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読者レポート

移転から5年、
築地から引き継がれる都民の台所
~進化し続ける東京都中央卸売市場豊洲市場の魅力を紹介!~

読者委員 藤田( ふじた ) 昌信( まさのぶ )

都民の台所として長年親しまれてきた築地市場。平成30年に江東区豊洲に移転して5年が経過しました。この日本最大の中央卸売市場である豊洲市場を取材し、施設を案内いただくとともに、お話を伺ってきました。最新の設備を誇る豊洲市場の魅力をお伝えしたいと思います。

藤田委員(右)と東京都中央卸売市場豊洲市場管理課の望月さん

1市場の歴史(江戸時代~現在)

江戸時代初期、漁師たちは獲れた魚を幕府に納め、残りを日本橋のたもとで売るようになり、魚河岸を形成するようになったことが、現在の東京の魚市場の始まりとされています。

明治維新の頃には、東京府の許可のもと民営市場が開設され、庶民への食の安定供給が始まりましたが、大正12年に発生した関東大震災により大きな被害を受けたため、公設市場の整備が進み、昭和10年に東京市中央卸売市場(築地市場ほか)が開設されました。東京都内の市場は、その後、複数の市場が順次整備されるなどして、現在では豊洲など11市場が設置されています。

2豊洲市場の概要

東京都中央卸売市場豊洲市場(以下「豊洲市場」という。)は、東京都江東区にある水産物と青果物を取り扱う中央卸売市場です(食肉と花きの取り扱いはありません)。

最寄り駅※1は、東京臨海新交通臨海線(通称「ゆりかもめ」)の市場前駅で、改札と豊洲市場の各施設は、歩行者デッキで繋がっており、駅からのアクセスは非常に便利です。

豊洲市場は、豊洲5丁目の一部と6丁目全域にまたがる1~8の街区の中にあり、卸売場と仲卸売場を併設した青果棟は5街区に、屋上に緑化広場を有する水産仲卸売場棟と来年2月に開業を予定している新施設は6街区に、そして管理施設棟と「マグロのせり」が行われることで有名な水産卸売場棟は7街区にあります。

豊洲市場の敷地面積は、約35万5千㎡あり、東京ドームの約7.6個分という広さがあります。ちなみに、豊洲へ移転前の築地市場の敷地面積は、約23万㎡であり、豊洲市場は約1.5倍の広さを有しています。

市場前駅を降りると、左正面に、飲食店やPR コーナーが入る管理施設棟の建物が見えます。

※1 都営バス「市場前駅前」下車または東京BRT「豊洲市場前」もしくは「ミチノテラス豊洲(豊洲市場前)」下車でも行くことができます。

3せりの様子を見学!

7街区にある水産卸売場棟では、卸売業者(売り手)が、全国の出荷者から持ち込まれた生鮮食料品を集荷し、仲卸業者や売買参加者(買い手)に対して、「せり売」※2や「相対(あいたい)取引」※3という方法で販売を行っています。1日に約千本のマグロが上場されており、卸売業者と仲卸業者や売買参加者の間で、せりによる真剣な取引が日々繰り広げられています。

一般の方はせりや相対取引に参加することはできませんが、水産卸売場棟と青果棟で早朝に行われるせりは見学者通路から見学が可能です。※4 ただし、マグロのせりを近くで見ることができる見学者デッキからの見学は人気のため、事前申込・抽選制となっています。

6街区には、取引された最大サイズのマグロ(クロマグロ)と背比べができるパネルが設置されています。

※2 せり売とは、売り手のせり人が卸売場で、公開の方法により多くの買い手に競争で値を付けさせ、最高の値を付けた人に販売する取引方法。

※3 相対取引は、売り手と買い手が、販売価格および数量について交渉の上、販売する方法。

※4 見学者通路における見学は、開市日の午前5時から午後5時まで可能。

4水産仲卸売場棟で、市場飯の後は、屋上でのんびり!

水産卸売場棟と通りを隔てて北側に建つ水産仲卸売場棟(6街区)では、仲卸業者が、卸売業者から仕入れた食品を小分けにして、1階の仲卸売場で小売業者や飲食店などの買出人を相手に販売をしています。

仲卸売場への立ち入りは業者のみとなっていますが、3~4階には、一般の人も入れる飲食店や物販店があります。和・洋・中の飲食店が多数入っているので、その日の気分に応じて食事ができます。また、飲食店のほかにも包丁や衣類、調味料などの物販店で買い物を楽しめたり、屋上緑化広場で東京湾を見渡しながら休憩を取ることもできます。

市場内での頼もしい運搬車「ターレ」。現在約1,800台が活躍中! 6街区では、ターレに乗って記念撮影もできます。

5新施設の開業で、場外エリアのにぎわいに期待

かつて市場のあった築地では、近隣に「場外」と呼ばれるエリアがあり、今でも多くの観光客が訪れる観光スポットになっていますが、豊洲市場にも、商業施設と温浴施設を併設した新施設「豊洲 千客万来」※5が、水産仲卸売場棟のある6街区に、令和6年2月に開業される予定です。

築地の伝統を引き継ぎつつ豊洲ならではの新鮮な食材を生かした飲食店や物販店が、江戸の古い街並みを再現したオープンモールに展開されるとのことです。近隣住民の方々をはじめ、国内外からも多くの観光客が訪れることが見込まれており、場外エリアにさらなるにぎわいが生み出されることが期待されています。

※5 東京都が公募した民設民営の施設。

6豊洲市場が取り組んでいる安心・安全・環境への対策

豊洲市場は、首都圏の基幹市場として、築地市場が果たしてきた役割を引き継ぎ、豊富で新鮮な生鮮食料品等の円滑な供給と消費生活の安定を図っています。また、近年、消費者の意識が高まっている食の安全に対しても、施設の特長を生かし、そのニーズに対応しています。

ちなみに、私が豊洲市場を取材させていただいた際に、最初に感じたのは「魚の臭いがまったくしない」ことでした。豊洲市場では、水産卸売場や水産仲卸売場に入場する際に、手洗いなどを行う入場管理室を設置するなど衛生管理への配慮も入念であり、かつ商品特性にあったエリアごとの適温管理に加え、閉鎖型施設として外気・虫・埃の流入抑制に細心の注意を払っています。

また、市場内の施設は、太陽光発電などの自然エネルギーも活用し、屋上の緑化など、環境に配慮した設計となっており、最新の施設で取引が行われていることがよく分かり、大変参考になりました。

ご参考:各項目の冒頭に付した手のイラストは、東京都中央卸売市場で使われている水産と青果の「手やり」(せりで購入したい品物の値段や数量を指で示すこと)です。