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今月の話題

気をつけましょう!
インターネット社会の情報モラル

兵庫県立大学環境人間学部准教授
竹内 和雄(たけうち かずお)
インターネットは便利ですが、一つ間違えば取り返しのつかないことになります。立ち止まって考える必要があります。

大人も情報モラルを!

ツイッター投稿写真の模写

 のイラスト、何かわかりますか?熊本地震の時に「動物園からライオンが放たれた」とツイッターに投稿し、インターネット上で話題になった写真があります。このイラストは、その写真を学生に模写してもらったものです。後にデマだとわかったのですが、地震で混乱していることに加えてライオンが逃げた…。熊本では大混乱が起きました。
 3~4年前からこの種のいたずら写真がインターネット上で広がり、社会問題になりました。当時は学生がアルバイト先の冷蔵庫に入って撮った写真を投稿するといったことが中心でしたが、この写真は事情が違います。最終的に投稿者が特定され、逮捕されたのは、なんと成人でした。成人ですから新聞等で氏名、居住地まで報道されました。「悪ふざけでやってしまった」との本人のコメントとともに、一部のテレビでは投稿者の顔写真まで流れたそうです。
 情報モラル教育は、これまで主に中学・高校生対象に行われてきました。しかし、これだけ社会全般にインターネットが普及してきた今、大人もこの問題について知識やスキルを身に付けなければならなくなってきました。

最低限必要な情報モラル

 大人がインターネットと向き合うために必要な、最低限の情報モラルをお伝えします。

①お互いに配慮を!

 インターネットでのやりとりは、トラブルに発展することが多いです。面と向かって言えないことは、インターネットでは書かないことが重要です。またスマートフォンは写真撮影、アップ(※インターネットに投稿すること)が簡単です。食事会の写真等を皆の承諾を得ずにアップしてトラブルに発展する例が後を絶ちません。「撮っていい?」「載せていい?」「この写真でいい?」くらいの確認は必要です。

②個人情報の扱いは慎重に!

 インターネットに個人情報を書き込むことでトラブルが生じます。ストーカー被害だけでなく、人生を左右するような大きな事件に発展することも珍しくありません。個人情報は極力、書き込まないようにしましょう。

③悪い人があなたを見ています!

 残念ながら、インターネットを使う人の中には悪い人もいて、いつもだませそうな人を探しています。そういう人がいる前提で、インターネットでは慎重に振る舞う必要があります。特に他の人の個人情報を勝手にアップしてしまう例もあり、慎重な対応が求められます。

動画でのトラブル急増中

 最近、多いのが動画でのトラブルです。スマートフォンの性能が良くなり、簡単に動画撮影、アップが可能になりました。そこでのトラブルが多発しています。
 まず、個人情報の映り込みです。写真をアップするのと同じ感覚で動画を撮影してアップする過程で、様々な個人情報が映り込んでしまいます。風景や建造物から居住地を特定されたり、名刺が映ってしまい、電話番号が知れ渡ってしまった事例も報告されています。これまでの投稿は写真がメインだったため、確認も容易でしたが、動画となると細部にまで、気をつけなければなりません。最近、この種の映り込みからストーカー被害に遭ったり、外出中と知られて空き巣被害に遭うといった被害が後を絶ちません。

だます側も巧妙に(二次被害に気を付けて!)

 「ワンクリック詐欺」をご存じでしょうか。ウェブサイトやメールのURLを一度クリックしただけで、サービスへの入会などの契約成立を宣言され、多額の料金の支払いを求められるという詐欺です。「ワンクリックでは契約は成立しないから無視して大丈夫」…学校教育だけでなく、多くの機会に啓発してきたこともあり、最近、被害は減ってきています。
 その一方で、支払いを求める詐欺メールが届いて心配になり、対処方法を検索する人もいます。例えば、図のような検索結果の場合、皆さんなら、どこに相談しますか?

(図)①アダルト 架空請求 今すぐ解決 [広告]www.●●相談センター ②アダルト 架空請求 消費センター [広告]www.●●サポートセンター ③アダルト 請求 迅速対応 [広告]www.xx.jp/

 先日、ある会で聞くと、①~③は、同じくらいの評価でした。理由を聞くと「①②の相談センター、消費センターは公的機関で安心」「③は『.jp』で、信頼感がある」との声もありました。
 正解は「すべて疑問符がつく」です。よく見ると、どれも冒頭に【広告】とあります。つまり、これは広告であって、必ずしも公的なものではありません。例えば、一般的に知名度が高いのは「消費生活センター」であって「消費センター」ではありません。また「.jp」は日本国内に住所がなければ取得できず、そういう意味では安心ですが、必ずしもこの種の問題への信頼を保障するものではありません。
 検索サイトによっては、「広告」が検索結果の上位に来る場合もあり、被害増加の一因になっていると指摘されています。また、こういう広告を出しているところに相談すると、調査費や解決料を請求される場合があります。最近は、このような二次被害が出ています。もちろん、そういう悪質事業者ばかりではありませんが、注意が必要です。

困ったら相談を

 だます側は、ますます巧妙な手口を使ってくるので、私たちもしっかりした対策が必要です。まずは、不安にならずに正しい相談窓口を知ることです。

電話188 消費者ホットライン

 地方公共団体が設置している最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口などにつながります。

電話#9110 警察相談専用電話

 全国どこからでも、その地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。犯罪に巻き込まれそうな時、頼りになります。

 だます側はあの手この手で、私たちを不安にさせます。私たちもまずは知るべきことを、しっかり知る必要があります。