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今月の話題

いざという時に慌てないための、防災の備え

管理栄養士・防災士・災害食専門員
今泉 マユ子いまいずみ まゆこ

 私は管理栄養士、防災士、災害食専門員、横浜防災ライセンスなどの資格を持ち、日頃、災害の備えの大切さを伝えていますが、災害が起きた時、一番大切なことは命を守ることです。では、命を守るために何をすればいいのでしょうか? 何をしておけばいいのでしょうか? もしもの時に慌てることのないよう、今日からできる防災の備えについて解説します。

防災対策で一番大切なことは命を守ること

 地震、竜巻、大雨、大雪、いつどんな災害が起こってもおかしくない環境の中で私たちは暮らしています。今は災害後ではなく、災害が起きる前だということを忘れないでください。防災で一番大事なことは命を守ることです。命を守ることができてはじめて、災害食や日用品の備えが活きてきます。

もしもって、どんなとき?

 私たちの周りにはたくさんの「もしも」が潜んでいます。地震、台風、大雨、集中豪雨、高潮、土砂災害、落雷、竜巻、大雪、火山噴火など。まずは身の回りにどんな危険があるのかを知って、どんな準備をしておけばいいか、考えてみましょう。災害は時と場所を選びません。災害の種類によって必要な対策は異なりますし、季節や天気によって、服装も違い必要な物も違ってきます。台風や大雨などは「いつ」「どこで」をある程度予測できる災害です。天気予報を毎日見る習慣をつけ、気象庁の警報、自治体の避難情報に注意し、備えをしてください。

危ない場所がないか点検しましょう

 各部屋の真ん中に立ち、ゆっくり四方を見渡し「今、大きな揺れがきたらどうなるか」を想像してみてください。棚の上に花瓶など重い物は置いていませんか? テレビは倒れてきませんか? 壁に絵や時計など落ちそうなものはありませんか? 本棚、食器棚、冷蔵庫は倒れないように転倒防止策をしていますか? キャスターがついていて、動いてくるものはないですか? 部屋は片付いていますか? ドアの前、廊下、玄関などに物が散乱していると、出口をふさいでしまったり、逃げる時に怪我をするかもしれません。再点検して、自宅を安全な場所にしましょう。

安全対策チェックポイント
  • 家具の配置の見直しをする
  • ドアをふさがないよう家具の置き場を工夫する
  • 家具を固定して、転倒を防止する
  • 食器などの下に滑り止めシートを敷く
  • 危険だと思われるものは、棚の中にしまう
  • 開き戸タイプの家具には開き扉ストッパーを取り付ける
  • 吊り下げ式照明器具の補強を行う
便利な家具も地震が起きると凶器へと変わります。家具類の転倒防止対策をしましょう。 L字金具(壁の桟と家具の桟をL字型金具で固定する。) ベルト式、チェーン式(家具と壁をベルトで固定する。) ポール式(突っ張りタイプ。天井と家具を固定する。) ストッパー式(底面に差し込み、家具の前倒れを防止。)

枕元セットと非常用持ち出し袋の準備を

枕元セット

 就寝時に災害が発生し停電した場合、足の踏み場もない部屋の中を手探りで移動しなければいけなくなります。そのため枕元セットとして「照明(懐中電灯)」「手足を守る道具(スリッパ、軍手)」「助けを呼ぶ道具(ホイッスル)」を、手が届く場所に用意しておくことが重要です。

停電に備えて

 いつ停電するかわからないので、懐中電灯はすぐに取り出せる場所に乾電池と一緒に備えてあると、いざという時に慌てずに行動できます。真っ暗な中でも懐中電灯を探せるよう、蓄光テープを貼るのもおすすめです。

非常用持ち出し袋

 避難するときに必要な物を入れた非常用持ち出し袋も必要です。非常用持ち出し袋のセットは、2種類に分けて考えてください。

①避難する時に必要なもの

 命を守るための道具をいれてください。※身に着けるもの: 靴、ヘルメット、軍手、マスク、懐中電灯、レインコートなど

①避難する時に必要なもの 現金 ※小銭も必ず用意する、充電器、携帯ラジオ、地図、水・携行食、ウェットテッシュ、身分証明書のコピー、携帯トイレ、エマージェンシーシート など(その他必要なものを選択)※玄関などすぐ取り出せるところに置いておきましょう
②避難生活を送るときに必要なもの

 避難生活が始まった時に必要な物です。

②避難生活を送るときに必要なもの ポリ袋、睡眠用品、飲料水、食料(1週間分以上)、着替え、毛布、タオル、予備電池(バッテリー)、衛生用品、生活用品 など(その他必要なものを選択)

 あらゆる不測の事態は突然発生します。1分1秒を争うような場合、「何を持っていこう」と考えていると避難が遅れてしまい命とりになります。そのため、素早く避難ができるように、玄関などすぐに取り出せる場所に①の非常用持ち出し袋を置いておきましょう。準備した物は「重くて歩けない」なんてことにならないように、必ず背負ってみてください。

 ご高齢の方などは、持ち出し袋の中に、自分が食べられるものと、常備薬やお薬手帳、処方箋、とろみ剤、入れ歯や老眼鏡、補聴器や折り畳み式の杖といった補助器具などを入れておくと良いでしょう。

情報を集めるために必要なもの

 避難するかどうかは早めの判断が大切です。自分がどんな状況におかれているのか、ラジオや携帯電話、スマートフォンなどを使い、なるべく短い時間で正確な情報を集めましょう。ただし、必死に情報を集めている間に、気が付いたら危険がせまっていることもあります。周りの状況にも気を付けてください。

電池切れを防ぐために
携帯ラジオ

持ち運びできる小ぶりなラジオで、手回し充電ができて乾電池が使えるものがおすすめです。予備の乾電池も一緒に備えておきましょう。

携帯電話・スマートフォン

モバイルバッテリーはソーラー式、充電式、乾電池式などあるので、いくつか用意しておくと安心です。さらに消費電力を抑える工夫をしましょう。

消費電力を抑える工夫
  • 液晶画面を可能な限り暗くする
    端末の設定画面で液晶の明るさを抑える
  • 「圏外」の時は、「機内モード」に
    「圏外」の時に電池を激しく消耗するため、通信が回復するまでは「機内モード」に設定する。

トイレの問題は命にかかわります

 行きたい時にトイレに行き、安心して用を足せる。普段当たり前にできていることを災害時でもできることが理想です。トイレの衛生状態が悪くなると、できるだけトイレに行かないように、水分や食事を控えたりトイレを我慢することにより、栄養状態の悪化や脱水状態などを招きます。そして水分を控えたことで血栓ができて、エコノミー症候群などを引き起こし、命にかかわる事態に直面します。災害時のトイレ対策は絶対に必要です。携帯トイレは色々な種類があり、排せつ物の吸収量も使い方も違うので、自分にあう物を探しましょう。また、携帯トイレを買っただけでは安心ではありません。災害という特殊な状況下で慣れないことをするので、平常時のうちに一度使っておくことをおすすめします。

まとめ

 いつどこで災害にあうか分かりません。大災害による被害を最小限に食い止めるために、今からできる限りの備えをしておくことをおすすめします。災害が起きてからできることは限られていますが、今できることはたくさんあります。備えることをきっかけに、防災について考えて欲しいと思っています。

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