用して生産者に健康被害を及ぼしたりする負の側面が潜んでいる可能性があります。
 そこで、フェアトレード(途上国の生産者と適正な価格で継続的に取引することを通じて、生活の改善と自立を図る仕組み)が世界的に広がりつつあります。国際フェアトレードラベル機構の基準を満たした商品には、認証ラベルが付けられています。主に、コーヒー、紅茶、チョコレート、スパイス・ハーブ、切り花、ワイン、コットン製品などがあります。

エコマーク

地球温暖化等から地球を守るために

 この美しい地球で暮らし続けるためには、地球環境を守ることが大前提です。そのための選択基準の一つとなるエコマークは、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付けられるマークです。
 地球温暖化の防止、省資源と資源循環、有害物質の制限とコントロール、生物多様性の保全の視点から、環境への影響を総合的に判断しています。マークの付いた商品は、文房具や制服などの他、建築資材やエンジンオイル、最近ではホテルやスーパーマーケット、飲食店のサービスにも拡大しています。

有機JAS

農薬等による環境負荷を減らし、農地の自然循環機能を活かすために

 有機JASマークは、原則として農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、遺伝子組換え技術を使用せずに自然の力で生産された食品(農産物、畜産物、加工食品)に付けられています。このマークが付いていない農産物や農産物加工品に「有機」や「オーガニック」といった言葉を使用することは法律で禁止されています。このマークが付いた商品を選択することにより、自然循環機能を活かした環境を未来に残すことにつながります。

実現したい未来 海の水産物を食べ続けるために 森の豊かさを残すために 公正な貿易により貧困のない世界をつくるために 地球温暖化等から地球を守るために 農薬等による環境負荷を減らし、農地の自然循環機能を活かすために
マーク MSC認証のマーク FSC®認証のマーク 国際フェアトレード認証のマーク エコマークのマーク 有機JASのマーク
名称 MSC認証 FSC®認証 国際フェアトレード認証 エコマーク 有機JAS
認証団体/制度運用団体 MSC日本事務所 FSCジャパン フェアトレードジャパン 日本環境協会 農林水産省
主な商品 水産物、水産加工品 紙製品(ノート、ティッシュ等) チョコレート、コーヒー、紅茶、胡麻等 文房具、制服、日用品、プリンタ 農産物、加工食品、畜産物
実現したい未来 海の水産物を食べ続けるために
マーク MSC認証のマーク
名称 MSC認証
認証団体/制度運用団体 MSC日本事務所
主な商品 水産物、水産加工品
実現したい未来 森の豊かさを残すために
マーク FSC®認証のマーク
名称 FSC®認証
認証団体/制度運用団体 FSCジャパン
主な商品 紙製品(ノート、ティッシュ等)
実現したい未来 公正な貿易により貧困のない世界をつくるために
マーク 国際フェアトレード認証のマーク
名称 国際フェアトレード認証
認証団体/制度運用団体 フェアトレードジャパン
主な商品 チョコレート、コーヒー、紅茶、胡麻等
実現したい未来 地球温暖化等から地球を守るために
マーク エコマークのマーク
名称 エコマーク
認証団体/制度運用団体 日本環境協会
主な商品 文房具、制服、日用品、プリンタ
実現したい未来 農薬等による環境負荷を減らし、農地の自然循環機能を活かすために
マーク 有機JASのマーク
名称 有機JAS
認証団体/制度運用団体 農林水産省
主な商品 農産物、加工食品、畜産物

各マークの詳細については認証団体(制度運用団体)にお問い合せください

 また、これらのマークが付いていなくても、生産者がその商品に込めた想いをのせて販売するコーナーや店舗を積極的に利用することも、未来につながる消費者の重要な選択です。
 例えば、都庁都民広場地下1階に、「KURUMIRU」という障害のある方々が作成した商品を専門に扱ったアンテナショップがあります※。季節ごとに心を込めたすてきな商品が並んでおり、いつ立ち寄っても気持ちがホッとする場所です。ここでの買い物は、障害のある方の自立支援につながると言えるでしょう。

※都庁都民広場地下1階。他に丸井錦糸町店2階、伊勢丹立川店4階にもある。

エシカル消費でより良い未来を

 このように、人・社会・環境に配慮して、ちょっといい未来をつくる消費者の行動を「エシカル消費」といいます。これは、公正で持続可能な社会の実現に向けて、消費者に求められている責任の一つです。
 まずは身近なところからエシカル消費を始めるため、普段の買い物のときに、今回ご紹介したようなマークを参考にしてみると良いでしょう。また、マークが付いていなければ、その商品がどのように作られているのか、販売店や企業のお客様相談室に問い合わせてみることもエシカル消費につながります。
 現在、多くの企業が、持続可能な開発目標(SDGs)※の達成に向けて、未来に向けたさまざまな取組を始めています。
 私たちは、買い物を通じて、企業の素晴らしい取組を応援し、次世代に残していきたい未来を積極的に選んでいきましょう。

SDGsのロゴ (出典)国際連合広報センターホームページから引用

※2015年国連総会で採択された2030年までに達成する17の目標。貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などとあわせて目標12に「持続可能な生産・消費形態の確保」(つくる責任つかう責任)が掲げられている。