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TOKYO景観探訪 - 都内にある歴史的建造物をご紹介

池上本門寺 五重塔(大田区)

関東有数の巨刹にそびえる、徳川秀忠ゆかりの国重文

大田区池上の小高い台地上に建つ日蓮宗の大本山、池上本門寺。日蓮聖人が弘安5(1282)年に入滅(臨終)された霊跡として、730年を超える歴史のある巨刹だ。さらに、信仰の意味合いだけでなく、遊山地としての歴史も深い。江戸後期に発刊された観光ガイドである『江戸名所図会』において、寺周辺と広大な境内の絵図を6ページにわたって掲載しているなど、近代以前からの名勝地である。

表参道から総門をくぐると、此経難持坂(しきょうなんじざか)という96段の石段坂が目の前に現れる。この石段は、幕末に歌川広重(二代)によって描かれた浮世絵『江戸自慢三十六興』の「池上本門寺会式(えしき)」にも登場する。現在、大田区の指定有形文化財であり、もともとは戦国~江戸時代に活躍した加藤清正が寄進したものと伝わる。なお、会式とは日蓮聖人が亡くなった10月13日前後に行われる法要であり、当寺には毎年30万人を超える参拝者が訪れる。

階段上にある威風堂々とした仁王門を抜け、大堂を正面に右手へ進んだ墓地にそびえるのが、慶長12(1607)年建立された五重塔だ。関東に4基現存する幕末以前建立の五重塔のうち最も古く、2代将軍徳川秀忠の病気平癒祈願が成就したお礼として、幕府によって建てられた当時第一級の塔である。その後、移築や数度の修理をへながら遺り、明治44(1911)年には国重要文化財に指定された。

太平洋戦争末期の城南大空襲により、当寺も多大な被害を受けた。歴史ある堂宇の多くが焼失し、貴重な文化財も多数失われてしまった。しかし、この五重塔は幸いにも被害を免れ、焼け野原に建つその姿は地域の人々に希望を与えた。平成13年には全面修復が完了したこの極めて貴重な建築物が、末永く歴史を刻んでいくことを願う。

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所在地
大田区池上一丁目1-1
建設年
慶長12(1607)年
設計
不明
規模
三間 五重塔婆
最寄駅
東急池上線「池上」駅、都営浅草線「西馬込」駅