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TOKYO景観探訪 - 都内にある歴史的建造物をご紹介

髙安寺 観音堂(府中市)

河岸段丘上に立つ、足利尊氏ゆかりの古刹

 髙安寺は、正式名称を龍門山髙安護国禅寺といい、貞和4年(1348)の創建という古刹である。開基は室町幕府初代将軍の足利尊氏であり、もともとこの地にあった市川山見性寺を再興したという。同寺の等持院という院号は尊氏の法号である「等持院仁山妙義」に由来し、髙安寺という寺号も、尊氏の当初の諱である髙氏に基づくとされている。そんな尊氏ゆかりの同寺は、武蔵国の安国寺として室町幕府の手厚い保護を受け、この地域を代表する大寺院となった。
 同寺は武蔵野台地の南端、府中崖線と呼ばれる河岸段丘上にあり、南側の多摩川やその氾濫平野を見下ろす立地である。そのため、中世以降の合戦で陣が置かれることが多く、たびたび兵火に巻き込まれた。それでも、そんな戦乱の時代を乗り越えて存続し、現在に至るのである。

 髙安寺観音堂は、多摩地区で現存する希少な江戸中期建造の三間堂として、東京都の「特に景観上重要な歴史的建造物」に指定され、府中市指定文化財にもなっている。享保年間(1716-1736)に現在地に再建されたと伝えられるこの観音堂は、桁行三間・梁間三間の入母屋造りであり、垂木や組物、格天井の彩色絵様などは、建築史的にみても貴重である。さらに、尊氏の家紋である「足利二つ引」が記された常香炉などが、同寺の由緒正しさを物語る。そのほか、享和3(1803)年再建の本堂、明治5(1872)年に建てられた山門、安政3(1856)年に建てられた鐘楼も「東京都選定歴史的建造物」に指定されており、見どころは多い。

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所在地
府中市片町二丁目4-1
建設年
享保年間(1716-1736)
設計
不明
規模
木造1階建
最寄駅
京王線・JR南武線「分倍河原」駅