更新日:2020年8月12日
2018年11月13日~16日フランス共和国・ベルサイユ国際会議場において開催された第26回国際度量衡総会(CGPM)において、国際単位系(SI)の基本7単位のうち、質量(キログラム:kg)、電流(アンペア:A)、温度(ケルビン:K)及び物質量(モル:mol)の4つの定義を改定することが承認され、2019年5月20日の国際計量記念日から施行されました。
特に質量の定義キログラムは、1889年(明治22年)にメートル条約による第1回国際度量衡総会でキログラム原器による定義が承認されて以来、130年ぶりの定義の改定です。今回の改定で、キログラム原器という人工物の質量という定義からプランク定数という基礎物理定数を使用した定義になりますが、これには日本の国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究成果が大きく貢献しています。
また、基本7単位のうち、今回定義に変更のない長さ(メートル)、時間(秒)及び光度(カンデラ)については、今回変更となった4単位に合わせて、その表現方法を変更しています。
日本の計量法では法定計量単位にSI単位を採用しています。そのため、今回定義が改定された4つの単位については、2019年5月17日の計量単位令改正により下表のとおり定義を変更して5月20日から施行されました。
今回の定義の改定は、計量単位をこれまでの定義より高精度で安定して再現するために行うもので、これまで使用してきた単位が根本から変わるということではありません。そのため、私たちの日常生活において影響は一切受けませんが、将来的にはナノテクノロジーなどの進展による製薬技術の向上など様々な分野で貢献することが期待されています。
国際キログラム原器(旧称)は、高さ・直径が約39mmの円柱形の形状をした白金・イリジウム合金製の分銅です。原器としての役割を終えた現在も、フランスにある国際度量衡局に保管されています。
日本には、国際キログラム原器の複製の一つであるNo.6原器が1889年(明治22年)に配布され、現在は茨城県つくば市の国立研究開発法人産業技術総合研究所に保管されています。この原器は130年間にわたり日本の質量1キログラムの原器として位置づけられ、定期的に国際キログラム原器と質量を比較しながら使用されてきました。2019年の定義改定により、原器という立場から今後は特定標準器に位置づけを変えて、引き続き法定計量で使用されています。
◆ 時間 表現変更
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秒 (記号は s) は時間のSI単位であり、セシウム周波数 ΔνCs、即ち、セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位 Hz ( s−1 に等しい)で表したときに、その数値を9 192 631 770と定めることによって定義される。 |
旧定義:秒はセシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍の継続時間である。 |
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◆ 長さ 表現変更
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メートル (記号は m) は長さのSI単位であり、真空中の光の速さ c を単位 m s−1 で表したときに、その数値を299 792 458と定めることによって定義される。ここで、秒は ΔνCsによって定義される。 |
旧定義:メートルは、1秒の299 792 458 分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである。 |
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◆ 質量 新定義 |
キログラム (記号は kg) は質量のSI単位であり、プランク定数 h を単位 J s (kg m2 s−1 に等しい)で表したときに、その数値を6.626 070 15×10−34 と定めることによって定義される。ここで、メートル及び秒は、それぞれ c 及びΔνCsを用いて定義される。 |
旧定義:キログラムは質量の単位であって、単位の大きさは国際キログラム原器の質量に等しい。 |
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◆ 電流 新定義 |
アンペア (記号は A) は電流のSI単位であり、電気素量 e を単位 C ( A s に等しい)で表したときに、その数値を1.602 176 634×10−19 と定めることによって定義される。ここで、秒は ΔνCsによって定義される。 |
旧定義:アンペアは、真空中に1メートルの間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い二本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ1メートルにつき2×10-7ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流である。 |
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◆ 温度 新定義 |
ケルビン (記号は K) は熱力学温度のSI単位であり、ボルツマン定数 k を単位 J K−1 ( kg m2 s−2 K−1 に等しい)で表したときに、その数値を1.380 649×10−23と定めることによって定義される。ここで、キログラム、メートル、秒はそれぞれ h 、 c 、ΔνCs を用いて定義される。 |
旧定義:熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。 |
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◆ 物質量 新定義 |
モル (記号は mol) は物質量のSI単位であり、1 モルには、厳密に6.022 140 76×1023 の要素粒子が含まれる。この数は、アボガドロ定数 NAを単位mol−1で表した時の数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。 系の物質量(記号は n )は、特定された要素粒子の数の尺度である。要素粒子は、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子、あるいは粒子の集合体のいずれかであってもよい。 |
旧定義:モルは0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物質量であり、単位の記号はmolである。 |
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◆ 光度 表現変更 |
カンデラ (記号は cd) は所定の方向における光度のSI単位であり、周波数 540×1012 Hz の単色放射の視感効果度 Kcdを単位 lm W−1( cd sr W−1 あるいは cd sr kg−1 m−2 s3 に等しい)で表したときに、その数値を683と定めることによって定義される。ここで、キログラム、メートル、秒はそれぞれ、 h 、 c 、ΔνCsによって定義される。 |
旧定義:カンデラは、周波数540×1012 ヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度である |
SI単位全般及び定義の改定について詳細をお知りになりたい方は、産業技術総合研究所計量標準総合センターの「新時代を迎える計量基本単位―国際単位系(SI)定義改定―」のサイトをご覧ください。
物象の |
計量単位 | 定 義 |
長さ | メートル | 真空中で1秒間の299,792,458分の1の時間に光が進む行程の長さ |
質量 | キログラム | 新定義:プランク定数を10の34乗分の6.62607015ジュール秒とすることによって定まる質量 |
旧定義:国際キログラム原器の質量 | ||
グラム | キログラムの1000分の1 | |
トン | キログラムの1000倍 | |
時間 | 秒 | セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍に等しい時間 |
分 | 秒の60倍 | |
時 | 秒の3,600倍 | |
電流 | アンペア | 新定義:電気素量を10の19乗分の1.602176634クーロンとすることによって定まる電流 |
旧定義:真空中に1メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い二本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき1000万分の2ニュートンの力を及ぼし合う直流の電流又はこれで定義したアンペアで表した瞬時値の2乗の1周期平均の平方根が1である交流の電流 | ||
温度 | ケルビン、セルシウス度又は度 | 新定義:ボルツマン定数を10の23乗分の1.380649ジュール毎ケルビンとすることによって定まる温度(ケルビンで表される温度は熱力学温度とし、セルシウス度又は度で表される温度はセルシウス温度(ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの)とする。) |
旧定義:水の三重点の熱力学温度の273.16分の1(ケルビンで表される温度は熱力学温度とし、セルシウス度又は度で表される温度はセルシウス温度(ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの)とする。) | ||
物質量 | モル | 新定義:6.02214076に10の23乗を乗じた数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量 |
旧定義:0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量 | ||
光度 | カンデラ | 放射強度683分の1ワット毎ステラジアンで540兆ヘルツの単色光を放射する光源のその放射の方向における光度(540兆ヘルツの単色光と異なる光については、通商産業省令で定める。) |
お問い合わせ先
東京都計量検定所管理指導課企画調整担当
電話番号:03-5617-6643
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