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読者レポート

介護ロボットの進化

読者委員 髙橋 絹子たかはし きぬこ

 少子高齢化が進む中、介護の担い手が不足していく反面、被介護者はこれからますます増えていくと思われます。その不足している部分を補うためにも介護ロボットは日々開発されています。今回は介護ロボットとはどのようなものか、介護の現場ではどのように介護ロボットを使用しているのかについて、社会福祉法人善光会理事 宮本隆史さんにお話を伺った後、特別養護老人ホームなどが入る複合福祉施設「サンタフェガーデンヒルズ」内をご案内いただきました。

髙橋委員(左)と善光会の宮本氏(右)

想像と違った介護ロボット

 私は、介護ロボットという言葉から、2足歩行をしているようなロボットや、介護スタッフの腰などに装着して、介護の負担を軽減させる機器を想像していました。実際には介護スタッフだけではなく利用者の体につけるリハビリ用の機器や、ネットワークシステムなども「介護ロボット」に含まれるということがわかり、想像していたものと全く違っていたので、とても驚きました。

介護の現場で活躍するロボット

 実際に介護の各場面で活躍するロボットをご紹介します。

出勤時(骨伝導型イヤフォン)

 介護スタッフは、朝出勤すると、まず骨伝導型のイヤフォンを装着します。このイヤフォンとスマートフォンを用いることで、同じフロアの介護スタッフ同士がいつでも会話できるようになります。これも介護ロボットの位置づけです。今までは毎朝、スタッフ全員が集合してミーティングをしていたのですが、その必要がないため効率が良いそうです。また、「人手が足らないので誰か手伝って」と伝えると、手が空いているスタッフがすぐに駆けつけてくれるようになりました。全員がいつでもネットワークでつながっていることから、作業効率が格段に上がったそうです。骨伝導型のイヤフォンは耳をふさがないため、利用者の声を聞き逃す心配もないとのことで、とてもよくできたシステムだと感じました。

リハビリ(自立支援ロボット)

 腕に装着するタイプのリハビリ支援機器です。腕に貼った電極が、体を動かすときに脳から筋肉へ送られる微弱な信号(電位信号)を読み取ることで、機器が反応して筋肉の収縮をサポートします。これにより、自身では動かせなかった腕が曲げられるようになります。また付属のコントローラには筋電図の波形などが表示されます。利用者は、実際に腕が曲がったり、筋電図の波形を見ることによって、「動かせた!」という喜びにつながるとのことでした。介護スタッフも、どれくらい筋肉が収縮しているかなどを知ることができます。「利用者様に楽しんでリハビリをしてもらいたいのが一番です」という介護スタッフの言葉が印象的でした。

トイレ(排泄予測センサー)

 利用者の下腹部に装着したセンサーにより、膀胱の尿の量を把握できる機器です。排尿のタイミングを察知できるため、個人に合わせて必要なときにトイレの声掛けができるようになったそうです。機器も小さいので、利用者の負担にならないように考えられている点が良いと思いました。

レクリエーション(コミュニケーションロボット)

 テレビと連動し、写真や歌などを流して利用者に情報を提供するコミュニケーションロボットの実演を拝見しました。フラフープの写真が写されると、利用者から「昔、やったよ」と声が上がり、それをきっかけにスタッフと会話が弾んでいました。また、童謡が流れると利用者の皆さんが一緒に口ずさむなど、介護の一端を担っている様子が伺えました。介護スタッフには様々な業務があり、一人の利用者と関わる時間も限られていますが、コミュニケーションロボットのおかげで利用者がレクリエーションを楽しむ間に、他の方のケアにあたることもできるということでした。

睡眠(夜間の見守りシステム)

 ベッドの下にセンサーが入っており、利用者の睡眠状態をパソコンの画面上で把握できるシステムです。各利用者の睡眠時間帯や睡眠量が記録されるため、一人一人に合わせたケアをするのに役立ちます。私も寝つきが悪いなど気になることがあるので、客観的に計測できるセンサーが欲しくなりました。

取材を終えて

 今回訪問したサンタフェガーデンヒルズは羽田空港の隣にあり、飛行場と海をのぞむ、広々とした素敵な施設でした。屋上や屋内には野菜や花を育てるスペースがあり、野菜を育てることを楽しみにしている利用者も多く、認知症予防にも役立っているとのことでした。
 また、介護スタッフが夜間に施設内を移動する際には、電動の立ち乗り二輪車を活用するなど、最新のシステムを揃えていることがよくわかりました。さらに、利用者に関するデータを集約できるようなシステムも開発中とのことでした。
 介護ロボットを現場で活用するためには、今までのやり方を変える必要があります。導入当初は介護スタッフから様々な意見もあったようですが、介護ロボットの活用で業務が楽になったと実感し、今では「次は、こんなロボットが入るよ」と前向きになったとのことです。
 「いくらロボットが働いて便利になっても、最終的には人間同士のコミュニケーションです」という介護スタッフの言葉が心に残りましたし、介護ロボットを活用することによって、さらなるケアの向上につながっていってほしいと願います。

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