ここから本文です

令和元年度「教員のための消費者教育講座」実施報告

東京都消費生活総合センター 活動推進課

東京都消費生活総合センターでは、毎年度、小・中・高等学校、特別支援学校の教職員を対象とした「教員のための消費者教育講座」を開催しています。今年度も7月22日から8月22日の間、16テーマ・全32回(飯田橋・立川・相模原会場)の講座を開催しました。

毎年好評の衣・食・住の講座に加え、民法の成年年齢引下げや、アクティブ・ラーニング型教材を使用したワークショップ等のバラエティに富んだ講座を実施し、延べ1,187名の先生方に参加して頂きました。

講義内容の一部をご紹介します

18歳成人時代における消費者教育の実践

白熱したディスカッションの様子

講師
弁護士 平澤 慎一
都立国際高校 主任教諭 宮崎 三喜男
都立蒲田高校 主任教諭 淺川 貴広

前半は、公民科の宮崎・淺川講師が、限られた授業時間で効果的な学習を図るためのヒントとして、他教科と連携した授業実践事例を紹介しました。続いて平澤弁護士が、民法の成年年齢引下げを踏まえ、「今後、学校現場でどのような課題があるか」を解説しました。後半のワークショップは、「学校で実践する場合の課題と解決策は何か」、「今後、どんな授業をしたいか」をグループごとに話し合いました。2022年の4月に施行される「18歳成人」への対応に戸惑いながらも、積極的なディスカッションを行い、今後の授業に生かそうとする参加者の様子が伺えました。

受講者の感想より】

  • 実際の現場で活躍されている先生の取り組みを具体的に教えて頂き、とても良かったです。
  • 公民科と家庭科の教科の連携について、他校の先生方と意見交換ができました。新たな視点を得たり、参考になる事例を知ったりと有益な時間でした。
  • 消費者教育の重要性を改めて再認識することができました。今後は授業を見直し、印象に残る内容を作りたいです。

色覚の多様性への理解を深め、暮らしやすい社会の実現へ

「色が見える仕組み」についての解説

講師
NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構 副理事長 岡部 正隆

「40人学級には、色弱の生徒が1人いる」と言われています。カラーユニバーサルデザインの普及活動を続ける講師が、「色弱の生徒がどのような色を見て、どんなことに困っているか」について、ご自身も色弱である経験を交えて解説しました。色弱の生徒は、「袋の中に緑色のあめ玉は何個入っているか」という問題に答えられません。「問題文に色の名前を書いたり、模様や形状で差をつける」という実践的な工夫の紹介などを通じ、学校での配慮と指導方法について多くの学びがありました。また、色使いをシミュレーションできるWEBアプリや、色弱の生徒が判別可能なチョークの紹介など、参加者の行動の起点にもなる貴重な講座となりました。

受講者の感想より】

  • 色弱の生徒がどのように見えているのか、実際に分かってとても良かったと思います。生徒に分かり易い教材作りを心掛けたいと思います。
  • 色弱の生徒がこれだけ多くいることに驚きました。全教員が知ることが必要だと思います。医学的な説明もあり、とても良い講義でした。

アクティブ・ラーニング型教材「お金のキホン」を使った「家計管理」の授業を体験!

参加者が家計管理アドバイザーになって、一人暮らしのプランを考えるワーク

講師
学校法人 桐蔭学園 教諭 佐藤 誠紀

桐蔭学園では全ての教科でアクティブ・ラーニングを実施しています。同校の家庭科教諭である講師の指導で、「家計管理アドバイザーになる」、「お金と生活というテーマで質問を作る」という2つのアクティブ・ラーニング型授業を体験しました。「2割程度の授業をアクティブ・ラーニング型の授業に変えてみる」、「グループワークの前後には、個人で考えたり振り返ったりする時間を作り、個⇒協働⇒個という授業の流れをつくる」というポイント紹介に、納得する参加者の様子が伺えました。

受講者の感想より】

  • 生徒が主体的に学ぶという点で、質問作りはとても有効だと思いました。先生の話し方が上手で、そういった点も授業作りには大切だと感じました。
  • 我々もアクティブ・ラーニングできました。意見交換は楽しいです。生徒にも還元したいです。

「子供や若者に多い商品・サービスに関わる事故」と商品テスト施設の見学

水で膨らむ樹脂ボール

講師
独立行政法人 国民生活センター 商品テスト部 小坂 潤子

日常生活の思わぬところに製品事故は潜んでいます。消費生活センターなどに寄せられた相談を基に、商品テストを行っている同センターの相模原事務所を訪問しました。前半は、水で膨らむ樹脂ボールや強力磁石など、事故が発生した製品等を手に取った上で、具体的な事故事例の説明を聞きました。参加者は思わぬところで事故が起きることに驚いていました。後半のテスト施設見学では、ガスコンロ付近でスプレー缶を噴射する実験などを見学し、火災に繋がる危険性を身を持って体験しました。被害に遭った時は、「次の被害を防ぐためにも、消費生活センターに相談する」ことの大切さを実感できる講座でした。

受講者の感想より】

  • 知ることの大切さを改めて感じました。また、被害に遭ったときにしっかりと行動する必要性を強く感じました。
  • 施設見学では、実験の様子やその趣旨も聞けて理解が深まりました。

機能性繊維を知って、商品選択力をアップ!

乾燥した布と濡れた布の保温性を調べる実験

講師
日本女子大学家政学部通信教育課程 生活芸術学科 特任教授 工藤 千草

衣料品店には、「吸湿速乾」「形態安定」「紫外線遮蔽」などの機能を掲げる衣類が溢れています。繊維の解説と実験を通し、目的に合った商品選択をする為のポイントを学びました。授業で簡単に実施出来て、短時間で結果がわかる6種類の実験を通し、深い理解が得られる体験型講座になりました。

受講者の感想より】

  • 実感を伴って理解できたからこそ、日常生活で学んだ視点から商品を選ぶ時に自然と考えられるようになると思います。授業でも実験を取り入れながら楽しく学んでいこうと思いました。
  • 濡れている衣類を着続けているとどれ位体温が下がるかという実験は、家庭科のみでなく保健の授業や特別支援学校での生活の授業でも効果があると思いました。ウォームビズやクールビズ、機能性衣料等、様々な効果をうたった衣料が溢れている中で、どのような表示を見て肌着を買えば良いか大変勉強になりました。
各講座の受講者数
No. 分野 講座テーマ 受講者数
1 概論 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の消費者教育の実践方法 96
2 消費者市民社会 消費者の声が社会に影響を与える消費者市民社会 〜批判的思考と批判の違いについて考えよう〜 46
3 消費者教育 民法の成年年齢引下げに伴う学校への影響と学校で行いたい消費者教育 111
4 消費者教育 18歳成人時代における消費者教育の実践 84
5 契約 東京都に寄せられる若者相談事例と解決方法を学ぼう 68
6 機能性繊維を知って、商品選択力をアップ! 98
7 正しく知ろう!食品の安全 〜食品中の放射性物質に関するリスクコミュニケーション〜 66
8 ユニバーサルデザイン 色覚の多様性への理解を深め、暮らしやすい社会の実現へ 130
9 環境と経済 持続可能な社会を作るために 〜絶体絶命から世界一愛される会社を目指して〜 58
10 環境 エシカル消費が学べるワークショップ体験 72
11 情報 情報セキュリティ啓発教材「ネットのあやしいを見分けよう」を体験! 82
12 金融 アクティブ・ラーニング型教材「お金のキホン」を使った「家計管理」の授業を体験! 101
13 製品安全 「子供や若者に多い商品・サービスに関わる事故」と商品テスト施設の見学 39
14 IT スマホやインターネット利用時のトラブル事例と回避策について 〜スマホ実機体験講座〜 46
15 家電リサイクル SDGs「家電リサイクル」で持続可能な社会の実現を!! 43
16 食品 バナナで考える消費者教育 47