トップページ > 取引・表示指導 > 処分事業者等一覧 > 「屋根がはがれそうなところがある」などと消費者宅を訪問し、リフォーム工事を勧誘する事業者に、業務停止命令(3か月) > 相談事例(株式会社スマイルホーム)
更新日:2023年5月31日
令和3年5月、突然ドアホンが鳴ったので、甲がモニターを見ると、Aが1人で甲宅の前に立っていた。Aはドアホン越しに、「近所で屋根塗装の工事をしていて、お宅の屋根がパカパカしてはがれそうなところがあるので、念のため知らせに来ました。」と言った。甲は驚いて、玄関を開けた。Aは、「近所で工事をしている者です。屋根がパカパカしているのが見えたので、念の為に知らせに来ました。」と繰り返し言った。Aは、会社の名前が入ったネームプレートや身分証明書などは持っていなかったし、会社名や名前も名乗らなかった。甲が詳しく教えてほしいと言うと、Aは「それでは親方を呼んできます。」と言い、Bを連れて戻って来た。
Bは、屋根の縁を指さして、「屋根の縁の灰色のところがパカパカしています。」と説明した。Bは、「屋根が傷んでいるようです。見積無料なので、屋根に上がって見てみましょうか。」と言った。甲は、雨漏りしてくるのではないかと不安になり、Bに、「屋根を見てください。」と依頼した。Bは、「近くに車を止めているので、道具を持ってきます。」と言って、どこかに行った。その間に、甲はAに、「近くの工事現場は、どちらですか。」と質問したが、Aは何も答えなかった。
Bは、数分して戻ってくると、1人で屋根に上がった。しばらくしてBは、屋根の上で、縁の部分をめくって見せ、「縁がパカパカしているのはここですよ。はがれちゃうかもしれません。テープで応急処置しておきますね。」と言って、テープを取りに行った。Bは、紙のガムテープを持って戻ってくると屋根に上がり、「こうやって貼りますね。」と言いながら、3~4箇所貼った。
下りてきたBに、甲は屋根の修理を依頼できるか、尋ねた。Bは、工事の金額などを相談しようかと言い、「日を改めて、カタログなど工事の資料を持ってきます。」と言って帰って行った。
翌日、Bは、Aを連れて、甲宅に見積書と工事請負契約書と屋根修理のパンフレットを持ってきた。見積書と工事請負契約書を甲に渡し、見積書を一通り読み上げただけで、詳しい説明はなかった。また、工事請負契約書について、「裏面も読んでおいてください。」と言ったが、裏面に書かれていたクーリング・オフのお知らせなどについて、詳しい説明はしなかった。見積書には、大ざっぱに摘要、数量、単価、金額などが書かれていたが、工事請負契約書には、寸法や商品の種類、名称、型式や個別の数量など工事の内訳を書いた紙は添付されていなかった。甲は、急がされて考える余裕がなかったので、提示された契約内容で、工事請負契約書に署名押印してしまった。
その後、甲は不安になり、複数業者に見積りを取った上で工事を検討したいと思い、他のリフォーム業者に点検を依頼した。数日後、その業者に屋根に上がってもらったところ、「屋根のビスが抜かれている。他のボルトが問題なくちゃんと留まっているのに、ここだけ2本抜かれているのはおかしい。ここだけ自然に抜けるものじゃない。人の手を加えて意図的に抜かないと穴だけ残るはずはない。穴にゴミが入っていないし汚れもない。ボルトが抜かれたところは、劣化がない。恐らくボルトを抜いたのだ。」と言って、ボルト穴の写真を見せてくれた。確かに、屋根のボルトが抜かれていた。また、リフォーム業者は、見積書を見て、「屋根の状態を見た結果、見積書の内容の屋根工事はやる必要はない。なぜならば、雨漏りもなく、部屋の壁は全く問題ないし、外壁にも問題がないからだ。見積書の、屋根にカバーをかける大がかりな工事は必要ない。屋根にガムテープが貼られていたが、このままでは外壁や屋根の塗装がはがれる。やるのだったら養生テープで固定すべきで、同業者からみたら紙のガムテープを貼るなんてありえない。」と言った。
甲は消費生活センターに相談し、クーリング・オフを通知した。
令和4年3月、突然、乙宅のインターホンが鳴り、インターホン越しに、「近所で工事中、屋根の上の金具がふらふらしているのが見えたので、お知らせするよう上司から言われてきました。」と言われた。乙はわけが分からなかったが、屋根に異常があるということなので、玄関のドアを開けたところ、Cが立っていた。Cは会社名や名前は言わなかった。Cは塀の方へ移動して屋根を見上げると、「棟板部のカバーが風で揺れています。」と言った。Cは、「もし不安なら、上司に相談して個人的に応急処置をしますよ。17時頃には終わるので、連絡してください。」と言って、会社名、名前、携帯電話番号を書いたメモを置いて、立ち去った。
夕方、乙が、Cの携帯電話に電話すると、その電話でも屋根の応急処置のことを話すのみで、屋根の修繕工事契約の勧誘が目的であることは言わなかった。
翌日、CがDを連れて乙宅に来た。CとDは梯子で屋根に上がり、数分して下りて来ると、Dが「屋根が大変なことになっています。屋根の棟板の金具が外れているので釘を打たなければならないのですが、棟板が割れているので釘が打てません。応急処置で仮止めしたいんですが、テープはありますか。」と言った。乙は、屋根が大変なことになっていると言われて、不安になった。乙が、自宅にあった白いビニールテープを渡すと、Cは屋根に上がり、何か作業していた。Dは、「屋根の棟板が割れているので屋根の修繕工事が必要です。工事代金が発生しますが、足場は自社で足場を組み立てているし、近くで工事しているので、足場代を安くします。」と言った。さらに、Dは、「工事代金をおよそ出すので待っていてください。樹脂製の棟板は今後割れることはないので。」などと話した。そしてDは、「足場代は、近日中に近所の工事で足場を撤去するので、工事日を指定しなければ、運搬差額で○万円おまけして、全部で○○万円にします。」と屋根工事の金額を言った。
その翌日、CとDが乙宅に来て、見積書の内容を説明し、契約書に氏名等を記入して押印するよう促したので、乙は、契約書に氏名を記入して押印した。
2人が帰った後、乙は、屋根の工事代金が適正なのか確認したいと思い、インターネット検索したところ、複数のサイトに記載されていた屋根工事の標準工事費の平米単価は、Dが見積りした平米単価の半分程度になっていた。そこで、乙は、人件費、材料費、使用機材損料、処理費、経費など可能な範囲で仕様、単位、単価が分かる資料をもらえないかとDに依頼したが、なかなか連絡がなく、後日の説明も納得のいくものではなかったので、屋根工事契約をクーリング・オフすることを伝えた。
令和4年9月、突然、丙宅のドアホンのチャイムが鳴ったので、ドアホンのモニターを見るとEが1人で立っていた。Eは、ドアホン越しに、「近所で屋根の点検をしていた親方が、パカパカしている音が聞こえて振り向いたところ、お宅の屋根からでした。親方は、屋根が壊れるかもしれないので、知らせに行ってこいというので来ました。」と言った。丙は門扉付近まで行き、Eに応対した。
近くで工事している様子がなかったので、丙は、「どこのお宅なのか。」と聞いたが、Eは「個人情報があるので答えられません。」と言った。丙が「どっちの方。」と聞き返したところ、Eは、「そこらへん。」としか言わなかった。Eは丙に、「屋根材が飛んだら近所の壁を壊したりして迷惑が掛かって、大変になるから、親方が行って来いと言ったので来ました。釘一本で直ります。」と言った。そして、Eは、「緊急性があるので親方に閒いてみます。」と言って、電話を架けた。
Eは会社名も名前も名乗らなかったので、電話を終えた頃に、丙はEの名前を尋ねたが、言わなかった。「名刺ください。」と言ったが、Eは、「名刺はありません。」と答えた。丙が、「どこに会社があるの。」と聞いたところ、Eは、「○○から来ました。」とだけ答えた。そこで、玄関にあったメモ用紙とボールペンを渡したところ、Eは、メモ用紙に、会社名と氏名、携帯電話番号を書いた。丙は、この時初めて、Eの氏名と所属する会社名を知った。Eは、「明日、親方と一緒に点検に伺います。」と言って帰って行った。
翌日、EはFと2人で丙宅を訪問してきた。Fは丙に、「近くの工事の合間に来ました。」と言って、名刺を差し出した。丙は、昨日、Eから、釘一本打てば直ると聞いていたことから、短時間で終わると思っていたので、軽い気持ちで、お願いしますと言った。Fは、梯子を掛けて屋根に上がり、10分くらいして下りてきた。Fは、丙の携帯電話に写真4枚と屋根を映した動画を送ってきた。Fは、屋根の釘が抜けてカバーのようなものが浮いている写真2枚、屋根の釘を打った後と思われる写真1枚、屋根の平らな部分を写したと思われる写真1枚を見せながら、「こんな酷い屋根は見たことがない。風で飛ばされたら近所に迷惑がかかる。台風で屋根がやられてしまう。屋根の修理に釘一本だけではだめですね。」と言った。丙は驚き、明日台風が来て、屋根が壊れて他の家などに当たったら大変だと、慌ててしまった。
Fが、「屋根の土台の木が腐っているので釘が打てない。屋根を仮止めしたいので、テープはありませんか。」と言ったので、丙は自宅にあった粘着テープをFに手渡した。Fは屋根に上がり、下りてくると、テープを全部使ったと言った。丙はその言葉を聞いて、屋根がそんなにひどい状態になっているのか、早急に工事しなければ大変だと、焦ってしまった。
丙が修理にいくらかかるかを聞いたところ、Fは、「寸法を測らないと分かりません。会社の社長に動画を見せたら、社長もこんなひどい屋根を見たことがないし、急いでやったほうがいいと言っていました。足場は無理なので、足場なしでやるしかない。その代わり、危険手当がかかります。材料は会社にある分と、その他の現場にもある材料をかき集めてやるので、なるべく早くできるようにします。」と言った。Fは、屋根の寸法を測るため、再度、屋根に上って、数十分たって下りてきた。「材料を選んで、一旦会社に戻って、見積書や工事の資料を持ってきます。」と言い、FとEは帰って行った。
同日の夕方、Fが1人で、見積書と工事請負契約書を持って丙宅に来た。Fは、詳しい説明はしなかった。見積書には大ざっぱに摘要、数量、単価、金額などが書かれていた。また、Fは工事請負契約書を差し出したが、1頁目のみ見せて請負代金総額のみ説明しただけで、裏面のクーリング・オフに関する事項など一切説明しなかった。
丙は、「こんなに高いので払えない。」と言ったが、Fは、工事請負契約書に名前を書いて印鑑を押すよう催促してきた。丙は、不安に思いながらも、急がされて考える余裕がなく、Fに言われるまま、契約書に記入、押印してしまった。
Fが帰った後、丙は心配になり、近所の住人に相談した。すると、「風がない日なのに、そんな大きな音がするはずがない。近所に大工さんがいるから相談した方がいい。」と言ってくれたので、急いで、その大工さんに相談した。大工さんは、「そんなに屋根は壊れていないよ。築年数からみても大丈夫だよ。」と言った。「2階の部屋に雨漏りしたシミはないか。」と尋ねられて、雨漏りしていないことを答えたところ、大工さんは「じゃあ、大したことはないよ。大丈夫だよ。」と言った。
丙は、クーリング・オフの通知書を事業者宛てに送付した。その後、近所の大工さんに紹介された建築会社に屋根を見てもらったところ、「パカパカしているところはない。屋根の土台の木が腐っているところはない。早急な修理は必要ないです。工事をしてもこんな金額にはなりませんよ。」と言われた。
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