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今月の話題知って安心!
マイナンバー制度
~個人情報の視点から~

株式会社ディアイティ セキュリティサービス事業部 部長
山田 英史(やまだ えいじ)

 今年の1月よりマイナンバー制度の運用が始まりました。勤務先にご自分や家族のマイナンバーを提示した方もおられると思いますが、それ以外ではあまり利用する機会がないため、制度の理解が進んでいないように感じます。そこで改めて、制度導入においてどのようなメリットがあるのか、また、各家庭でマイナンバーをどのように管理すると良いかを解説します。

マイナンバーは、3つの目的で使います

 一部遅れた地域はあったものの、昨年のうちに各家庭にマイナンバーが印刷された「通知カード」が届いたものと思われます。マイナンバーは、住民票を有するすべての方に対し、1人に1つ発行される12桁の番号です。通知元は区市町村長となります。
 マイナンバーは、正式名称を「社会保障・税番号制度」といいます。名称から想像がつくように、社会保障分野、税分野、災害対策分野の行政手続きに関する3分野で利用されます。現時点では、この3分野以外での通知カードの利用はできませんので、例えばレンタルショップ等で本人確認のために通知カードを使うようなことは認められていません。
 利用する場合の具体例として、会社員では、健康保険、厚生年金、雇用保険の加入・取得手続き、年末調整、扶養控除申告等のために勤務先に提示したり、自営業や会社員で副業がある人が確定申告の際に提示するといった使い方をします。また、金融機関に対しても、支払調書作成や特定口座開設等の手続きのためにマイナンバーを提示します。

マイナンバーのメリット

 政府は、マイナンバーの効果として、①公平・公正な社会の実現、②行政の効率化、③国民の利便性の向上の3つを挙げています。
 ①公平・公正な社会の実現では、所得や行政サービスの受給状況を把握することで、公平な徴税や生活保護などの不正受給を防ぎ、本当に必要な人に支援を行うことができます。
 ②行政の効率化では、各行政機関で管理されている国民の情報を1つの番号で管理することにより、平成19年に発覚した年金問題の時のような、同姓同名の人の情報の取り違えや誤記・漏れを防ぐことが可能になります。
 また、情報の照合などにかかる労力の削減や無駄な業務の削減が期待できます。
 ③国民の利便性の向上では、添付書類の削減など、行政手続きが簡素化されるといった利点が挙げられています。例えば、国民年金の保険料免除申請書を提出する時、今までは、区市町村や公共職業安定所に必要書類を申請・取得し、それら書類を添付して年金事務所に提出する必要がありましたが、マイナンバー制度を使うと、年金事務所に手続きをとるだけで良くなります。
 また、災害時には被災者の所在の把握等を可能にし、被災者生活再建支援金の給付、適切な医療の提供を容易にします。(参考:内閣府 マイナンバー 社会保障・税番号制度が始まります! 入門編)

マイナンバーカードの取得

[見本]マイナンバーカード

 マイナンバー制度の一環として、今年の1月より「マイナンバーカード」の交付が始まっていることはご存じでしょうか。マイナンバーカードは、通知カードと住民基本台帳カードの役割を合わせたものになります。(見本参照)
 マイナンバーカードの表面は、身分証明書として使えます。その他、コンビニなどでの住民票や印鑑登録証明書などの取得、各種民間のオンライン取引、e-Tax(国税電子申告・納税システム)の利用などもできます。また、平成29年1月から「マイナポータル」も開始予定です。マイナポータルは、自宅のパソコン等でウェブ画面を通して、行政機関が自分の情報をいつ、どことやりとりしたのかを確認できるほか、国民健康保険料、年金保険料、介護保険料、各種社会保険料の納付状況の確認、予防接種や健診に関する情報等をいつでも見ることができるサービスです。
 マイナンバーの交付申請は、通知カードに同封された案内に従い、行います。インターネットや郵送などでの申請ができます。マイナンバーカードを取得したら、通知カードは区市町村に返納します。なお、マイナンバーカードの取得は任意です。

[見本]マイナンバーカード

個人情報の観点でのマイナンバーの保護

 マイナンバーは、様々な行政機関が持つ多くの個人情報に結びつくことから、個人情報保護の観点において安全性を心配する声があります。
 まず、マイナンバーと関連付けて管理される個人情報は「特定個人情報」となり、特定個人情報を持つ企業や行政機関は、個人情報保護法と番号法の2つの法律を遵守し、厳格に管理しなければなりません。それに違反すると懲役、罰金が科せられます。
 また、今まで個々の行政機関に管理されていた個人情報が、マイナンバーで一元管理されることで、一度流出事故が発生するとすべての情報が一度に漏えいするのではないかと心配されていますが、実際の情報管理は、従来通り各行政機関に分散して保存・管理されていますので、芋づる式にすべての情報が漏れることはありません。また、行政側も必要な範囲の情報しか見ることはできないようになっています。

マイナンバーは教えない、カードをなくさない

 ここまで述べたように、マイナンバーは重要な個人情報と結びつき、様々な行政手続きに必要となりますので、各自が責任をもって管理・保管しておく必要があります。マイナンバーの管理の要点は、次の2点です。
①マイナンバーは他人に教えない
②カードをなくさない
 現時点においては、行政機関以外がマイナンバーを用いて個人情報を照会することはできないため、マイナンバーだけが他人に知られたとしても即座に個人情報が露呈することはありません。しかし、今後マイナンバーの利用範囲が広がり、利用する団体が増えることで、マイナンバーの誤用や悪用のリスクも高まると予想されます。今のうちから、マイナンバーは必要な手続き以外では教えないようにして、SNS等に書き込んだり、IDやパスワードとして使用しないよう注意しましょう。
 また、マイナンバーは現在、利用機会が少ないこともあり、どこにしまったか忘れることがあるかもしれません。特に子供のマイナンバーは大人以上に利用の機会が少ないため、将来必要となったときにすぐ見つかるように、保護者が責任をもって管理してください。もし、紛失や盗難で通知カードあるいはマイナンバーカードをなくした場合は、速やかに最寄りの警察および住んでいる区市町村へ届け出て再発行の手続きを行ってください。
 マイナンバーカードをなくした場合は、機能停止も行うためにマイナンバーコールセンター(TEL0120-95-0178)にも連絡してください。

マイナンバーに便乗した詐欺に注意

 新しい制度が始まると、それに便乗した詐欺事件が発生します。マイナンバー制度については、次のような詐欺行為が確認されています。

  • ・市役所職員を名乗る者が訪問し、「マイナンバーカードの登録にお金が必要」などと言われ、お金を要求された。
  • ・警察官を名乗る者から電話があり、「マイナンバーの暗証番号が漏れている」「口座の暗証番号も漏れているようだ」「暗証番号は何番か」「キャッシュカードや通帳を回収して確認する」などと言われ、訪問してきた男にキャッシュカード1枚と通帳2通をだまし取られた。
  • ・マイナンバー制度の調査を装い、家族構成や年金受給者かどうかを聞かれた。

 いずれも、金銭を要求するか個人情報を聞き出そうとするものです。まず、知っておかないといけないのは、マイナンバーの通知や利用手続きで、国や自治体が訪問・電話・メール等で、口座番号・資産・年金等の状況を聞くことは無いということです。お年寄りが被害を受けやすいので、身内や知り合いのお年寄りには注意を促すことが望まれます。
 今後、マイナンバーの利用拡大が始まると、それに関連した新たな詐欺が発生する可能性があります。時々、マイナンバー制度に関する新しい情報を入手し、利用範囲や手続きを確認するなどして、マイナンバーを適切に管理するように心がけてください。

【参考Webサイト】

●くらしに役立つバックナンバー