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今月の話題

トラブルも機敏に回避!~アクティブシニアが気をつけたいトラブル~

和の森法律事務所
弁護士
瀬戸 和宏せと かずひろ

 還暦や定年退職を迎えた後も、仕事や趣味に意欲的で、若い世代に負けないほど元気なシニアの方が増えてきています。
 一方で、活動的だからこそ陥りやすい、意外な落とし穴も存在します。今回は、そんなトラブルを上手に回避するためのポイントをご紹介します。

トラブルも怖くない

 トラブルも事前にその対処法を知っていれば回避することができます。以下では積極的な消費活動を行うシニアだからこそ巻き込まれてしまうトラブルについて、いくつかの事例を用いてご紹介します。

トラブル事例 ~意外に身近な落とし穴~

事例 架空請求

 スマートフォンで動画を視聴しようとしたら、突然、アダルトサイトの会員登録完了の画面になった。「誤操作の方は本日中に連絡を」という指示に従い電話したが、「既に会員登録は完了している。登録料10万円の支払義務がある」と言われた。

 パソコンやスマートフォンを積極的に活用するシニアの方が増えたことで、それに関連した被害相談も少なくありません。
 事例はインターネットの利用者を狙った架空請求です。契約は、申し込みと承諾の内容が一致しなければ成立しません。このケースでは、動画を視聴しようとしてスマートフォンを操作しただけで、会員登録の申し込みをしていませんから、会員契約は成立せず、登録料を支払う義務はありません。このような場合は、慌てず無視しましょう。もし、連絡をしてしまい、しつこく請求が来るときは、警察や消費生活センターに相談して下さい。

事例 仮想通貨に関するトラブル

 仮想通貨の取扱事業者から、「今、仮想通貨を購入すれば必ず値上がりする」と言われ、投機目的で購入した。しかし、大幅に値下がりしてしまい損をしてしまった。

 一時期、ビットコインなどの仮想通貨の価格が高騰したため、仮想通貨を購入すれば必ず儲かると誤解される方もいました。しかし、仮想通貨は円やドルなどの国が価値を保証する「法定通貨」とは異なります。価値が急激に変動する傾向があり、大幅な値下がりによる損失を抱えてしまうこともあります。そのため、必ず値上がりするといった話はウソです。
 また、複数の登場人物が詐欺的に仮想通貨の勧誘を迫る「劇場型勧誘」と呼ばれる手口もあります。例えば、仮想通貨の買取業者Xから「Yが販売する仮想通貨を代わりに購入してくれたら、後日倍の値段で買い取る」などと言われ、Yに代金を支払ったが、その後Xと連絡が取れなくなってしまった、といった事例が典型です。この場合、X(買取業者)とY(販売業者)は、同じ詐欺のグループです。倍の値段で買い取るなんて、そんなウマい話はないと疑うことが大切です。

事例 光回線契約に関するトラブル

 大手通信事業者Aの光回線サービスを利用していたが、先日Aの代理店を名乗る業者から、「お得な新プランがある」と電話があった。Aの新プランの案内と思い了承したが、後日届いた契約確認書面を見ると、契約先がB社になっていた。

 平成27年2月より、NTT東西が光回線サービスの卸売を始めました。現在では卸売を受けた様々な事業者(光コラボ事業者)が参入し、光回線に独自のサービスを組み合わせ提供しています。消費者にとっては、契約先やサービスの選択肢が増えましたが、その一方で、契約に関する事業者の説明が不足し、消費者がよく理解できないまま契約をしてしまうことで、トラブルとなることもあります。

 そこで、電気通信事業法では、初期契約解除制度などの消費者保護ルールを定めています。初期契約解除制度は、一定の範囲の電気通信サービス契約について、契約書面受領日を初日とする8日間が経過するまでは、利用者の都合により一方的に契約を解除できる制度であり、光回線サービスの契約はその対象となります。
 いずれにしても、契約締結前に、誰と、どのような内容の契約を締結するのか、十分な説明を求め、理解することが必要です。

事例 美容医療に関するトラブル

 顔のしわが気になりクリニックに行ったところ、薬剤を注射する施術を勧められた。しかし、3ヵ月にわたって施術を受けても効果を感じることができず、費用も高額のため解約したい。

 誰もが年を重ねても若々しくありたいと願います。しかし、美容医療は保険適用外の自由診療で行われることが多く、高額な契約になりがちです。
 美容医療のうち、下の表に該当するものは、特定商取引法が適用されます。この場合、契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフができます。なお、効果等について嘘の説明があれば取消しができます。
 美容医療の契約は、即断の必要はありません。施術の方法、効果の程度、後遺障害発生の可能性、料金、アフターサービスなどを十分に説明してもらい、慎重に検討しましょう。

特定商取引法の対象となる美容医療契約(特定継続的役務提供)

下記に記載の「方法」による美容医療で、契約期間が1ヵ月を超え、かつ契約金額が5万円を超えるもの

脱毛 光の照射または針を通じて電気を流すことによる方法
(例)レーザー脱毛
にきび、しみ、そばかす
その他の皮膚に付着しているものの除去または皮膚の活性化
光もしくは音波の照射、薬剤の使用または機器を用いた刺激による方法
(例)ケミカルピーリング
皮膚のしわまたはたるみの症状の軽減 薬剤の使用または糸の挿入による方法
(例)ヒアルロン酸注射
脂肪の減少 光もしくは音波の照射、薬剤の使用または機器を用いた刺激による方法
(例)脂肪溶解注射
歯牙の漂白 歯牙の漂白剤の塗布による方法
(例)ホワイトニングキットを用いたホワイトニング

まとめ

 シニア時代をアクティブに生きることは素晴らしいことです。新しい人との出会いや、何かにチャレンジすることで充実した生活も望めます。ただ、世の中には、人をだまそうとする人たちがいることも忘れないでください。また、理解できないまま契約をすると、思わぬ失敗につながるので注意しましょう。

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