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健康食品の被害に遭わないために

弁護士 船江 莉佳

1.はじめに

2024年に「紅麹コレステヘルプ」など機能性表示食品を摂取した消費者らに腎疾患、浮腫、倦怠感、さらには死亡の健康被害が発生したことは記憶に新しいところです。

健康志向の高まりでいわゆる健康食品の市場は拡大しており、子ども向け商品も多く販売されています。痩せてキレイになりたい、筋肉を増強したい、身長を伸ばしたい、集中力をつけて勉強ができるようになりたいといった、子どもにとって魅力的な効果を匂わせる商品や、子どもの偏食や栄養不足を心配する保護者向けの商品もあります。

しかし、健康食品の中には、安全性や機能性が事業者任せで、実際の効果が明らかではないものが多いだけでなく、様々な健康被害も発生しています。

本来、健康の維持・増進の基本は、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」であり、安易に健康食品を利用することは避けるべきです。

本稿では、いわゆる健康食品とはどういうものか、どのような被害があるのか、どのような点に注意するべきなのかを見ていきます。

2.「健康食品」と呼ばれるもの

(1)いわゆる「健康食品」とは

法律上の定義はありませんが、医薬品以外で経口的に摂取される「健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品」のことです。つまり、医薬品のような病気の治療や予防の効果はなく、医薬品の代わりにはなりません。

図1

健康食品の分類

また、いわゆる「健康食品」は、厳格な規制の下での製造・販売、品質管理を行う医薬品とは異なるため、その安全性や有効性、品質規格などが十分に確保されているとは言い難く、利用には慎重になる必要があります。

(2)いわゆる「健康食品」の分類

まず、機能性(健康維持・増進に関する機能)の表示の可否で分類できます。【図1】

国が一定のルールを定めて機能性の表示が認められているものが「保健機能食品」です。保健機能食品は、特定保健用食品(トクホ)機能性表示食品、栄養機能食品の3つに分類されます。

他方、機能性の表示が認められていないものが「その他のいわゆる「健康食品」になります。その他のいわゆる「健康食品」の中には、包装に「栄養補助食品」栄養強化食品」健康飲料」「サプリメント」などと記載したり、あたかも魅力的な効果があるかのように匂わせる包装デザインや広告をしたりしている商品をよく見かけますので、注意が必要です。

また、食品衛生法における健康被害情報の提供について、その他のいわゆる「健康食品」は、特定保健用食品や機能性表示食品の義務化とは異なり努力義務となっています。

さらに、医薬品成分が添加された製品(未承認無許可医薬品」は、行政による取り締まりの対象となりますが、ネット上で、その他のいわゆる「健康食品」として販売されていることもあります。

(3)栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品(トクホ)の特徴【下表】

これらの3つの保健機能食品は、いずれも機能性の表示ができますが、販売までの申請手続きや科学的根拠の審査などが異なっています。

まず、栄養機能食品は、既に科学的根拠が確認された栄養成分(ビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類)を対象とします。国による個別の許可申請や審査を受ける必要はなく、これらの栄養成分を一定の基準量含んでいれば、国が定めた定型文によって機能性を表示できます(自己認証制)

また、特定保健用食品(トクホ)は、その食品の機能性や疾病リスクの低減に資する旨の表示をするためには、その表示について消費者庁長官の許可を受けなければならず、表示の許可にあたっては食品ごとに有効性や安全性について国の審査を受ける必要があります(個別許可制)審査を経て、許可を得たものだけがトクホとして販売可能です。

他方、機能性表示食品は、2015年に新設され、販売にあたっての安全性及び機能性の根拠はあくまでも事業者の自己責任で行うもので、届出で足り(届出制)国の審査は必要ありません。このため事業者にとっては、市場参入のハードルが低く、機能性表示食品の市場は急速に拡大しています。紅麹関連製品による健康被害を踏まえて、一部の機能性表示食品の製造・品質管理が見直される等しましたが、特定保健用食品に比べるとやはり信頼性が低いと言わざるを得ません。

【表】いわゆる「健康食品」の比較

その他の
いわゆる「健康食品」
保健機能食品
栄養機能食品 機能性表示食品 特定保健用食品(トクホ)
手続き なし 自己認証制 届出制 個別許可制
機能性の表示 不可 可(国が定めた定型文) 可(事業者の自己責任) 可(消費者庁長官の許可が必要)
マーク なし なし マークはないが、
商品に機能性表示食品
表示が必要
あり 消費者庁許可 特定保護用食品マーク
有効性の
科学的根拠
(定められていない) すでに確認済み 事業者の自己責任 国の個別審査

3.サプリメントの危険性

いわゆる健康食品の形状は様々で、医薬品に似た錠剤やカプセル、粉末、シロップなどの薬と同じような形状のもの(本稿では「サプリメント」といいます。から、飲料やお菓子、野菜などの食材まであります。子ども向けの商品では、チュアブル錠(錠剤の一種で、口腔内で噛み砕いて服用する)顆粒(水に溶かしてジュースのように飲める)や、お菓子と同じようなドロップ、グミもあり、子どもがおやつ感覚で摂ることのできるものが多くあります。

サプリメントには、過剰摂取につながりやすい危険性があります。特定の成分が濃縮されていることで、通常の食事よりも過剰な量を摂取してしまったり、その形状から手軽に服用できるが故に、長期間の服用がしやすいため、健康被害につながりやすいのです。

また、サプリメントには、外観等では品質を判別できないという特徴があります。日常の食生活で口にする生鮮・加工食品の場合は、見た目や匂い、味の違いによって、品質の劣化などの異常や異物の混入に気づくことができます。しかし、サプリメントでは、外観等から異常に気付くことは非常に困難です。さらに、消費者庁が毎年実施している買上調査では表示どおりに成分が含有されていない製品があることが判明していますが、外観だけで表示どおりの成分が含有されているのかを確認することはまずできません。

4.健康被害

(1)様々な健康被害

いわゆる健康食品は、食品だから安全」天然」から安全」などと思われがちですが、それらは誤解で、実は様々な健康被害が報告されています。

また、健康食品は、多くの場合「健康な成人」を対象にしていますので、子どもや高齢者、妊婦、病気の人が健康食品を摂ることには注意が必要です。

特に、子どもは、からだが発達段階のため、大人ではなんでもなくても子どもでは害が出てしまうということがあり、実際にサプリメント利用後に何らかの体調不良を経験した人の割合は、子どもが一番多かったという報告もあります。また、たとえ成長や発達に必要なビタミンやミネラルであっても、摂りすぎによって中毒を生じるものもあります。日本国内で生活している多くの子どもたちにおいて、健康食品で栄養素を補給しなければならない状況に陥っている可能性は非常に低いと考えられます。

(2) 全国の消費生活センター等に寄せられる「危害情報」

PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の「危害情報」において、健康食品に関するものは上位に入っています。特に近年は、ダイエットをうたった健康食品による健康被害が多く見られます。

危害の内訳をみると、便秘や下痢、胃痛などの「消化器障害」が最も多く、皮膚の発疹、かぶれ、シミなどの「皮膚障害」や「その他の傷病及び症状」呼吸器障害」などがあります。

健康食品の被害は、便秘や下痢などの比較的軽症のものから、肝障害、腎不全などの重いもの、さらに死亡に至るものまで様々です。

(3)具体的な被害事例

子どもや若者の関心が高い健康食品の被害事例をいくつか紹介します。

まず、バストアップやスタイルアップ等の美容を目的とし、プエラリア・ミリフィカというマメ科のクズ(葛)と同属の植物の貯蔵根が原材料として配合された健康食品では、消化器障害や皮膚障害といった一般の健康食品でもよくみられる危害事例のほかに、月経不順や不正出血といった、女性特有の生理作用に影響を及ぼしていると考えられる特徴的な危害事例が多く見受けられました。現在、プエラリア・ミリフィカを含む商品は、指定成分等含有食品」の表示が義務付けられ販売されています。

他には以下のような事例もあります。

  • SNSで知ったダイエットゼリーを購入して食べたところ、吐き気や動悸がした
  • 動画投稿サイトの広告を見て筋肉増強サプリメントを購入して飲んだところ、発疹がでた

また、服用後少し時間が経過してから被害が発生したり、一定期間服用し続けて初めて被害が発生する事例もあります。

  • 9歳の子どもがDHA・EPA含有サプリメントを数日間服用した約1か月後に薬物性肝障害を発症
  • 「成長促進」をうたったスピルリナ(※)含有サプリメントを1年間毎日飲んでいたところ、アレルギー性肝障害を発症 (※)藻類の一種
  • ネット通販で購入した海外事業者が製造・販売する鉄サプリの長期使用で鉄過剰症を発症
  • インターネットで花粉症に効くという健康茶を買い2週間程飲み、いったん飲むのを止めたら、倦怠感や微熱が出た(その後、この健康茶は医薬品成分のステロイドが入った未承認無許可医薬品であったことが判明)

(4)医薬品との併用による被害

医薬品と健康食品を併用することで、医薬品の効果が弱まったり、逆に強くなりすぎて副作用が出たり、病状が悪化したりする場合があります。

治療のため医薬品を服用している場合に健康食品を併せて摂ることについては、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

5.健康食品の根拠のない表示や広告などの問題点

包装や広告のキャッチコピー、写真や絵やグラフ、体験談などで、あたかも魅力的な効果があるかのように匂わせる商品が多くあります。

国は、食品の安全確保と消費者の適切な食品選択等のために「健康増進法」医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」不当景品類及び不当表示防止法」等で規制をしています。

しかし、魅力的な効果を匂わせる巧妙な表示や広告はあとを絶ちませんので、消費者は安直に信じないようにする必要があります。

いわゆる「健康食品」では、医薬品的効能効果を表示することはできないので、ニキビ予防」感染症予防」月経前症候群の症状の緩和」等の表示をしている商品には注意が必要です。

また、美味しく食べて楽々ダイエット」等の表記を裏付ける合理的根拠があるのか、ユーザー満足度98%」口コミ評価第1位」顧客満足度第1位」等の表記には客観的な実証があるのかを確認する必要があります。

さらに、例えばスリムな女性のイラストや写真等とともに商品説明として、酵素のパワーで消化と代謝を促進 脂肪を溜めない!」解毒作用」などとうたったり、お客様の声として「約半年間で○kgの減量に成功」食事制限一切なし」などと表示したり、表示全体からみて消費者があたかも当該商品を摂るだけで期待する効果が得られるような誤認を招くおそれのある表示の商品には特に注意が必要です。

6.被害に遭わないよう生徒に伝えたいこと

本来、健康の維持・増進の基本は、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」であり、安易に健康食品で栄養の偏りや生活の乱れを解決しようとすることは避けるべきです。日頃の食事、運動、休養の改善を図ることが大切です。

ダイエットや筋力増強効果を期待させる食品には特に注意してください。死亡事例もあります。体重を減らす効果をうたうダイエット食品は、人で安全性が実証されているものはほとんどありません。

以上を踏まえた上で、やむを得ず栄養素の不足が生じるときは、あくまでも補助的なものとして健康食品を利用するにとどめましょう。

健康食品を利用する場合の注意すべきポイントは以下のとおりです。購入前、購入時、利用開始後に分けて、まとめておきます。

購入する前に

  • 1健康食品を利用する選択をする前に、今の自分にとって本当に必要か考える
  • 2自分自身で製品中に含まれている成分の安全性と有効性に関する情報(科学的根拠)や健康被害の情報を、信頼できる情報源から入手して、その健康食品を利用するか否か判断する
    (情報源の例:食品安全委員会、厚生労働省、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所など)
  • 3広告のキャッチコピーや利用者の体験談、友人や知人からの情報だけで利用することを選択しない

購入するとき

  • 4製品の品質などを確認するための、製品中の個別成分の含有量、製造者や問い合わせ先が明記されていることを確認する

利用するとき

  • 5過剰摂取とならないように注意する(健康食品の摂り過ぎだけでなく、通常の食事で摂取している分も含めて考える必要がある)
  • 6何を、いつ、どのくらい摂ったかと、効果や体調の変化を記録する
  • 7思わぬ健康被害を受けることがあるので、健康食品の複数利用はしない
  • 8自己判断での医薬品との併用は避け、不調を感じたらすぐに摂るのを中止し、医師・薬剤師などの専門家に相談する

食品安全委員会

「いわゆる「健康食品」に関するメッセージ」

食品安全委員会は、消費者が健康食品の利用を考えるときに、まずそれが自分にとって安全かどうかを見極めるための考え方を「いわゆる「健康食品」に関するメッセージ」として示しています。こちらも是非お伝えください。

https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.data/kenkosyokuhin_message.pdf

(参考資料)

  • 食品安全委員会「いわゆる「健康食品」に関するメッセージ」
  • 消費者庁(2017)「健康食品Q&A」,「健康食品とは」
  • 古江晋也「健康食品市場の半世紀」農林金融2025年4月号 第78巻 第4号 通巻950号 32〜42ページ
  • 小林悦子他:The prevalence of dietary supplement use among elementary, junior high,and high school school students:AnationwidesurveyinJapan. Nutrients,10(9):1176,2018
  • 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報」サイト・コラム「第7回」第10回」第13回」第27回」第30回」
  • 国民生活センター「全国の危害・危険情報の状況-PIO-NETより-」2022年度、2023年度、2024年度
  • 国民生活センター「海外事業者の鉄サプリメントの長期使用により鉄過剰症を発症」2024年12月25日報道発表
  • 金子佳右他「スピルリナ含有サプリメントによる肝障害が疑われた一例」昭和学士会誌第84巻第2号156-162頁、2024